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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十二章 ノームとの出会い
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ナッツとのお別れ。また会う日まで



 翌朝。

 僕らはまだ早朝のうちに目をさました。鳥の声がさわがしいほどに響く。


 おだやかなノームの村。


 次にここへ来るときは、僕らはひとまわりも、ふたまわりも大きくなっているだろう。いや、コビット王の剣でプチッとやってもらえば大きくなるんだけどさ。そういう意味じゃなくて。


「ナッツ。元気でね。装備品はあげるよ。がんばって訓練して」

「ありがとう! 兄ちゃん。気前いい!」

「村に何かあったときは、みんなを守れるようにね。装備品がないと困るだろ?」

「うん」


 僕はオマケで、昨日買った精霊石の一つをナッツにプレゼントした。回復魔法が入ってるから、きっとナッツの訓練の役に立ってくれるはずだ。


「じゃあ、長老。ありがとうございました。平原のバケモノは約束どおり、僕たちが倒しますからね」

「だばだば。よろしくだば」

「気をつけて行くさぼ〜」


 長老の家族やナッツに見送られて、僕らはノーム村を発った。

 村を出たところで、クピピコにコビット王の剣で刺してくれるよう頼む。


「そっとやってよ? ほんとに、そっとだよ?」

「いさい承知でござる」

「あっ、その前に何か話しときたいことあったら言ってよ? 大きくなったら、また言葉が通じなくなるから」

「ふむ。では、これだけ言わせてもらおう」

「何?」

「拙者のコビット語が標準語でござる。ノームはちと訛っておるな」

「そ、そうだね」


 そこ、気になってたんだね。


 僕らは順番に、コビット王の剣でつついてもらった。チクンとした痛みとともに、体が大きくなっていく。


「ああ、戻ったぁー。ニ〇スの冒険みたいで楽しかったけど、ずっとだと困るよね」

「ナッツは小さいまんまで大丈夫だらか?」

「悪い魔法じゃないから平気なんじゃないかな」

「そげか」

「クピピ、コピコ。ピコ」


 あっ、やっぱりまたわからなくなった。コビット語。


「じゃあ、クピピコは、ぽよちゃんに乗っててね。出発しよう。今日中に文明圏に帰れますように!」


 おとぎ話の世界のようだったノームの村を、僕らはあとにした。



 *



 滝への道すじは、前もって長老から聞いていた。

 南の平原をまっすぐつっきっていくと、やがて大河に行きつく。その川ぞいに下流へ向かうと、巨大な滝が、ごうごうと音を立てて流れているという。


「滝に飛びこむのかぁ。生きて帰れるかなぁ?」

「そこは、なんとかなぁと信じるしかないだない?」

「まあ、そうなんだけど」


 ノーム村をかこむ森をぬけると、たしかに平原になっていた。野の花が何種類も群れ咲いていて、心がなごむ。高原の春って感じ。ぽよちゃんが幸せそうに白い花をむしゃむしゃした。遠くのほうでもウサギが遊んでる。


 あれ?


「あのウサギ、大きいよね……平原のバケモノかな?」

「バケモノっていうには、こまいがね」

「んーと、ぽよちゃんくらい」

「うん。ぽよちゃん……」



 野生の黒ぽよが現れた!

 野生の茶ぽよが現れた!



 ああー! モンスターだった。

 ぽよぽよかぁー。

 ぽよぽよって始まりの街付近以外にもいるんだ。


 僕らは戦闘態勢に入る。

 でも、なんだろう。

 黒いぽよぽよと茶色いぽよぽよが、とつぜん、あちこちに跳ねだした。

 ピョコピョコピョコピョコ。ピョココピョコ。

 せわしないなぁ。


「ぽよちゃん。聞き耳してくれる?」

「……キュイ」


 ハッ! ぽよちゃんが仲間を見る目で、ぽよぽよたちを見てる。そうだよね。ぽよちゃんにとっては仲間だよね。


 ああッ! ぽよちゃんが跳ねた。

 急にピョコピョコしだしたぞ。

 黒ぽよたちのマネしてるのか?

 どどど、どうしよう。このまま、ぽよちゃんが野生に帰ってしまったら……?


「キュイ!」

「キュキュキュ」

「キュイ、キュイ!」


 何やら鳴きさわぐ三匹。

 そうかぁ。ぽよちゃん語もわかってなかったかぁ。会話してるふうだけど理解できない。


「キュキュキュイ、キュイ?」

「キュキュウ……」

「キュウ……」


 チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャンチャ……。


 ん? 戦闘音楽が消えた?



 野生の黒ぽよは逃げだした。

 野生の茶ぽよは逃げだした。

 ぽよちゃんが、はねるを使えるようになった!



 うーん。何が起こったのか?

 なぜか戦わなくてよくなったぞ。

 見送るぽよちゃんの誇らしそうな顔。

 やっぱり、あのピョコピョコが関係してるのか?


「なんだったんだろう……?」

「ぽよぽよは、もともと群れで暮らすモンスターだけん、ケンカをさけるためのルールみたいなもんがあるだない? 野生動物がツノや体の大きさでマウントとったり、踊りや鳴き声で優劣つけるようなもんでしょう」

「そげか」


 ハッ! 今、ぼ、僕、出雲弁しゃべってた。このままでは僕もいつか、アンドーくんに! あな、恐ろしや……。


「じゃあ、ぽよちゃんがナワバリ争いに勝ったってことか」

「ピュイ〜」


 僕らは平原を進んでいくのだった。

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