押し売りされました
休憩ができるのか。それはまあ、ありがたいかな。四階は何が起こるかわからないし。
「休憩はさせてよ」
「お一人さま三十分五百円となっております」
たっけッ! 外の宿屋はパーティー全員でその値段なんだけど。
まあ、しょうがない。ダンジョン内だもんな。休めるだけで幸運と思わないと。
「じゃあ、あとで全員で休ませて。ところで、お店っていうのは何屋なの?」
「雑貨屋です。武器防具、消耗アイテム、各種とりそろえてますよ」
「ふうん。んじゃまず、武器を見せてよ」
「はい。どうぞ」
お品書きを見る。
商品の名前のよこに在庫数が記されている。一点物が多い。
「在庫数に変動があるの?」
「城内で仕入れたものを置いてますので、品ぞろえは、そのつど異なります」
「なるほど。ところで商品のよこにドクロのマークが描いてあるのはなんで?」
すべての商品にドクロマークがついてるのだ。
幽霊店主はあたりまえの顔して、さらっと言った。
「ああ、それは呪いつきの意味です。ここの商品はさらわれてきて死んでしまった人間の持ちものをちょろまかしてですね。お出ししてるので、最初はみんな呪われてるんですよ」
「うぎゃーっ! 何ソレ! よくそんなもの商品にできるね。僕は買わないよ? 呪い怖い。呪い怖い!」
「ちょ、ちょっと待ってください。呪いは教会や呪文で解けますよ。解いてから使えば、なんの問題もありません」
「まあ、そうかもしれないけど。死んだ人の遺品ってとこが、別の意味でも呪われそうでイヤ」
「そんなことはありませんよ。不運にして亡くなった者たちは、自分の大切な武器防具を誰かの旅のお役に立ててもらいたいものなんです。それが供養になるんですよ」
「そうかなぁ?」
僕はまったく買うつもりなんて皆無だった。
でも、そのときだ。
ソレが目についてしまった。
ん? この精霊王の剣ってのは?
精霊王ですよ?
たったいま絵本で読んだ四柱の王様。
「この精霊王の剣って?」
「あっ、それ。お客さん。お目が高いですねぇ。ただ、それはレプリカなんですが」
あっ、ほんとだ。
精霊王の剣って書いてある。
「なんだ。レプリカか。じゃあいいや」
「ああっ、ちょっと待って。待って。レプリカだけど、それはスゴイんですよ。本物についてる装備魔法は使えないけど、当代の名工が本物そっくりに作りあげた逸品で、性能は本物と同じなんです」
「ということは攻撃力が……」
「うんと高い!」
「なるほど!」
なんと! 攻撃力は150だ。
150って、それもうこの世界の最強装備なんじゃ?
僕の好きなあのゲームだって、勇者の専用最終装備で、140くらいだったはずだよ?
値段を見ると、二十万円なり。
「レプリカにしては、ぼるね」
「いえいえ。この強さですよ? お買い得でしょ?」
「だって呪いつきだよ? 魔法はついてなくて呪いがついてるんだよ?」
「いらないんならいいですよ。そのうち誰か買ってくれますから。別に三百年くらい寝かしといたって、私にはまったく問題ないし」
「買うよ! 買うけどさ。まけてくれないの?」
「カアーッ! まけません。ビタ一文まけません!」
僕は押しきられた……。
呪いつき最強装備二十万円で購入なり。