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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十七章 まだまだ鍛えよう
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変なおじさん



 カジノにはいろんな人がいる。


 僕は元手がけっこうあるんで、そのあとスロットをした。

 メダル一枚賭け、五枚賭け、十枚賭けの台があり、十枚賭けでやってたら、ものの十分ほどで大当たりが来てしまった。あっというまに五万枚たまる。

 さすがは僕の幸運度。

 こういうときには、ちゃんと効くんだ。戦闘でも、もうちょっと反映されてほしいもんだ。


「たまりん。今日はもう帰ろうか? 遅くなると明日にさしつかえるしねぇ」


 ゆらり。


 たまりんも「うん」と言ったし、僕は勝ってるとこで帰ることにした。

 ところがだ。

 僕がメダルをいっぱい持ってたせいだろう。変なおじさんに目をつけられてしまった。

 髪がボサボサすぎて、顔が見えない。ガリガリにやせて、ヒョロリとした男だ。


「頼む。私に投資してくれないか!」

「投資?」

「メダルをめぐんでくれ!」

「負けてるんですね?」

「負けてるわけではない。今のところマイナスに転化しているだけだ。次でとりもどすのだから、結果はプラスだ!」

「…………」


 うーん。そういうのを負け越すって言うんだよ。

 典型的なギャンブル中毒。


 無視して歩きだそうとすると、おじさんは僕の肩をつかんでひきとめた。


「頼む。私に恩を売っておけば、いずれ君の役に立つであろう。そう。この私に恩を売れるなんて素晴らしいことなんだよ。なんなら私の偉大な研究について話してあげてもいい」

「…………」


 誇大妄想症だな?

 めんどうだ。

 いっぱい勝ったから、少しくらい、あげてもいいや。


「はい。どうぞ」

「感謝する!」


 僕がひとつかみのメダルを手渡すと、おじさんは喜び勇んで、ポーカーのテーブルへ走っていった。


 あんまり、かかわらないほうがいい人だったかな?


 勝ったメダルは受付に持っていくと預かってくれた。

 五万枚も勝ったから、種セットAとB、それに『みんな、元気になれ〜』の魔法秘伝書を一つずつ貰ってみた。


「これ、アンドーくんに覚えてもらおうか? 後衛から全体回復魔法、ありがたいよね」


 ゆらり。


 一階におりたところで、アンドーくんやスズランと合流した。


「明日のために帰ろっか」

「そげだねぇ」


 と話してたのに……今夜はなんなのかな?

 ギルドは冒険者の集まる場所だから、昼間より夜のほうが人の出入りが激しいのかもな。


 酒場で一人たそがれてる、キルミンさんを見つけてしまった。

 狐みたいな目つきだけど、ちょっと美人のキルミンさん。

 あのダルトさんの相棒なんて、よく続けてられるなぁ。


 僕と目があったキルミンさんは、僕の思考を読んだ! そんなに顔に出てたかな?


 手招きして、僕をとなりの椅子にすわらせる。


「あれでもね。以前は強かったのよ。ダルトもさ」

「そうなんですか」

「あの人の得意技、“気分屋”なのよ」

「えーと? それはどういう?」

「気分によって、職業が自動で変わってしまうの」

「えっ? じゃあ、マーダー神殿に行かなくても転職できるんですか?」

「できるけど、パーティーの役に立つ職になれるわけじゃないから」

「ああ……」


 遊び人だもんな。現状。


「あの人、決めてるのよね。『賭けてみる?』で敵を倒すまで、遊び人でいるんだって」

「なんでですか?」

「あの人の親友がね。遊び人だったのよ。ホリデーって名前で、やたらと幸運値の高いヤツだった」

「賭けてみるって、幸運値が関係してるんですね?」

「そう。ホリデーの『賭けてみる』は最強だった。あたしたちがピンチのとき、何度も救われたわ。でもね……」


 僕はそのあとの言葉を待っていたのに、キルミンさんは急に黙りこんでしまった。

 ふふっと苦笑する。


「ごめん。ごめん。坊や相手にグチっちゃった。忘れてよ」

「はあ……」


 ダルトさん。あんな迷惑な人、ほかにいないと思ってたけど、なんだか、深いわけがありそうだなぁ。

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