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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
三章 勇者ご一行の旅
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勇者の力



「と、とりあえず、メラりん。倒そうか?」

「いいですけど、僕の使える魔法って、火属性なんですよね。メラりんと同じ属性だから、効果が半減するし」と、蘭さん。


「火属性ってことは、水属性の魔法が効くのかな?」

「そうですね」

「シャケは魔法使えないの?」

「おれはまだ、『鑑定かんてい』と『呪いよ、消えされ〜』しか魔法は使えへんな。あっ、あと、遊び人のころにおぼえた『賭けてみる?』とか」

「何そのギャンブル要素高そうな魔法」

「敵か自分たちのどっちかが、必ず全滅する」

「やだよ! そんな怖い魔法」

「だから使てへんやんかぁ。あと『何が出るかなぁ?』もある」

「それは、何?」

「何が起こるかわかれへんという、遊び人究極の技や」


 ああ、パルプ〇テ的なやつ……。


「……使えないやつ」


 僕が言ったんじゃない。蘭さんだ。

 今、蘭さんがボソッと勇者にあるまじき毒を吐いた。


 ゲハッと、三村くんが血を吐く(ような声を出した)。


「やめぇや。その白い目。痛いわぁ。刺さるわぁ」


 うん。わかる。わかる。

 蘭さんの冷たい視線、こたえるよね。


 そのとき、僕はひらめいた。


「それだ! 冷たい視線って、蘭さんの得意技だよね? 思いっきり冷たい目でメラりんをにらんでやって」

「こう?」


 あっ……い、痛い。

 自分にそそがれたんじゃないとわかってても痛い視線。


 みるみる、メラりんの顔色(体色)が青ざめ、炎が小さくなっていく。なんか、しょんぼりして、見るも哀れ。


「今だよ。蘭さん! 攻撃して」

「こうですね」


 ドラゴンテイルが華麗に舞う。

 風を切り、ピシッとメラりん直撃。

 クリティカルだぁー!


 これが勇者の力か。

 さすがだな。

 決して正統派とは言えない気がするけど……。



 *


 戦闘に勝った。

 僕らはワレスさんのマネをして、気絶してるスライムやぽよぽよのお腹を、人工呼吸よろしく両手でマッサージした。ワレスさんは蹴ってたけどね。僕はそこまで非情になれない。


 すると、モンスターの口から、ぷっと小銭が吐きだされてくる。きっちり勝利報酬ぶんだ。なるほど。最初から、こうすればよかったのか。


 あいかわらずモンスターから得られるのは一体につき一円単位だ。メラりんにいたっては、体内に隠すところがないせいか、勝利報酬がゼロ円設定だった。ひどい。


「うーん。僕の小銭拾いのほうが、ぜんぜん儲かる」

「かーくん。儲かりすぎやで。ズルイわぁ。装備、買いかえへんか?」

「えーと……何があるの?」

「鉄の剣があんで」

「いくら?」

「千二百円」

「もっといいのないの?」

「うーん……あるにはあるけど、あれは家宝にしょうかと思って、自分用に買うたやつなんやなぁ」

「物は何?」

破魔はまの剣や」


 何その、思いっきり“破邪はじゃ〇剣”のパロディっぽい名前の剣。


「……もしかして、その剣に魔法効果ついてたりする?」

「あるで。剣をふりかざすだけで、炎の魔法が何回でも使える」

「はい。買いましょう。いくら?」

「ええっ。家宝にしょうかと思っててんけどなぁ」

「そこをなんとか」

「ほなら、割高やけどいいか?」

「いくら?」

「八千円」


 ……ぼるな。

 たしか、僕の記憶が定かだとしたら、破〇の剣は五千円以内だったはずだ。あっ、円じゃないけど。

 あのゲームの4で、今、三村くんがコスプレしてるキャラクターに何回も村を往復させて、売価と買値の差額を利用してお金をためた。


 まあいい。ふふふ。今の僕は序盤では考えられない額の銭を持っている。へへへ。ふひひ。八千円なんか、チョロイ。チョロイ。


「いいよ。買う」


 僕は招き猫の財布から八千円をとりだした。

 いいねぇ。ちょっとした億万長者気分。

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