庭先の戦い
目の前にとびだしてきた四体のモンスター。
バジリスクはあんまり大きくない。二十センチくらいのトカゲだ。しっぽがピカピカ青くてキレイなやつ。怖そうには見えないけど、石化攻撃してくるから最優先で倒さないと。
カマキリンはキリンみたいな網目もようの首の長いカマキリ。カマがやけに大きいんで、攻撃力が高そう。
キノッコは水玉もようのある赤いカサのキノコだ。細い手足が生えてる。
ブンブンってのは、さっき三村くんの話のなかには出てこなかったけど、見ためはミツバチの大っきなやつだ。丸っこくて可愛い。
どれもこれも庭のなかに出てくるようなモンスター。
つまり、ここってポルッカさんの自宅の庭なんだと思う。
さて、このときを待ってました。
ぽよちゃんに聞き耳してもらう前に、僕はまっさきにクルウのステータスを見た。こんなときしか見れないしねぇ。
クルウのレベルは53。
あっ、レベルはワレスさんより高いんだ。
HP750(900)、MP245、力385(499)、体力495(593)、知力290、素早さ250、器用さ255、幸運377。
うーん。ワレスさんほどではないけど、やっぱりかなり強い。とくに体力はワレスさんより百以上高いんで、もうガチガチだ。これで防具つけたら防御力は700以上なんじゃ?
HPの高さと固さで、味方を守る騎士なわけか。職業は重騎士。そんなのあるのか。この世界って、けっこう職業の数が多そうだぞ?
ワレスさんのステータスと見比べると、両者のタイプの違いがよくわかるかな?
ワレスさんは、これだ。
HP670(938)、MP420(546)、力410(553)、体力375(412)、知力400(480)、素早さ470(587)、器用さ370(425)、幸運155(170)。
こうやって見ると、職業マスターのボーナスがいかにありがたいのかわかる。
ところで、前々から思ってたけど、ここで言う知力はたぶん、I.Qとは別物だ。なぜなら、僕の知力のほうが蘭さんより高いから。現実ではそれはありえない。I.Qで言うなら、断然、蘭さんのほうが高いはず。
ここでの知力は魔法の効きやすさとか、魔法の覚えやすさとか、そういうものなんだろう。
まあ、それは置いといて、クルウのステータスだ。
マジックはワレスさんにくらべて、ずいぶん少ない。
マジック
元気いっぱい〜ヽ(*´∀`)
死なないでぇー!(>ω<、)
ヘッチャラさ〜(*'▽'*)
みんな、ヘッチャラさ〜(*'▽'*)
職業スキル
軽鎧、重鎧、盾、かぶと、剣装備可能
両手持ち可能
かばう
守る
剣の舞
鉄壁
得意技
騎士道
下剋上
策略
うん。これもまたクルウっぽいなぁ。
「下剋上って、なんですか?」
「パーティーに自分より高いステータスを持つ仲間がいるとき、戦闘中、その数値を必ず1上まわる」
「それって、全ステータスで?」
「さようですね」
「ということは、あなたがワレスさんとパーティーで組んでるとき、ワレスさんの職業マスターで補正された数値より、さらに1高くなる?」
「ええ。隊長とともに戦うときは戦闘が楽ですね」
なんだそれ。ズルイ。
ってことは、今から戦闘するあいだ、この人の幸運数値は僕より1高いマックス振りきりってことか。
僕の考えを読んだようすで、クルウは笑った。
「あなたも面白いステータスだ。おかげで今ならきっと、すべての攻撃がクリティカルになる。あなたがたの戦いぶりも見ておきたいが、なんなら今回だけは私が戦ってみせましょうか?」
「はい。よろしくお願いします」
僕が頭をさげると、クルウは再度、笑みを浮かべた。
そして、剣をぬくと——
「剣の舞!」
勝敗は一瞬でついた。
クルウが剣をふるった次の瞬間、モンスターの群れは全滅していた。
何が起こったんだろう……?