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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第五部 ようやく王都シルバースター! 十三章 花の都
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汽車の旅〜



 サンディアナで一泊して、今日こそは汽車に乗る。

 乗り場はサンディアナ郊外。

 西の外れだ。

 まさかRPGの世界で蒸気機関車に乗れるとは。子どものころに観光用に走らせてるデゴイチを見たことはあるけど、乗ったことはないんだよねぇ。


 ギルドで聞いたところによれば、こういう乗り物ができたのは、つい最近らしい。魔法と科学を融合させた天才発明家が王都にいるんだとか。


 プラットフォームには、すでに列車が来ていた。列車って言っても、機関車をのぞくと三両しかないけどね。


 汽車は高級な乗り物で、庶民は乗れないのだ。チケットも高額なんだけど、なんと言っても冒険者ランクがC以上じゃないとチケットを購入することができない。なので、乗客の数は少ないってわけ。


 チケット代が王都までだと一人五百円!

 これは鋼鉄シリーズの武器防具が二千円代で買えることを思えば、一般市民の月収に相当するんじゃないかと思う。


 そんなわけで、プラットフォームには僕ら以外の乗客の影は、今のところない。大きな鉄の乗り物の勇姿を、僕らは思うぞんぶん堪能した。


「スゴイねぇ。僕、蒸気機関車は初めて乗るよぉ」

「わもだが。わの故郷は田舎だけんねぇ」


 ……知ってる。山奥の奥の奥だった。

 僕もそうだと思われただろうか?

 いちおう僕は電車やバスには乗るよ?


 それにしても、こんなものが急にできてしまう文明ってどうなってるんだろう?

 ふつうはさ。科学っていうのは順当に発明や実績がつみかさなっていくもんだ。昨日まで病気は呪術で治してましたって世界で、とつじょ今日からゲノム編集で遺伝子治療しますねっとはならない。


 そんなことを考えていると、ポーッ、ポーッと機関車が汽笛を鳴らした。

 そろそろ出発の時間らしい。


「わ〜い。汽車、汽車。走れ〜。さ、ぽよちゃん。汽車だよ〜」

「ピュイピュイ〜」


 客席は僕ら、ひとりじめかな?


 こんなにガラ空きで経営は成り立つのか心配になったけど、人間を乗せるのは一両めだけのようだ。二両め三両めには客席がなく、扉もひらかない。貨物車両になっている。

 なるほど。

 物資を輸送することで利潤を得ているのか。たしかに最近まで馬車しかなかった世界では、画期的な物流手段だ。


 僕らが汽車に乗りこもうとしていたときだ。うしろから騒々しい足音が近づいてきた。


「急げ。急げ。まったく、おまえといるといつもこれだな。まにあわんかと思ったぞ」

「あらあら。おヒゲの形がキマらないと、だだをこねてたのは、あなたじゃありませんか?」

「わしは駄々なんかこねとらん——どけ。小僧。誰だ。こんなところまで見学の子どもを入れた駅員は?」


 にぎやかなおじさんと、派手な化粧のおばさんだ。おじさんはデップリ横にひろがり、縦に短い。おばさんは若いころは美人だったんだろう。縦に長く、横に細い。

 おじさんは黒いフロックコート風の服で、おばさんはスリットの深く入った赤いドレスを着ていた。


 小僧ってのは僕のことなんだろうな。

 まあ、いいんだけど。


 僕らを押しのけて、二人は汽車に入っていった。

 ひとりじめじゃないのか。

 ちょっと残念。


 僕らも乗車する。

 さっきの二人は二両に近いうしろのほうの座席にすわっていた。

 それをさけて、僕らは機関車に近いほうに腰かける。


 まもなく、シュコーシュコーと煙突から煙が吐きだされ、機関車は走りだした。

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