あの光のさきには?
ナッツのお母さんは人間に戻った。
でも、意識は戻らない。
フェニックスの灰を使っても、目をひらかない。
仮死状態のようだ。
きっと何か特別な方法が必要なのだろう。
「死んではいないみたいだ。うっすらとだけど脈がある。早く教会のあるところにつれていこう」
トーマスのときのように、ドラゴンのウロコとか、そういうイベントアイテムがないといけないのかも?
なんにせよ、これで希望は残った。
なんとかして蘇生させることはできるはず。
ナッツの表情も明るくなっている。
アンドーくんがナッツのお母さんを抱えて、僕らはさきに進んでいった。
人工物のなかからぬけだし、岩肌の洞くつのなかを歩く。
しばらく行くと、前方に光がゆれた。
あの光だ。ゴーレム戦に突入する前、僕が人魂だと思った怪しい光。
でも、近づいていってよく見ると、どうもそんなものじゃない。
あれは……カンテラの明かりでは?
この洞くつのなかに誰かいるのか?
さらに近づいていく。
すると、歌が聞こえた。
やけにハイホーハイホーと言っている。カツン、カツンと岩をけずるような音もする。
「あの脇道のなかだね」
「うん。そげだね。行ってみぃか。人がおったら出口を教えてもらえぇよ」
廃墟はその昔、立派なお城だったようだ。近くには今も村があるのかもしれない。この下水道、地下部分で村の洞くつとつながっているのかな?
僕らはようやく地下の暗闇をぬけだせる喜びで、疲れも忘れて走っていった。
脇道は坑道のようだった。
金鉱かな? それとも炭鉱? 宝石かもしれない。
坑道なので天井が低いが、なんとか、かがんで歩いていける。
遠くに人影が見えた。
やっぱり人がいたんだ。よかった。
「おーい。おーい。助けてくれませんか? 外に出たいんです。出口を教えてもらえませんか?」
大声で呼びかけた僕はビックリした。
人影が小さいから、まだまだ離れたところにいるのかと思ったのに、その人の声は思いがけず、かなり近くから聞こえたからだ。
「クピピ? ピッピコクピコピ?」
ん? こ、これは……この難解な言語は、コビット語では?
ふりかえったその人は、まさしく小人。身長五十センチほどの小さな人だった。