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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十七章 まだまだ鍛えよう
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秘伝書の魔法をおぼえてみよう



 魔法屋のなかに入った。

 ん? 受付のお兄さんがいない。

 魔法使いは夜行性かな?

 いや、違う。

 カウンターの下にしゃがみこんで隠れてるだけだ。足が見えてる。


「おはようございます。えーと、人間嫌いのお兄さん」

「…………」

「見えてるんで、出てきてくださいよ」

「——おれは人間嫌いなわけじゃない! アレルギーなんだ!」

「えっ? 人間、嫌いじゃないんだ?」

「ふつうにさみしがりやだよ!」


 うーん。ややこしい人だなぁ。


「秘伝書の使いかた教えてください」


 人間アレルギーの人間好きは、恐る恐る近づいてきた。


「こうするんだよ!」


 あッ! 僕の持ってた秘伝書をうばいとり、スカンと頭をなぐった。

 腹いせか?

 暴力反対ー!


 ん? でも、なんだろなぁ。

 頭のなかにキラキラと呪文がおりてくる。



 死なないでェー!(>ω<、)



「な? おぼえたろ?」


 お兄さんはそそくさと、あとずさる。

 僕をなぐった秘伝書は消えていた。


「僕じゃなくてアンドーくんに覚えてもらいたかったんだけど。まあいいや、いっぱいあるし。秘伝書で頭を叩けばいいんですね?」

「そう」

「誰がやってもいいんですか?」

「うん」


 僕はアンドーくんの頭を三回なぐった。かるくね。かるく。

 『死なないでェー』と、『みんな、元気になれ〜』と、『弱くなれ〜』だ。

 ちなみに、弱くなれ〜の顔文字は、これ。



 メッ ☆︎ヾ('・'*)



 メッて言ってるよ?

 まあ、それはそれ。

 アンドーくんが後衛援護スキルを手に入れたあかつきには、みんなを援護できる補助魔法や回復魔法が役に立つ。

 アンドーくんは隠れ身やトドメも持ってるから、前衛が全滅したときの切り札的な存在になるだろう。


「あと三つ『死なないでェー』があるなぁ。三村くんにも覚えてもらっとこうかな。僧侶とかなれなさそうな気がするから」


 死なないでェーは賢者が覚える呪文だ。僧侶ではまだ覚えない。

 ましてや、賢者は僧侶と魔法使いをマスターしてからじゃないとつくことのできない上級職だ。三村くんの知力の数値を考えると、たぶん、魔法系の職業にはつけない。単体完全復活だけでも知っといてもらうと、ピンチのとき、思いがけず役立つかもしれない。


「あと二つはモンスターかな。たまりんは自力でおぼえられそうなふんいきだし、ぽよちゃんに覚えてもらおうかな。ぽよちゃんは素早いから、いざってときに、サッと行動できる」

「キュイ!」


 ぽよちゃんの頭をポコンと叩く。


「ピュイ〜!」


 ちゃんと覚えたようだ。

 最後の一個はとっとこう。

 パーティーのようすを見て、誰に覚えさせるか決めよう。


「じゃ、魔法屋のお兄さん。ありがとうございます」

「ちょっと待った。買ってかないのかよ?」

「だって、在庫ないんでしょ?」

「魔法を売ってない魔法屋なんて、魔法屋じゃないだろ? 商品は日替わりなんだよ」

「あっ、そうなんだ」

「今日のおススメは、これだ!」



 プチサンダ〜°˖✧︎◝︎(⁰▿︎⁰)◜︎✧︎˖°



 あっ、ワレスさんが使えるやつだ。

 風属性は職業じゃ覚えられないんだよね。


「プチだからってバカにするな? こういう属性の基本魔法はMP消費が少なくてすむ上に、知力をあげて敵の弱点をつけば、ザコモンスターくらいなら一発で倒せる。水系のモンスターには効果絶大なんだぜ」

「貰っときます。ほかのもまとめて」

「買いしめはダメだぞ?」

「ほかにも在庫あるんですよね?」

「あるけど」

「じゃあ、ください」

「二割引きで四万円な」


 けっこう商売上手だなぁ。

 ほんとは、在庫いっぱいあるんじゃないのか?


 ニヤニヤ笑うお兄さんに見送られて、僕らは魔法屋をあとにした。

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