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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十二章 ノームとの出会い
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滝をめざして



 平原を歩いていくと、やっと川に行きあたった。

 これで迷わずに滝まで行けるぞ。

 川ぞいにお花畑をくだる。

 ずいぶん歩いた気がしたけど、そろそろじゃないのかなと考えていると、どこからか変な音が聞こえてきた。変なというか、お腹の底に響くような……あれは、水音か?


「あッ、滝だ。滝が近いんだね」

「ああ……滝かぁ。ついに来たかね。どげすう?」


 いちまつの不安をいだきつつ、その場所についた。

 水量の増していく川が、とつぜん見えなくなったと思うと、そのさきが崖になっている。


「あれ? 今、ここに人影あったよね?」

「えっ? そげだった?」


 アンドーくんは気がつかなかったみたいだ。それとも、僕が夢でも見てたのか? いや、夢だけどってツッコミはもう飽きた。

 なんかなぁ。さっき、ここに猛が立ってたような気がするんだよね。

 あの黒いフードつきのマント着た、背の高い男……。

 猛だったのかなぁ?

 猛が裏切りのユダだって、ほんとかなぁ?

 気になりすぎて幻でも見たかなぁ?


 気をとりなおして、あらためて滝をながめる。地面に這いつくばって、恐る恐る崖下をながめると、想像を超えるものすごい高さだ。滝つぼが見えない。滝の下方は大量にまきあがる水しぶきによって、かすんでいた。雲海のなかに急流が飲みこまれていく。


「うわぁ……確実に死ぬよね?」

「う、うん。死ぬね」

「行くしかないんだよね?」

「それか一生、ノームの村で暮らすがいいか」

「うーん。それも、ちょっと……」


 ノームの村でのんびりスローライフしたいけどねぇ。世界の平和を考えると、そうも言ってられないだろう。

 じゃあ、結論。

 とびこむしかない……。


「とびこむ?」

「ほかにいい方法がああかね?」

「ない……ね」


 たまりんが、ゆらゆらしてる。


「たまりんは浮かんでるから、飛んでおりることができるよね?」


 ゆらゆら、ゆら〜り。


「だよね。ぽよちゃんを抱っこしていくことできる?」


 ゆ……ゆらり?


「あっ、ぽよちゃんはムリなのか。じゃあ、クピピコは?」


 ゆらり! ゆらり!


「クピピコは大丈夫なんだね? じゃあ、お願い。クピピコもいっしょにつれていって」


 ゆら〜り。


 これでなんとか、たまりんとクピピコだけは無事に下まで行ける。

 残るは、僕らだ。

 三村くんなら得意技が水泳だったから、もしかしたら泳いでいけたのかもしれないけど、僕にはそんな得意技はない。あるのは小銭拾いと小説を書くと、つまみ食いだ。

 僕は断言する。

 今この場面で役立つ技は何ひとつないと!


「……僕が好きだったロープレでね」

「ロープレってなんだかいね?」

「あ、うん。そこは聞き流して」

「うん」

「塔の最上階でさ。すぐそこに欲しいものが見えてるのに、途中で橋が切れてるところがあったんだ。だけど、信じてふみだすと、そこには見えない橋が続いていた——ここも、それなんだと思う?」

「さあ……」


 ふみだすべきか、ふみださざるべきか?

 なかなかの究極の選択だよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クピピコかわいいw
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