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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二章 シルキー城の一夜
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シルキー城からの脱出



「ちょっと待った! 廊下には魔王城級のやつらがウジャウジャいるんだよ?」


 僕はあわてて、蘭さんをひきとめた。


「せやで。ムチャや。らんらんさま。あんた、レベルいくつなんや?」と、三村くんも追随ついずいしてさとす。


 蘭さんが答える。

「レベル16」


 レベル16か。

 まあ、序盤にしては弱くはない。どっちかっていうと、まあまあ強いほうだ。でも、そんなのラスボス直前の魔物たちを相手にするには、ぜんぜんレベル不足だ。最低でもレベル35はないと、魔王城のなかを歩きまわることもできない。しかも、それでも魔王を倒すにはギリギリくらいのレベルだ。


「でも、父上と母上が! ほっといたら死んじゃうよ。僕は一人でも助けに行く!」


 ああ、ダメ。ダメ。

 無謀な勇者って、タチ悪いなぁ。

 蘭さん、性格“怖いもの知らず”だもんな。


 すると、僕がとどめるよりさきに、ワレスさんの手が伸びた。パンッと音をたてて、蘭さんの頰をな……殴った。平手だけど。よく殴れるな、こんな美しい人を。そうか。自分の顔を見なれてるからか。


「バカヤロウッ! おまえが死んだらどうする? 世界が絶望に沈むんだぞ。おまえだけは、どんなことがあっても生きのびなければならない。どんなことがあってもだ」


 蘭さんは叩かれた頰に手をあてて、ワレスさんを見つめる。ハラハラとその瞳から涙がこぼれてきた。


「……じゃあ、どうしたらいいの? 父上や母上は?」

「心配するな。おまえが逃亡しそうだから、前もっておれの部下たちにお二人の寝室を見張らせている。やつらがお守りしているだろう。だから、おまえはおれとともに逃げるんだ。いいな?」


 こくんと、蘭さんが首肯した。


 ゴクリ。魔王城からの脱出……。

 うまくいくかな?



 *


 僕は口を出した。

 このなかで、一番レベルが低いのは、たぶん僕だからだ。


「あの、僕レベル7なんです。あのクラスの魔物と戦闘になったら一撃死です。なんで、なるべく戦わないで行きたいんですけど、どうにかなりませんかね?」


 ワレスさんはため息をついた。

 いくらなんでも、レベル7は低すぎたか。


「城門や外へ通じる裏門は、すべてやつらの見張りがついているだろうな。おれも一体サシでなら倒せるが、囲まれるとおまえたち全員を守れるかどうか自信がない」


「ちなみに、自分、レベルなんぼなんや?」


 三村くんに聞かれて、ワレスさんはクールに答える。イッツクール。ベリークール。


「47だ」


 よ——四十七ですとっ?

 そんなの魔王城に余裕で乗りこめるレベルじゃないか。


「えっと、職業はなんですか? 魔法戦士? 騎士ナイト? もちろん上級職ですよね?」


 ワレスさんはニヤリと白い歯を見せる。

狂戦士バーサーカーだ」

「ええっ? そ、そんなの仲間も危険じゃないですか?」

「冗談に決まってるだろ。聖騎士ホーリーナイトだよ」

「なんだ」


 僕はホッと胸をなでおろす。

 なんか、いろいろ気づいたんだけど、この人って微妙に猛っぽくないか? 絶対、僕をからかって楽しんでたよね? ぽよぽよどころか、ポチっぽいと思われてるに違いない。


「おれは商人。その前は遊び人やった。レベルは13や」と、三村くん。


 遊び人。三村くんらしいなぁ。


「どいつもこいつも小僧だな。おれが守ってやるから、ついてこい」


 はうッ。ワレスさん、カッコよすぎ。惚れるぅ〜


 ところが、蘭さんがひきとめる。

「待ってください。モンスターたちに見つからないように城を脱出できたらいいんでしょう? それなら、地下に隠し通路がある」


 あッ、あった。あった。

 あの地下にあった扉ね!

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