帰ってきました! 文明圏!
選択できる移動場所は、マーダー神殿とサンディアナの二ヶ所だけだった。
僕がこの帽子を手に入れて、移動魔法を使えるようになったのが、マーダー神殿だからなんだろう。
フェニックスに会った朝日の崖や、竜の岬にも行けるけど、今はダンジョンに入りたい気分じゃないんで。
「じゃあ、行くよ? サンディアナへ!」
僕らはかたまりになって空間を飛んだ。
シュッと景色がゆがみ、次に現れたのは——ああッ! 街だー! サンディアナだぁー!
「帰った! 帰ってきたよぉー!」
「帰ったね! 戻ってきたが!」
「キュイ〜」
人間が歩いてる。
それだけのことが、こんなに嬉しいなんて。やっぱり人間は群れで暮らす生き物なんだなぁと実感。
こう見た感じ、先日のキャラバン襲撃の爪痕は、すでにない。家屋などが破壊されるにはいたってなかったようで、火の手も早めに消しとめられたんだろう。
最初にこの街に来たときと、ほとんど何も変わっていない街並みだ。
「よかった。大きな被害はなかったみたいだね」
「うん。この街はガイな街だけん、冒険者がいっぱいおっただね。守りがしっかりしちょったみたいだが」
僕らは何はともあれ、街の中心部へ走っていった。ギルドにとびこむ。
ギルドの人たちは僕らを見て、急いでかけよってくる。
受付のお姉さん、武器屋のソウレさん、防具屋のペリペンさん。ルベッカさんやフラウさんも二階からおりてくる。
「兄ちゃん! よく無事だったな! あんた、キャラバンにさらわれたって話だったぜ?」
口調だけ聞くと男みたいなんだけど、とびついてきて、豊満な胸に僕の顔をうずめてくれたのはルベッカさんだ。
むふふ。役得ってやつですねぇ……。
「さらわれました! まあ、わざとではあったんですけど。それで、たった今、逃げだしてきました!」
「自力で逃げてきたのか? そりゃスゴイ。ねえ、ソウレ。あたしたちが現役のときだって、そこまで無謀な冒険できなかったよね?」
「ああ」
「ケガはしてない? 大変なめにあわなかった?」と、眉をひそめて心配してくれたのは、フラウさんだ。
「よければ、わたしの回復魔法で治しますよ?」
「ありがとうございます! でも、大丈夫です。それより、みなさんに——というか、ギルドに報告があるんです! 僕らの話を聞いてください」
僕らのもたらした報告が、ギルドに激震を走らせたのは言うまでもない。