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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十五章 やっと再会
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魔法がとけたポルッカランド



 ヤドリギのカケラが飛びさって、屋敷にかかっていた悪い魔法はすべて消滅した。モンスターはいなくなり、ダンジョンも消えた。



 戦闘に勝った。

 経験値1500を手に入れた。

 三千円を手に入れた。

 バジリスクAは宝箱を落とした。

 バジリスクの涙を手に入れた。

 バジリスクBは宝箱を落とした。

 バジリスクの涙を手に入れた。

 ポルッカは宝箱を落とした。

 小さなコインを手に入れた。



 ポルッカさんは正気に戻った。


「あらまあ? あなたたちは? わたしは何をしてたんでしょう?」


 これで、マルッカとムルッカも大喜びだ——と思ったんだけど……。


 もしかして、そうかなぁとは感じてたけどね。

 マルッカとムルッカはいなくなってた。厳密に言えば、人間の姿の二人は。

 ポルッカさんの足元に、女の子と男の子の人形が落ちている。バトルの途中で消えた、あの野生の男の子と女の子だ。


「やっぱり。この子たち、人形だったんだ」

「きっと、持ちぬしのポルッカさんを心配して、僕らに助けを求めてきたんでしょうね」


 屋敷をダンジョンにする魔法のせいで、仮の命がふきこまれていたのかもしれない。


 ポルッカさんもようやく、自分の置かれた状況に気づいた。


「わたし、変なものにあやつられていたようですね。そのあいだのことは、うっすらとですが記憶にあります。マルッカ、ムルッカ。ありがとう」


 ポルッカさんの優しそうな双眸から、ポロポロと涙がこぼれおちてくる。


「わたしには子どもがいません。たくさん人形を集めましたが、この子たちをとくに可愛がっていたんです。わが子のようにね。若いころ、婚約者に裏切られましてね。どこか遠くへ大切なものを探しに行くと言ったきり、あの人は帰ってきませんでした。何年も待ちました。そのせいで、わたしは一度も結婚することもなく、この年になったのですよ。仕事では成功したけど、近ごろは一人で暮らすのがさみしくてねぇ。その心を何かに利用されたようです」


 悪のヤドリギ、ゆるせないなぁ。

 グレート研究所長もゆるせないけど、悪のヤドリギもゆるせない。

 魔王軍のヤツらは、ほんとにどいつもこいつも極悪非道だ。


 蘭さんはポルッカさんの手をそっとにぎった。


「ファッションショー、楽しかったですよ。定期的にひらいてみてはいかがですか? きっと、いろんな町から人が集まってきます。それに、これからは僕らもときどき遊びに来ますしね」

「ファッションショーか。それはいいかもねぇ」


 僕らはなぐさめたけど、でもほんとは、ポルッカさんはいっしょに暮らす家族がほしいんだろうなぁ。


 そう思ってたときだ。


「おっ? ロラン、背中になんかくっついとんで?」

「えっ? なんですか?」


 カエルだった!

 ケロよんだ。

 モンスターのケロよんが、蘭さんの背中に水かきの手でひっついてる。


「ストーカー製造機だね」

「そうか。戦闘後に仲間になっていたんですね。この子も、もとはこの屋敷の人形だと思うけど……」


 そこまで言って、蘭さんはハッとした。


「もしかしたら、まだ効くかも!」


 マルッカとムルッカをつかむと、蘭さんは、じっと見つめた。そのあと、もう一度、二体の人形を床に置く。


「マルッカ。ムルッカ。いいですか? 僕のあとをついてきて」


 くるっと背をむけて蘭さんが歩く。

 と——


「あっ、動いた!」

「おお、動いたな。人形のまんまやけど」


 人間の姿にまではならなかったけど、マルッカとムルッカはチョコチョコ動いた。魅了からのストーカー製造機だ。


「じゃあ、マルッカとムルッカには自宅待機を命ずる。ポルッカさんを守ってあげるんですよ?」


 僕はちょっぴり涙ぐんでしまった。

 幸せそうにポルッカさんにかけよっていく、マルッカとムルッカを見て……。

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