表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第五部 ようやく王都シルバースター! 十三章 花の都
179/377

列車は走……走りません?



「わあっ、煙が——煙がスゴイ! 前が見えない」

「速いねぇ。馬車よりずっと速いが」

「キュイキュイ〜」


 初めての蒸気機関車の旅で、僕らはハシャイでいた。はしゃいでましたよ、はい。


 煙はもうもう。想像してたより、かなりの量だった。

 スピードはたぶんだけど、時速にして八十キロくらいかな。高速に乗った自動車くらいだ。新幹線になれた現代人には速さはさほどじゃないんだけど、音と煙の迫力には圧倒された。これは、たしかに顔が真っ黒になるよなぁ。


 車窓を流れる景色をながめて、上機嫌だったんだけど、さて、サンディアナの街で買っといたお弁当を食べようかと思ったころだ。急に汽車の速度が落ちた。じょじょに減速し、そのうち停まる。


「ん? 駅? それにしては草原のどまんなかで停まるね」


 汽車は走ってるものの、基本はRPGの世界だ。大きな街以外は人工物がほとんどない。街のまわりの田園地帯をぬけると、あとはもう森や草原や山ばかりなり。

 荷物の流通のためにしろ、人を運ぶためにしろ、停止しなきゃいけない理由は街以外にはないはずなんだけど。


 僕らが戸惑っていると、あのおじさんたちが騒ぎだした。


「おい、なんだ? なんでこんなところで停まる? こら、車掌はいないのか?」

「そうよ。わたしたちは忙しいんですからね! こんなところで油売ってるヒマはないのよ?」


 あんまりにぎやかなので、機関車から車掌がとびだしてきた。


「すみません! 前方に山びこがいまして。線路をふさいでいます。このままでは通れません!」


 山びこ? モンスターなんだろうか?


 煙が晴れたんで、前方も見渡せた。

 見ると、前方三十メートルのあたりで、線路がブツッととぎれてる。その上に小山が乗っかっていた。


「なんで山が?」

「かーくん。山だないよ。手足がああよ」

「あっ、ほんとだ」


 巨人が体育座りしてる。

 岩のような肌をして、全身に苔が生えてるので、一見すると山のように見えた。


「山のなかでは、たまに見かけるモンスターです。このあたり、もともとは山があったので。切りひらいてトンネルを作り、王都までつないだのです」と、車掌さんが説明してくれる。


 ああ……ファンタジーの世界にも環境問題が。

 住処をなくした野生動物とかが迷いでてくるパターンだ。


「どけないと通れないんですか?」

「そういうことです。お客様がたは強い冒険者なんですよね? どなたでもいいので倒してもらえませんか?」


 気が進まないなぁ。

 自然環境を破壊したのは人間なんでしょ?

 きっとあの山びこは山を返してほしいんだと思う。抗議活動中だ。


 僕が黙っていると、うしろのほうから笑い声が響いた。

 ふりかえると、おじさんだ。


「しょうがあるまい。わしらに任せておくがいい。なぁ、キルミン」

「そうねぇ。ちょっと大きいけど、やれなくはないわ」


 おじさんとおばさんは笑いながら外へ出ていった。

 あの人たちも冒険者だったのか。

 どんな戦いかたをするんだろう?

 たった二人なのに、大丈夫なのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ