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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十七章 まだまだ鍛えよう
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気になるけど、とりあえず馬車



「ロラン? どうしたの? 元気ないよ?」

「えっ? そんなことありませんよ。疲れてるだけです。僕、もう寝ますね。ほら、ぽよちゃんたちも寝てるし」


 蘭さんは、ぽよちゃんと、くぽちゃんとバランをかかえて自分の寝室に入っていった。


 クマりん一家やケロちゃん、スライムは居間のロフトへよじのぼっていく。シルバンは重いせいか、暖炉のよこに直立不動になった。あれでも寝てるらしい。

 たまりんだけがついてきた。


「しょうがないね。出かけようか」


 馬車はすぐに改造しないと、三村くんが帰ってきたときに困る。

 それに後衛援護ができるようになれば、前衛四人と後衛四人でパーティーが組めるってわけだ。八人しか乗れないと交代要員が一人もいなくなってしまうんで、早めに対処しとかないと。


 僕とアンドーくんとスズランで、夜の街へくりだしていった。

 スズランとお出かけするのは初めてなんだけど、なんでか、僕のとなりに、たまりんがひっついて離れない。まるでスズランをけん制してるみたいだ。


「お兄さま。ようすが変でしたね。悩みでもあるのかしら?」と、スズランは蘭さんの心配をしてる。


「スズランさんはロランが大好きなんだね」と話しかけてみると、美少女の冷たい視線がつきささった。

 痛い……。


「ずっと離ればなれになっていた兄妹ですから。当然でしょ?」

「は、はい。当然です」


 ダメだ。この子とは相性が悪い気がする。美人だけど、あきらめたほうがよさそう。


 たまりんがなぐさめるように、ゆら〜りとゆれた。

 やっぱり僕のヒロインは火の玉なのか?


 ギルドは二十四時間営業なので、まだ明るかった。だけど、合成屋や装飾品屋や武器防具屋など、いくつかの施設は閉まってる。


 僕らはさっそく、裏口にある鍛冶屋の受付に行った。


「すいません。馬車の改造をしてくれる大工さんがいるって聞いたんですが」

「ああ。ザッフだね。あいつは鍛冶と大工と両方できるんだ。ちびっと魔法もかじったらしいんで、馬車の見ためはそのままで、なかの容量だけ広くできるんだ」


 受付の小さいおじいさんが教えてくれた。


「すごいですね。そんなことできるんだ。僕らの馬車、今、八人乗りなんだけど、十二人まで増やしたいんですよね」

「おお、できるとも。魔法のほろ布があればな」

「なんですか? その魔法のほろ布って?」

「サンディアナの近くに、オリヤという小さな村がある。北のウールリカから入ってくる羊毛を使って、そりゃ質のいい織物を生産しててな。そこの機織はたおり名人の織る布が、魔法の馬車のほろ布に最適なんだ」

「へえ。サンディアナか。明日、そっち方面に行くつもりだったから、ついでに行ってみます。じゃあ、ザッフさんに仕事の依頼したいんで、ご自宅を教えてもらっていいですか?」


 ヒョロリと白いヒゲのおじいさんは、人さし指で自分の顔をさした。

 はて? 何をしてるのかな?


「えーと?」

「わしじゃよ」

「えっ?」

「わしがザッフだ。馬車改造だな。いいだろう。受けてやろう。ただし、前金じゃぞ?」


 うーん? ほんとに、このおじいさんがザッフさんなのか? まさか、ザッフですよ詐欺じゃ?

 だって、ふつう、自分のことをあんなに褒めそやして宣伝する? それも赤の他人みたいなふりしてさ。

 いやいや、でも、モンスターおじいのときにも信用したら、ちゃんと馬車が手に入った。馬車関連のイベントは怪しい人っぽいだけなのかもしれない。


「わかりました。いくらですか?」

「十万じゃ」


 この世界の人たちって、なんだかんだ、けっこうぼるんだよな。

 ほんとに正規の値段なのかな?

 ふつうにモンスターと戦ってお金得てるだけじゃ、そうそう十万なんて貯まらないよね?

 まあいい。僕にとっては小銭だ。


「はい。十万」

「ほいほい。お任せあれ。ほろ布が手に入ったら、馬車といっしょに持ってきなさい」


 ちょっと不安ではあったけど、信ずる者は救われる……と信じよう。

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