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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第四部 囚われのかーくん 十章 悪夢の廃墟
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納得いかない僕



 攻撃力150。

 しかも、これ、僕にも装備できる。

 見ると、アンドーくんにも装備できる。

 レプリカだから、人型なら、たいていの人は装備できるようだ。

 いろんな意味で優秀ではある。


 でも、でもだよ?

 本家本元の精霊王のよろいが十万円だよ? なのにレプリカの剣がその二倍もするなんて、やっぱり僕は納得がいかない。


 なので、僕はズルをすることにした。

 そう。

 小説を書く——だ!

 こんなときこそ特技を活かそう。


 さっき牢屋のなかで、ここにつれてこられるとこまでは書いたから、そのあとのことをパパーッと書きあげる。

 サクサク書けるぞ。冒険録!


 さて、押しの強い幽霊にレプリカの剣を押し売りされるところまで書いた。

 このあとだ。このあと。

 僕は小説で修正を入れることにした。



 ***


「レプリカにしては、ぼるね」

「いえいえ。この強さですよ? お買い得でしょ?」

「だって呪いつきだよ? 魔法はついてなくて呪いがついてるんだよ?」

「いらないんならいいですよ。そのうち誰か買ってくれますから。別に三百年くらい寝かしといたって、私にはまったく問題ないし」

「買うよ! 買うけどさ。まけてくれないの?」

「カアーッ! まけません。ビタ一文まけません!」



 ***


 さあ、ここだ。

 こんなふうに、つけくわえたりして。

 ひひひ。



 ***


「……でも、ちょっと待って。ちょっと待って。お客さん」

「うん?」

「じつはですね。レプリカだけど、この剣には付属品がついているんです」

「付属品?」

「ほら、ここ。この剣の柄のとこ見てください。なんか穴があいてませんか?」

「あいてるね」


 これは最初に見たときから気づいていた。昔は装飾の宝石でも象嵌ぞうがんされてたのかなぁって感じの穴が柄の先端部分にあった。


 幽霊店主はフフフと不気味に笑いながら、僕の前に古い木製の箱を置いた。とても精緻せいちな彫刻が浮き彫りになっていて、ふわりと樹木の芳香がただよう。


「ごらんください」

「うん。見てる。見てるよ」


 店主は箱のふたをあけた。

 長細い箱のなかにはビロードがしきつめられていて、仕切りのなかに一つずつ、色の違う宝石がおさまっていた。


 血のような真紅。

 海のような青。

 べっ甲の黄色。

 澄んだ透明。

 深い森林のようなグリーン。

 夕日のようなオレンジ。

 宇宙の深淵のようなバイオレット。

 全部で七色の宝玉たちだ。


「わあっ。キレイな宝石ですねぇ!」

「これはね。精霊石だよ。精霊が言葉をこめた石には魔法が宿るんだ。魔法のカードは一回で消滅するけど、これは何回使ってもなくならない。この石を剣の柄にハメこむんだ。状況にあわせて石を変えれば、いろんな魔法の効果が現れる。装備魔法の呪文を唱えなくてもいいからね。自動発動型なんだ。攻撃魔法なら、剣を使って攻撃したあとに追加で魔法が発動する。補助魔法なら、敵のステータスを下げたり、自分のステータスを上げたりする。回復魔法なら、攻撃のあと自分や味方のHPを回復する。どうだい? スゴイだろ?」


 なるほど。破魔の剣は「燃えろ〜」の効果しかないけど、付加魔法を好きに交換できるわけか。それは便利。強い魔法なら、さらに便利。


「精霊石っていうのは、この七つだけですか?」

「精霊の国に行けば、いたるところに落ちてるだろうよ。まあ、人間界にも、妖精が多く住む場所には、まれに落ちてるらしいぞ。加工さえすれば、この剣にハメこむことはできる」


 ヤッター!

 精霊石さえ見つければ、バリエーションは無限ってことだ。

 それって本物の精霊王の剣よりスゴイんじゃないの?



 ***


 ポチポチポチポチポチポチポチと、僕が俊速でここまでスマホに打ちこむと、幽霊店主は困惑げな顔をして、奥の棚から細長い木の箱を持ってきた。


「忘れてたけど。その剣には、こんな付属品があったよ」


 へっへっへっ。

 ふっひっひっ。

 レプリカの剣を化けさせちゃったもんねぇ。くふふふふ……。

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