下水道にはゾンビです
ふりかえると、そこに、いかにも腐乱した死体が立っていた。
青く変色した肌。
くずれたお肉。
目玉がこぼれおちそう……。
「ギャーッ! 出たー! オバケッ!」
「かーくん。あれはモンスターだが」
「出たー! キライ。怖い。汚い。くさい。ヤダ。ヤダ。あっち行けよぉー!」
「か、かーくん……戦わや」
「ヤダー! ヤダー!」
テロップ。テロップ。流れる。流れる。
野生のすてられた死体が現れた!
野生のブッキーが現れた!
ギャー! ギャー! すてられた死体!
オバケー! オバケー! オバケー!
はぁはぁ……ちょっと疲れてきた。
ふつうに戦おうかな。
「かーくん、巻きで行く?」
「今は五人だから、大丈夫。ぽよちゃんも戦えるし。ぽよちゃん、聞き耳してくれる? ゾンビの数値が見たいなぁ」
「キュイ!」
お耳ピクピク〜
はぁ。いやされる。
戦場のオアシスやぁ。
ゾンビ=すてられた死体のステは……HPと攻撃力高めで防御が低い。素早さはうんと遅く、行動パターンは、のっとると、くさい息。くさい息は毒、マヒ、幻覚のいずれかの状態異常をランダムに起こす特殊攻撃。
「よし。じゃあ、ぽよちゃん。本から倒して」
「キュイ〜!」
ザックザックと切りさかれるブッキーたち。ぽよちゃんにかかれば、あっというまに残骸に。赤い本と青い本が倒れた。
「燃えろ〜」
アンドーくんが黄色い本を倒す。
ヤツらは弱点の属性をついた攻撃魔法の前には、もろい。
残るは、すてられた死体。
そのネーミングから察するに、実験に失敗したかどうかして、ここに廃棄されたんだろう。
うーん。かわいそうだけど、ここまで腐ってしまった死体を生き返らせることはできない。ごめん。成仏して。
僕はひさしぶりに破魔の剣をかまえる。ブーメランより攻撃力が高いから、単体にはこっちだ。
タタッとかけよったものの、近くで見ると、スゴイ迫力だなぁ。
死体感ましまし。
僕はついつい、攻撃をちゅうちょした。どこを切っていいのかわからない。首を落とせば動かなくなるのかな? それとも心臓?
何がイヤって、剣が汚れそうでイヤなんだよな。
でも攻撃しないことには倒せないし。
魔法で倒したほうがいいのかな?
魔法ならさわらなくてすむ。
あッ。僕、攻撃魔法って「破魔の剣〜」しかないか。
ためらっていると、死体が「アガーッ!」と叫んだ。
うわッ。くさい。口臭エチケットがなってない!
僕の意識は遠のいた……。