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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二章 シルキー城の一夜
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夢の小銭街道は危険地帯



 お、恐ろしい。

 さっきから、ものの十歩も歩くと、五十円玉やプラスアルファの十円玉が数枚落ちてるんだけど?

 たぶん、もう所持金はさっきの三百五十円をとっくに超した。

 すると、するとだ。

 次に落ちてたのは、ついに百円玉!

 う、嬉しい。百円は嬉しいよ?

 ハアハア。嬉しすぎて動悸が。


 しかし、嬉しいだけじゃない。


「止まって。このまがりかどのさきに敵がいます。僕の察知能力によると、敵は一体。だけど、レベル40のスネークドラゴンだ」


 なんと、便利な。

 敵の数や種類や、ましてやレベルまでわかるのか。


「わかった。おれが一人で行く」


 そう言って、ワレスさんは一人でまがりかどを進んでいく。

 あっ、戦闘音楽、聞こえた。

 僕は廊下の角から顔を出して、そのようすをながめる。


 うわー。さすがレベル47のホーリーナイト! 人間技に見えないんだけど?

 いきなり先手で、トグロを巻いたスネークドラゴンの背後から巨体に駆けあがり、首のつけ根に一閃。鮮血がしぶく。カーテンみたいに噴きだしてくるそれをかわし、スルスルと肋骨ろっこつづたいに刃を移動させていく。


 当然、スネークドラゴンは暴れた。

 毒霧? これはポイズンブレスなのか?

 巨体の周囲二メートルが黒紫色の霧に覆われる。


 ちなみにスネークドラゴンは全長三十メートルはある。体高は五メートルくらいか? 黒い鱗のめっちゃデカイ蛇みたいなもの。


「毒霧はマズイですね。毒に侵されたら、どんなに強くても、一ターンごとに体力が減少する」


 僕のとなりから覗いていた蘭さんがつぶやく。


「ええカッコしぃやな。けど、どないかして手助けできひんのかなぁ?」

 三村くんも言う。


「戦闘音楽が聞こえてるってことは、たぶん、僕らも仲間のうちですよ」

「僕ら、なんか役に立つと思う?」

「かーくんさんなら、もしかしたら、レベルが上がれば、毒消しの魔法を覚えるかも?」

「そうか。プリーストっぽいもんね」


 でも、いかんせん、まだ僕のレベルは7。泣いても笑っても7だ。

 僕らにできることは、ただ見守ることのみだ。



 *


 毒霧のせいで、ワレスさんの華麗な戦いっぷりがよく見えない。


 すると、そのとき、とつぜん、霧が晴れた。ワレスさんが何か聞きとれない言語で呪文を詠唱したのだ。

 たぶん、この人の母国語のユイラ語だな。ちなみに発音はフランス語のイメージ。

 この人、魔法も使えるんだよねぇ。

 僕が小説のなかで、そういう設定にしたから。

 やっぱカッコイイなぁ。

 あれくらい強かったらキモチイイだろうなぁ。


 ワレスさんはマントをなびかせて、スネークドラゴンの尻尾の攻撃をよけた。軽いフットワークで竜の背中をとびおりると、前にまわって下から喉元をかき切った。


 すると、ゆっくりとスネークドラゴンの首が前に傾き、すべりおちてくる。


「あっ、終わっちゃう。僕らも戦闘に参加しましょう」

「えっ? 今さら?」

「いいから。いいから。かーくんさんのためですよ? ほら、尻尾でも叩いて」

「う、うん」


 カッコイイ人のカッコイイ姿を横目に、僕は今にも末期のきわのドラゴンの尻尾を、銅の剣でコツンと叩く。ぽこぽこからコツンに進化した僕の攻撃。


 直後に派手な音楽。


 チャラララッチャッチャー。

 チャラララッチャッチャー。

 チャラララッチャッチャー。

 チャラララッチャッチャー。

 チャラララッチャッチャー。


 何回、鳴るんだよ!

 僕はいっきにレベル5もあがった。

 これって、ほとんどバグじゃないのか? いいの? おこぼれでこんなレベルアップして?



 ——戦闘に勝利した。経験値3000を得た。5000円を手に入れた。竜の牙を手に入れた。



 美味しいなぁ。

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