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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二章 シルキー城の一夜
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蘭さん、お嫁に行っちゃうのか?



 それにしても、ワレスさん。こうして見ると、生みの親の僕でさえ、その迫力に気おされるなぁ。目つきが鋭い。スキがない。たぶん、レベルがすごく高いんだろうなぁ。


 彼はきっと今、僕のことをポヨポヨだと認識しているであろう。

 ポヨポヨは来るときにワールドマップで出会ったラブリーなウサギ形モンスターだ。


 はぁ。それにしても、このゲーム、女の子が出てこない! 切実!


「わたしは結婚などしません。それは兄が勝手に決めたことです」と、蘭さんが断乎とした口調で抗議した。


 ワレスさんは不敵に笑う。


「貴国では王の勅命ちょくめいは絶対ではないのですか? 少なくとも、わが国では絶対ですが」

「それは……」


 蘭さんが言葉に詰まった。

 やっぱり、王様の命令には逆らえないのか。蘭さんパパが引退しちゃってたのが残念だよね。


 しばらくして、蘭さんは吐息をついた。


「……わかりました。でも、出発は明日にしてください。せめて最後に父や母と一晩すごさせてくださってもよいでしょう?」

「かまいませんよ」


 ああ、蘭さん。せっかく逃げだしたのに、あきらめたのか。

 まあ、相手が悪いよね。

 ワレスさん、ちょっとやそっとじゃ、ひきそうにない。


「では、私もこの城に一泊させていただきましょう」

「どうぞ」


 わあっ、ワレスさんと同じ屋根の下だぁ。僕の英雄よ。その姿、この目に焼きつけておくぞ。

 とか喜んでられないよね。

 蘭さん、どうするのかなぁ?



 *


 ワレスさんたち一行が王の面前を辞したので、僕もそのあとを追いかけていった。サイン、貰わなくちゃ。


「あの、ワレスさん。サインください!」


 色紙、色紙は……ない。

 ないのか。

 なんかないのか?

 Tシャツにマジックでもいい!


「ああ、ダメだ。なんにもない。じゃあ、せめて握手。あと、写真撮らせて。スマホは持ってるから!」

「スマホ……?」

「あっ、なんでもないです。魔道具みたいなもので。はい、バター」

「ほう。面白いものを持っているんだな。おまえ、名は?」

「かーくんです!」

「かーくんか。魔法使いか?」

「いえ。駆けだしの冒険者です。ワレスさんみたいなカッコイイ騎士になりたいです!」


 ああ、ワレスさんが僕を見て微笑んでる。憧れのアイドルにぐうぜん遭遇したときの気分。幸せ〜。

 わかってる。わかってるぞ。たぶん、部下のアブセスと僕が似てるとか思ってるんだ。僕のほうが天然だけどね!


「そうか。今夜は早く寝ておけよ」


 ワレスさんはそう言って去っていった。

 んん? どういう意味だったんだろ?


 となりで三村くんが、ぼそりと言った。


「なんや、うさんくさいやっちゃなぁ」

「ええ? カッコイイじゃん」

「男のくせに綺麗すぎるわ」


 それなら、蘭さんだって——と思ったけど、言わないでおいた。

 蘭さんは、たぶん、男の娘だ。

 でも、そのことを世間に隠してる。

 男だと知れると、お兄さんに暗殺されちゃうからだろう。


 うーん。ということは、隣国の王様と結婚なんてできないよ。

 どうする気なんだろう?


 その夜、僕らは言われたとおり早く寝た。何かが起こると確信していたからだ。

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