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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十一章 研究室の秘密
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ゴーレム戦!1



 体の大きさで言うと、ゴーレムのほうが所長より大きい。ゴーレムが五メートル。グレート所長が三メートルほど。

 ぽよちゃんがパーティーにいないんで、ハッキリとはわからないけど、たぶん攻撃力もゴーレムのほうが強いんじゃないかと思う。


 今のメンバーのなかで一番速いのは僕だ。

 たのむよ。僕の幸運度。

 あいかわらず、補助魔法は使えないんで、鋼鉄のブーメランをなげる!

 カキン、カキンといい音がして、ゴーレムと所長にクリティカルが決まる。

 二体ともあんまり素早くないんだな。よけることもなく、ゴーレムは胸、所長はこめかみにクリーンヒットした。


 たまりんはハープをポロン。


 ナッツは急に泣きだした。大泣きだ。

「うわ〜ん。早く大人になりた〜い」


 やっぱり子どもに戦闘はムリだったかな?

 と思ったが、なんかようすが変だ。

 ナッツの数値が全体に前に見たときより高くなっているような?

 うん。まちがいない。

 三割増し強くなってる。

 そういえば、さっきのセリフはナッツの使える呪文だ。

 そうか。早く大人になりたいと願うことで、自分のステータスを水増しする魔法なのか。一回の使用にMPを15も使ってる。つまり、ナッツの今の全MPだ。一回かぎりのチート技なんだな。


 これで、こっちの攻撃は終わりだ。

 所長とゴーレムはどんな攻撃をしかけてくるのかな?


「ブヒヒ。さすがは勇者だな。なかなかやりおるわい」


 ふーん。まだ僕のこと勇者だと思ってるんだ。ゴドバから伝達が行ってるんだな。

 てか、ブタだと思われたくないなら、ブヒヒなんて言わなきゃいいのに。


「だがな。わが研究により生まれたゴーレムは、めっぽう強いのだ。きさまなど敵ではないのだぞよ。行けッ! ゴーレム! ヤツらを倒せ!」


 テロップが流れた。



 グレート研究所長はげきをとばした。仲間のテンションが上がった。ゴーレムの攻撃力が上がった。



 わあッ! なんてヤツだ。

 グレート所長。

 自分では戦わないで、仲間を強くしていくのか。しかも、テンションと攻撃力が両方あがったよ。

 やっかいだなぁ、もう。



 *



 ゴーレムの体が赤いオーラをおびている。テンションが上がってるときの色だ。


 ゴーレムは両腕をそろえて、力いっぱいふりおろす。それじたいはノーコンなんだが、そのまま胴体がグルッと一回転して、腕をぶんまわしてきた!


 わッ! イテテッ! ジャンプしてよけようとしたけど、よけきれなかった。直撃じゃなかったけど、足のさきをゴーレムのゲンコツがかすめて、床にぶっとばされる。HPを三分の一持っていかれた。


 たまりんはスウっと消える羨ましい特技で、なんなくかわす。


 ナッツは僕よりひどかった。

 ものの見事にフルスイング腕バットのえじきになり、瀕死寸前だ。


 やっぱりこのパーティーで戦闘なんてムリだったかな?

 小学一年生にゴーレムと戦えだなんて厳しすぎる。虐待じゃないのか?

 ぽよちゃんも蘭さんもいないのに、どうやって、まともに戦うというのか。


 僕らのターンだ。

 せめてゴーレムのHPがどのくらい残ってるのかわかればな。

 さっきの僕のクリティカルが思いのほか効いてて、あと数回で倒れそうなら、たまりんの海鳴りのラプソディーが起こるまで、回復は待って、攻撃に集中するんだけど。


 たまりん——そうだ。

 たまりんは回復魔法が使える。

 僕がナッツを、たまりんが僕を治せば、なんとかダメージはリセットできる。

 でも、そのくりかえしじゃ敵は“檄をとばす”で、どんどん強くなるばかりだ。


 この戦いには勝機が見えない。

 ゴーレムを倒しても、グレート所長自身も、すごく強いかもだし、これほど希望のない戦いは初めてだ。


「……たまりん。今のターン、ナッツのHPを回復してくれる?」


 ゆらり。


 了解してくれたようだ。

 僕は賭けに出た。

 これでゴーレムが倒れてさえくれたら、僕らにも勝ちめはある。


 僕は思いきり力をこめ、ブーメランを放った。ヒュヒュヒュっと風を切る音がする。

 ゴーレムの胸、グレート所長のこめかみ。さっきと同じ場所に会心の一撃をお見舞いする!

 よしッ! やったかな?

 どうか倒れてくれ。


 ゴーレムはよろめいた。

 足がもつれる。

 しかし——

 その足はふたたび、しっかりと床をふみしめた。

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