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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
三章 勇者ご一行の旅
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重大なバグ発見



 よし。じゃあ、初の銅の剣だ。使いかたは木刀と同じだろう。正確にはスネークドラゴンの尻尾、叩いたけど。あれをバトルと言うのは、おこがましい。

 僕は剣をかまえて、メラりんの正面に立つ。


「えい!」


 コツンと行くのかと思ったら、あれっ? スカッと。剣はメラりんの体をすりぬけてしまった。


「えっ? えっ? えい、えい!」


 スカッ。スカッ。


 ぼうぜんとする僕の前で、ニヤリとメラりんが笑う。あくどい笑みだなぁ。

 次の瞬間、メラりんは急に細長く伸びあがって、僕のおでこに頭突きしてきた。


「あっつッ!」


 熱い! 火傷するほどじゃないけど、少なくともコントの熱湯風呂なみには熱い。熱湯風呂入ったことないけど。


「あっ」と、蘭さんが思いだしたように言う。

「そうそう。メラりんはエレメンタル系だから、物理攻撃がほとんど効かないんですよね。まれに会心の一撃が出れば当たるんですけど」

「ええーッ!」

「クリティカル率って、幸運の数値が高いほど出やすいんですよね。僕はそこそこ出るほう」


 でしょうね。運高いから。

 ん? 運?


 僕はあらためて自分の数値を見なおした。おかしい。僕には幸運の項目がない。


「僕……幸運の数値がない。項目じたいがない」

「えっ? なんですか、それ? バグなんじゃないですか?」

「バグって……どうしたら直せるの?」

「えーと、一回、今のアカウントを削除して、登録しなおすしかないんじゃないですか?」

「そしたら、どうなるの?」

「よくわからないけど、所持金とか経験値とかリセットされて、始まりの街に戻されるんじゃ?」

「やだ! そんなのヤダ! せっかく五十万円も集めたのに」

「じゃあ、クリティカルが出ないことはあきらめて、先に進むしかないですね」

「うう……」

「ちなみに幸運度って、戦闘後の宝箱のドロップ率や、モンスターからのクリティカルの回避率なんかにも関係してきます。つまり、幸運に見放されたかーくんさんは、モンスターがクリティカルを出せば、必ず当たってしまいます。戦闘からの逃走の成功率とか、カジノの大当たり率なんかも関係してるとかしてないとかいうウワサですね」

「うう……」


 やりなおすか、やりなおさないかの二者択一。迷うなぁ。



 *


「えーと。やりなおした場合、蘭さんたちは、どうなるの?」

「僕の名前はロランです」

「あっ、らんらんだったね。らん——ええッ? ロラン?」

「らんらんは正体を隠すための仮の姿です。ほんとの名前はロランです」


 うーん。まあ、勇者らんらんよりは、勇者ロランのほうが、さまになる。


「えっとぉ、じゃあ、ロランさま」

「さまは、よしてください。ロランでいいですよ。仲間じゃないですか」


 うわっ。ニコッとされると、胸にズキュンと来るんだよ。やめてっ。心臓、持っていかれる。


「じゃあ、僕のことは、かーくんでいいよ」

「かーくん、ですね」

「ロラン」

「かーくん」


 僕と蘭さんはガッチリ握手をかわす。

 さっきからパラメータ見れるようになったのは、完全に仲間になったからなんだな。


「おれのこと、忘れてへんか?」

「シャケ。君も仲間だよ」

「おう。よろしゅうな」


 三村くんの数値も見たいとこだけど、今はバグの問題が先決だ。さっきからずっと、困った顔して、メラりんが僕らのターンが終わるのを待ってるし。

 ごめんね。戦闘中に長いこと放置プレイして。


「ところで、僕が始まりの街まで帰ったら、どうなるの?」

「そうですね。たぶんだけど、今この場所から、かーくんが消えて、僕らはさきに進みます。ずっとここで待ってるわけにもいかないし」


 つまり、蘭さんたちと離ればなれか。

 ワレスさんの国のボイクド国で待ちあわせるにしても、そこまで一人でウロつくのは危険すぎる。第一、この地下道の入口の扉は、蘭さんしか開けられない。シルキー城のなかは魔王城クラスのモンスターが闊歩かっぽしてるし。さっきはワレスさんがいたから簡単に進めたけど、僕一人なら確実に死ぬ。


 結論。今さら、やりなおせない!


「わかったよ。もういいから、さきに進もう」


 宝箱ドロップ率……。

 カジノの大当たり率……。

 地味に小銭拾っていくしか僕の楽しみはないのか。はぁ……。

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