つまみ食い連発!
MPを使いすぎても戦闘にさしさわるので、防具などの呪い解きはあとまわしにして再出発だ。
でも、これでパーティーのうち三人が回復魔法を使えるようになったし、攻撃力が底上げされて、バトルは比較にならないほど楽になった。
とくにアンドーくんの世界樹の枝先はいいよね。MPを使わずして、戦闘のたびにHP回復できる。
これに似た武器、あのゲームにもあったよなぁ。シリーズの7だったかな? 僕は毎回、戦闘のたびに必ずソレを使って、メンバーをつねに無傷で保ち、MPを節約したもんだ。ケチくさい戦いをする男、かーくん。
おっと回想にふけってる場合じゃない。
またまたブッキーが出てきた。
「僕、つまみ食いするから、みんなで倒して」
「わかった」
ふふふ。この調子でさっきから、せっせとつまみ食いにいそしむ僕だった。もう十回はチューチューしたよ。
今の僕らならブッキーは一撃で倒せるし、三体ずつで出てくるからお供がいなければ、確実に一ターンでしとめられるのも利点だ。
チューチューした僕の数値は、これだ。
HP220『12』、MP170『8』、力60(66)『1』、体力58(63)『2』、知力110、素早さ65『2』、器用さ92、幸運99998。
レベルは22のまま。なのに、数値は合計20も水増しされてる。
こうして見ると、ステータスの増加にはちょっとした癖があるね。
ゼロのつくキリのいい数字や、ゾロ目、または下ひとけたが5のつく数字におさまることが多い。そして、つまみ食いはHP、MP、数値の低いステータスで発動しやすい。いっそのこと幸運が上がって、マックスまで振りきってほしいんだけど、そうは行かないか。
それにしても、おいしすぎるこの技。
僕は有頂天なんだけど、ナッツのようすがおかしい。うしろをしきりに気にしてる。
「どうしたの? ナッツ」
「なんか、ついてくる気がするんだよ。兄ちゃんたち、気づかない?」
「這いよるヘドロじゃない? あいつ、背後から急に近よってきて、先制攻撃しかけてくるヤツだから」
「うーん。そんなんじゃない……気がするんだけどな」
蘭さんの危険察知があったらわかったんだろうけど、残念ながら、今の僕らにはそれはできない。
闇をふりかえっても何も見えない。
ところがだ。
とつぜん、僕らの目の前を光がよぎった。
小さな光の玉が暗闇に尾をひいて消えていった。