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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十一章 研究室の秘密
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ゴーレム戦!4



 ゴーレムがフルスイングの体勢に入った。

 このままじゃ、ナッツがやられちゃうぞ!


 ナッツは立て続けに豪腕になげとばされ、石畳の上にころがったまま起きあがれないでいる。


 ゴーレムが床に両こぶしをふりおろした。そのまま水平に胴体をグルッと一周——


 いや、違う。

 ゴーレムが止まったぞ?


 ゴーレムには顔がない。目鼻も口も耳もない。でも、何かを凝視している。


 僕はゴーレムの視線のさきをながめた。

 倒れたナッツのカバンから、あの首飾りがこぼれおちていた。ナッツの腕輪とおそろいで作ったという、お母さんの首飾り。


「お、お、お…………」


 ゴーレムが苦しみもだえる。

 なくしかけた記憶をよみがえらせようと、もがいてるのか?


 僕は首飾りをひろって、ゴーレムの前につきつけた。


「もうやめてください! あなたはナッツのお母さんなんでしょ?」


 ゴーレムが硬直した。

 まちがいない。

 これはナッツのお母さんだ。

 モンスターに姿を変えられて、記憶を失って、自分の息子もわからなくなって攻撃していたのだ。


「ナッツはあなたの息子だよ! もう戦わないで!」


 ゴーレムはピタリと止まったまま動かない。

 ナッツがふるえ声を出した。


「か……母ちゃん? ほんとに?」

「ナッツ。人間をモンスターに変身させてしまう、あの魔法の機械を君も見ただろ? お母さんはさらわれて、あの機械に入れられたんだ。でも、息子の君のことを心の奥底では、まだ覚えてる。忘れるわけないよ。それが親子の絆ってもんだよ」


 ナッツはうつむいた。歯をくいしばってる。顔をそむけたのは、涙を見られないようにしたのかもしれない。


「母ちゃん。まだ生きて……」

「うん。ナッツ。だから、君はこの人を攻撃しちゃいけない。親子で戦うなんて、まちがってる」

「母ちゃんは人間に戻らないの?」

「保証はないけど、戦闘不能になれば、今まではみんな人間に戻った。僕に任せてほしい」

「う、うん……」


 じつを言うと、うちの両親は僕が子どものときに交通事故で亡くなってる。京都のじいちゃんに育てられたけど、そのじいちゃんも天寿をまっとうした。

 だから、世界中に家族と呼べるのは、今はもう兄の猛だけだ。それでも、僕は猛がいてくれて幸せなんだと思う。


 ナッツはこんなに小さいのに、もうひとりぼっちなんだ。なんとかしてやりたい。


 僕は精霊王のレプリカ剣をかかげると、ゴーレムの胸にそっと当てた。追加効果の魔法が発動した。火属性単体最強魔法の『燃えつきろ〜』がこめられているらしい。


 炎がゴーレムを包んだ。

 ゴーレムは静かによこたわった。


 これでナッツのお母さんは助かるよね?

 人間に戻るんだよね?


 緊張して見つめるけれど、いつまでたっても、その変化は現れなかった。

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