魔法で帰れません
「ええー! 地図にないって、そんなバカな? 前に見たとき、ちゃんと赤い点がピコピコしてたよ?」
「ピコピコ? コピピコピ?」
「あっ、ごめん。コビット語じゃないよ」
魔法の地図をとりだしてみた。
たしかに赤い点はピコピコしてる。
でも、前に廃墟のなかで見たときから、いっこうに動いてる気配がない。いくらなんでも五キロは歩いたんだから、少しは反応してもいいはずだ。
「これって、ほんとにこの場所なんじゃなくて、地図上に表せないってだけなんだ。だから、初期位置からカーソルが動かないんだ」
うーん。ガッカリ。
これじゃ現在地がどこだかわからない。
「せっかく脱出してきたのに、この場所が特定できないんじゃ、ギルドに帰っても、いい報告ができない」
「しょうがないが。キャラバンのことだけでも報告さんと」
「う、うん。そうだね。やつらが人間をさらってモンスターに変えてるってこと伝えないとね」
それにしても、そのためにはまずギルドのある場所まで帰らないといけない。どうも、このへんにはギルドはなさそうだ。人間の街か村があるだろうか?
「そうだ! クピピコ。ここがこの地図のどのへんか、ノームに聞いてみてくれる?」
「クピ?」
「クピって言われてもよくわからないけど、ごめん。お願い」
「コピコピクピコピコー」
意味はわからなかったけど、なんとなくバカにされたような気はした。
しかしまあ、クピピコがノームに話を聞いてくれた。
このあとコビット語の会話が続きますよー。
「ピコッピ。コピピラー?」
「ピコッピ。ココピコ」
「ココピコ?」
「クピ。コピクピ、ピコピコ、ピー」
——中略——
「クピクピ。ピコッピ。コンピッコ、ピラピコクピ」
「クピ! クピ!」
もういいだろうか?
きっとこの会話を理解できた人は誰もいないと思う。
クピピコは僕に向きなおると、地図を指さして首をふった。コピコピ言ってるけど、仕草から察すると、この地図には載ってないということらしい。
やっぱりそうなんだ。
テロップは正しかったか。
アンドーくんが考えこんだ。
「かーくん。諜報活動しとったときに聞いたことがああけど、もしかしたら、ここ、封印された大地かもしれんね」
「封印された大地?」
「この世のどこかには封印された大地が何ヶ所かあって、そこへの出入りは特別な扉を通らんとできんらしいよ」
ん? 扉?
僕はシルキー城の地下深くにあった扉を思いだした。
それに旅人のウワサでも何度か扉の話を聞いた。
ここって、その扉のなかなのか?