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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二章 シルキー城の一夜
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なんなんだ? 今夜はイベントだらけ



 ああ、もう、殺される!

 ワレスさんに殺されるのかぁ。

 悲しいなぁ。

 僕が生みの親だよって言ってみようかな?

 いや、ダメだ。よけい殺される!

 彼を徹底的に不幸な生い立ちにして喜んでたのは僕だ。喜んで……喜んでたのかな? ワレスさんは耽美が似合うんだよ。あっ、そんなこと言ってたら、まちがいなく抹殺される!


 と、そのときだ。

 なんか、とうとつにお城のなかがさわがしくなった。


「何? 雷?」

「ちゃうやろ。もっとこう、ドンパチしとるで」


 蘭さんの顔色が変わる。


「あれは……砲撃の音だ!」


 そして、キッとワレスさんをにらむ。

 うーん、蘭さんも麗しいから、怒ると迫力あるね。


「おまえ、きれいごと言っといて、すでに本国から軍隊よこしてきたんだなッ?」


 おおっ、ワレスさんの胸ぐらつかむ勢い。蘭さん、けっこう攻撃的なんだよね。美形同士がからむと、なんかエロいなぁ。

 それにしてもこのゲーム、女の子が……ブツブツ……。


 だが、ワレスさんは蘭さんの両手をつかんで引き離し、言いきった。


「違う。わが王はあんたの国との戦を望んでいない。だからこそ、おれが一身上に罪をかぶろうとしているんだろ?」


 それはワレスさんの言うとおりだ。

 花嫁が逃げたからって軍隊送ってきたんじゃ、それこそブラン王に戦の口実を与えてしまう。


 そのことについては、蘭さんも認めざるを得ない。


「……じゃあ、この音は?」

 つぶやいて、手を離す。


 僕らは、そろって廊下から顔を出した。そして、ギョッとする。

 一番反応早いのは、ワレスさん。

 サッとみんなを室内に押しこんで扉を閉めた。


「見たか? 今の」

「み、見ました……」と、僕。


 蘭さんや三村くんも、こわばった顔でうなずく。


 いったい、どういうことだ?

 城内にモンスターがいる!



 *


 モンスター。

 それも、スライムやキャタッピやぽよぽよみたいな、そのへんにわんさかいる弱っちいやつらじゃない。

 もう見ただけでわかる。

 それはゲーム終盤、魔王城のなかにしか出現しないような強力なモンスターだ。よろいやカブトを身につけた獣人ビースト系のやつら。または、ドラゴン。こんなの序盤に出てくる敵じゃない。


 これを見ただけで、僕は理解した。

 このイベントは、アレだ。

 主役がちょっとした冒険を終えて、いよいよ明日は出立の日という夜、村を殲滅せんめつしに来る魔王軍。

 あれに間違いない。


(僕のせい? 僕が主役だから? いや違う……)


 ちゃんと伏線は張ってあった。

 そう言えば、詰所の兵隊が言ってたような?



 ——世界のどこかで勇者が生まれたらしいですよ。勇者は王子なんだって。



 蘭さんは王族の生まれだ。

 事情があって女のふりをしてたけど、ほんとは男だった。つまり、王子だ。

 たぶん、蘭さんがこのゲームの物語の勇者なんだ。


 そうか。僕は勇者の友人か。

 魔法使いにしては体力もそこそこあるし、腕力も少しはある。たぶん、僕はプリースト。勇者を守る僧侶なんだ。


 マズイぞ。

 ということは、早くこの城から逃げださないと、全滅する。


 僕だけじゃない。

 たぶん、ここにいる四人とも、みんなその考えに至った。

 数瞬、おたがいの目を見かわしたのち、うなずきあう。


「僕が男だって、魔物たちにバレたんですね」

「これまで王女のふりをしてたから、それが目くらましになってたんだね」

「おお、興奮するわぁ。おれ、勇者、初めて見るで」

「魔物たちは勇者のおまえを殺しに来た」


 さて、どのセリフが僕でしょう。

 正解は二番。

 あっ、つい緊張のあまりジョークをとばしてしまった。


「父上と母上を助けに行かないと!」


 蘭さんが叫び、今にも部屋をとびだしそうに。

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