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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第五部 ようやく王都シルバースター! 十三章 花の都
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山びこ戦!1



「行くぞ。キルミン」

「いいわよ。ダルト」


 なるほど。おじさんの名前はダルト、おばさんはキルミンか。てか、僕がこっそり、おばさん呼ばわりしてることを知ったら、キルミンさんはめちゃめちゃ怒りまくるだろう。そういうお年ごろだ。


「アンドーくん。僕らも近くでようす見てようか」

「そげだね。ほかの人の戦いかたを見て学ぶのも役に立つかもしれんね」


 僕らもゾロゾロと降りていく。

 ダルトさんとキルミンさんのあとを五メートルほど離れて追っていった。

 数人で近づいていっても、山びこはまったく微動だにしない。なんとなく恨みがましい目で、こっちを見るばかりだ。


 ダルトさんとキルミンさんは、それぞれの武器をぬいた。


 ダルトさんは仕込み杖。あれで魔法使いなのか、あの人。


 キルミンさんは——ん? 扇?

 扇なんて初めて見るぞ。

 そういえば、マーダー神殿で、基本職のなかに、詩人というのがあったっけ。歌と踊りでパーティーを補助する職業だった。きっと、キルミンさんは詩人だ。それか、詩人の上級職が踊り子とか。


 チャラララララララララ〜

 チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャンチャン!


 あれ? なんで? 僕らのとこまで戦闘音楽が聞こえてくる。

 まさか、僕らもパーティーメンバーに入ってるわけじゃないよね?


 ダルトさんたちも気づいた。


「なんだ。小僧がついてきたのか。剣を持ってるってことは、いちおう戦士だな? しょうがない。今、パーティーが二人しかいないからな。おまえたちも力を貸せ。わしたちの足だけはひっぱるなよ? このAランクのわしらのジャマだけはな」


 へへへ。Aランクなんだ。

 僕なんかダブルAだもんね。


「戦士系がたりないみたいだから、僕とぽよちゃんで行ってくるよ」

「そうがいいね。行ってらっしゃい」


 魔法使いのアンドーくんと、僧侶のたまりんはその場に残る。いざってときは僕が回復魔法は使えるから、なんとかなるだろう。


 あらためて、バトル。

 テロップが出てきた。



 野生の山びこが現れた!



 *



 山びこは動かない。

 申しわけない気がするんだけど、線路の上にいられたら困るのも事実だ。

 倒せなくてもいいんだけど、せめて、どいてもらわないとね。


 仮パーティーになったんで、ダルトさんとキルミンさんのステが見れる。

 二人ともレベルは25。

 でも、思ってたほど数値は高くない。装備品もこれはってほどののものじゃないし、正直、これで戦えるのか?

 職業は思ったとおり、キルミンさんは踊り子だ。

 ただ、ダルトさんを見て、僕はイヤな予感がした。遊び人なのだ。

 ほんとに大丈夫なんだよね?

 遊び人……遊ばないよね?


 とにかく……戦おうか。

 僕らのなかで一番速いのは、ぽよちゃん。


「ぽよちゃん。聞き耳してくれる?」

「キュイ」


 ピクピク〜

 戦場の癒し、ぽよちゃん。


 山びこのステータスはHPが9000。MPはゼロ。

 でも、なんだろう、これ?

 攻撃力は50しかないのに、防御力が500って? かったいなぁ。

 メタルキ〇グなみだよ?

 これ、クリティカル攻撃以外はきかないんじゃ?

 ってことは、僕のラッキー度頼みの通常攻撃と、ぽよちゃんには例のやつか。


 ちなみに行動パターンは“守る”と“山びこ”の二種類だ。

 種族的には精霊族になるらしい。


 僕はその事実を、ダルトさんとキルミンさんにも教えた。一時的なものではあるけど、パーティーなんで、情報は共有しとかないと。


「じゃあ、ぽよちゃんは、まず“はねる”で素早さをあげてから、“ためる”にしてくれる? アルテマハイテンションになったら攻撃してね?」

「キュイ!」


 ぽよちゃんは素直に、はねる。

 ピョコピョコ。ピョコピョンピョン。

 で、おめめをギュッ。

 二回行動しかしないな。

 素早さをあげても、そのターンでの行動回数は変わらないのか。


 次はキルミンさんだった。

「勝運のタンゴ!」


 叫んだあと、急に踊りだす。

 タンゴの曲がかかるから不思議だ。

 タンゴって本来はペアダンスのはずだけど、一人用にアレンジされてるみたいだ。

 なんの効果があるのかなと思ってたら、力の湧きあがってくる感じがした。これは、蘭さんの「みんな、がんばろ〜」と同じ効果だな。


 次は——と、僕か?

 ダルトさんは腕組みして立ってる。

 遊び人がターンのトリか。ちょっと心配。


 でも、しょうがないんで、僕は精霊王のレプリカ剣をふりあげ、すわりこんだ山びこのすねを打った。ガッチンと固い音がする。ボウッと炎も燃えあがり、合計でHPは150もけずれた。とくに魔法が効いてる。


 でも、山びこは無表情なんだよなぁ。

 無表情というか、物悲しいような目で僕を見るんだ。うう……そんな目で見ないで。


 ふと、僕は山びこの三角に折った両足のあいだを見た。山がたになった足が作る空間に、何か隠れてる。

 なんだろう? アレ? もしかして、山びこはアレを守ってるのかな?


 そんなことを考えてたら、背後からおじさんのわめき声が響いた。


「賭けてみる〜?」


 えッ? それって、たしか、敵か味方のどっちかが必ず全滅するっていう……?


 僕は意識が遠のいていくのを感じた。

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