ポルッカ屋敷(玄関ホール)
玄関にカギはかかっていなかった。キイっと軽い音を立てて、両扉がひらく。
玄関ホールが見える。
なかは無人だ。
だぁーれもいない。
見た感じ、ふつうの屋敷……いや、ちょっとふつうとも言えないかな。
やけにぬいぐるみとか女の子のお人形とか、いっぱい飾ってあって、壁紙も可愛いイチゴもよう。
小さい女の子でもいるのかな?
「こうやって見ると魔物なんか出そうもないけど……」
「油断したらあかんで。玄関前にバジリスク隊長おったんやからな」
まあ、そうだ。
野生じゃないモンスター。
それは明らかに魔王軍の魔物だ。
なんで、こんな一般人の家に魔王軍が?
僕らはそっと家のなかに入った。
あたりまえに考えたら、どうやっても不可能なはずなのに、なぜか馬車で入れてしまう。そんなバカな。物理法則に反してる。
でも、たいていのゲームでは不自然な場所へも馬車で入れたもんな。きっと魔法だぁ。あはは〜
「誰もおれへんな」
「でも、小銭拾うから、ダンジョン化はしてるよ」
一回につき十六万拾うよ。
街に帰るまでに稼がないとねぇ。
ひそひそ話しながら歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。女の泣き声だったような?
こ、怖い……なんで泣き声?
そ、そうだった。この近くでは女の人が行方不明になるんだ。
まさかと思うけど、さらわれた人が、こっ……殺されたり……?
ひぃっ。そんなのヤダよっ。
僕がブルブルしてると、背後から物音が。
「な、何? 今の?」
「かーくん。ここにはゾンビは出らんだない?」
「ゾンビの話なんかしないでよぉ」
「かーくんは肝が細いけんねぇ」
ううっ。どうせ、ぽよぽよですよぉ。
トコトコ——
「や、やっぱり、なんかいる! 足音した!」
「おるなぁ」
「な、なんだろう?」
今度は僕らの前を影がよぎった。
子どもかな? 小さい。
ビクビク。ドキドキ……。
トコトコトコ——
いきなり、テロップが流れた。
野生のクマちゃんが現れた!
野生のケロよんが現れた!
野生の女の子が現れた!
野生の女の子ってなんだよっ?
この世界って、なんかツッコミどころ満載なんだよなぁ。