表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第五部 ようやく王都シルバースター! 十三章 花の都
192/377

勝てなかったけど



 僕らはワレスさんの蘇生魔法で意識をとりもどした。


「ああ……負けたぁ。3ターン持たなかったぁ」


 僕はガッカリしたけど、ワレスさんは笑ってる。


「いや。はなから1ターン持てばいいと思っていた。3ターンめまで戦えることが立証できただけで充分だよ。これなら戦力になる」

「ほんとですかっ?」

「ああ。頼りにしてるよ」

「はい! がんばって、たくさん小銭拾います!」

「そうだな。あれがさっきの三倍のダメージだったなら、おれでも倒れていた。1ターンでケリがついてただろう」


 そうかぁ。百万円持ち歩いてれば、ワレスさんにでも勝てたのか。惜しい。


「ではな。おれは今後の戦略を練るために会議室に戻るが、おまえたちは城内を自由に見物するといい。それと兵舎の一室をおまえたちの部屋として用意させておく。もしも用があれば、東の内塔のおれの部屋に来てくれ。部下に伝言を残してくれれば、時間を作る」

「ありがとうございま〜す」


 立ち去りかけたワレスさんだけど、ふと思いだしたように帰ってきて、小声で耳打ちする。


「残念ながら、わが国にも派閥争いがある。勇者のことも、今回の作戦に関しても他言はするな?」

「わかりました」


 そうか。派閥かぁ。

 人間の集まるところには、どうやったってあるんだね。

 とくに王宮なんて、陰謀と奸計と嫉妬と羨望と野心のうずまく場所だ。


 もしかして、だからこそ、ワレスさんはコーマ王の近衛騎士なんてしてるのかな?

 宮廷のみにくい権勢争いから、自分のお気に入りのお人よしの王様を守るために?


 ワレスさんは微笑を残して去っていった。

 あんだけ戦ったあとなのに、ふわりと森林のなかの風みたいな香りがするんだよ、この人。マイナスイオンを感じる。


 はぁ……僕もワレスさんみたいになりたいなぁ。ムリかなぁ? ムリだろなぁ。つまみ食いで小銭拾いで泣きマネの僕じゃ。


 気をとりなおして、城内の探索だ〜!

 えへへ。

 なんか、いいもの見つかるかなぁ?



 *



「わ〜い。わ〜い。お城だ。お城。楽しいなぁ。広いお城をいっぱい探険できるのって、童心に帰る感じでワクワクするよねぇ」


 兵士訓練所を出て、僕らは一階のろうかを歩いていた。


 ボイクド城は大きくわけて、四角い本丸、その四すみの塔。本丸をかこむ二の丸と、さらにここにも四すみの塔だ。

 とにかく大きなお城なんで、あっちにもこっちにも人がいる。


 僕らは一階にある兵士のための食堂や、ふだんは謁見えっけんに使われている大広間、兵舎、兵士たちが隊列の稽古けいこや馬術の練習をしている中庭などを歩きまわって、まずはウワサ話を集めた。

 やっぱりね。

 情報はRPGの基本だって思うんだよね、僕。


「知ってるか?」


 出た! 知ってるか?

 人ごみに戻ってきた感がこみあげる。


「え? 何をですか?」

「この国の四方の国なんだがな。北がウールリカ。南がミルキー。東が武闘大会のあるヒノクニ。ヒノクニは別名サムライ国とも呼ばれてる。西にはサンドール。もっとも、ヒノクニとサンドールはあいだに海があるんだけどな」


 ふうん。そうなのか。

 僕は魔法の地図を出して、配置を確認した。僕の地図は全体の左側半分の中央あたりにしか色がついてない。まだまだ行ってない場所のほうが多いんだ。世界は広いなぁ。


「知ってるか?」


 また知ってるか!

 嬉しいっ。


「何をですっ?」

「じつは、この城の地下には誰にも開けることができない謎の扉があるらしいんだ」


 そう言えば、サンディアナでもその扉のこと言ってる人がいたな。時間を超えられる人だけが入れるとかなんとか。

 それにしても、お城で扉。しかも地下。

 それって、シルキー城にもあったようなやつかな?

 シルキー城は王族なら開けられたけど、さらに奥にやっぱり謎の扉があったよね。なかにすごく強い魔物がいる気配があった。


「ミルキー城の近くでは、たまに一角獣が見かけられるんだってな。子どもかキレイな姉ちゃんしか近寄れないっていうぜ」


「聞いた話なんだけど、夢の巫女って、すごい変人なんだって」


 そうなんだ……。

 スズランさんみたいな美少女を期待してたのに。


「予言の巫女の予言は外れたことがないんだってな。あまりにも予言が当たるから、父王に恐れられて、子どものころにどこかの塔に幽閉されたって聞いたことがあるぜ」


 ふうん。夢の巫女は変人で、予言の巫女は塔に幽閉か。ラプンツェルみたいだなぁ。


 巫女の話はもう一個あった。

「予言の巫女はウールリカの王女なんだってよ。ウールリカの王宮は魔物の襲撃を受けたって話だけど、大丈夫なのかな?」


 う、うーん。幽閉の上に魔物の襲撃か。あんまり大丈夫そうじゃない。


「この街には有名な発明家がいるんだが、なんでもカジノによく入りびたってるらしいぞ」


 カジノ! そうだった。この街にはカジノがあった! あとで行かなくちゃ。


「義のホウレンと裏切りのユダは、もとは人間だったんだってね。親友だったらしいんだ」

「義のホウレンと裏切りのユダって、魔王の四天王ですよね?」

「そうだよ」

「なんで人間が魔物になってしまったんですか?」

「さあ、そこまでは知らない」


 うーん。ユダは兄ちゃんだけど、気づいたら魔王軍のなかで、まわりのやつらにユダって呼ばれてたって言ってたっけ。


 なんか変だなぁ。

 ユダは兄ちゃんがこの世界に来るよりも前から存在してたっぽいんだけど……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ