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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第四部 囚われのかーくん 十章 悪夢の廃墟
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地下の牢獄



 僕らは竜兵士の先生を先頭にした幼稚園児よろしく、ピヨピヨとあとについていく。

 地下へと続く暗い階段をおりると、そこに牢屋があった。ろうかの両側に鉄格子の扉が何十もつらなっている。


「入れ」


 僕らは順番に十人ずつくらいで、牢に入れられていく。

 最後尾の僕はろうかを奥まで進んでいって、つきあたりの端っこの牢屋になげこまれた。最後だったせいで、人数が少ない。僕をふくめて、たった二人だ。


 牢獄の相方は、まだ七、八歳くらいの少年だ。すごいソバカスくんですな。服もやぶれてるし、薄汚れてて、みなしご感がヒシヒシと伝わってくる。


 ドン、ドンと押されて牢屋に入れられて、冷たい石畳の上になげだされた。

 もちろん、鉄格子の扉にはカギがかけられた。

 ケケケっと笑って、竜兵士は去っていく。


「イテテ。君、大丈夫? ケガはない?」

「ふん。このくらい、ヘッチャラさ」

「勇ましいなぁ。僕は、かーくん。君は?」

「……ナッツ」


 ナッツか。香ばしい名前だ。


「兄ちゃん。食いもん持ってない?」

「ごめん。さっき、カバンとりあげられちゃった」

「だよな。チッ。使えねぇヤツ」


 うっ。二十歳近く年下の相手に、使えないって言われた。


「ナッツはどこでさらわれたの?」

「さらわれたんじゃねぇよ。デッカいキャラバンだからさ。なんか金目のものないかなと思って忍びこんだら、いつのまにか走りだして、変なとこにつれてこられたんだよ」

「そ、そっか……」

「アイツら、魔物だよな? これから、どうなんの? おれたち、もしかして食われんの?」


 うーん。どうなるんだろう。

 でも食うためだけなら、わざわざ各地から運んでくるだろうか?

 ここにつれてこられたのには、もっと深遠なわけがあるんだと思う。


 すると、そこへ、外から足音が近づいてくる。アンドーくんたちかと思ったけど、さっきの竜兵士だ。


「ほれよ」と言って、パンを床の上にザラリとなげてよこしてくる。

 どうやら、これが僕らの今夜の食事のようだ。たぶん、ほかの牢屋にも同じものが配られたんだろう。


 ナッツがサッと走っていって、パンをかかえた。僕に一個、渡してくるんだけど、受けとったときに、すでにガチガチだと気づいた。


「か、かたい。石だよ。これ。牢屋のなかで出されるパンって、たいてい固いよね。アレってなんでかな? わびしさを表現するためかな?」

「兄ちゃん食わないんなら、オレが食う」


 サッと手を伸ばしてきて、ナッツは僕のパンを奪った。まあ、いらないからいいんだけどね。あんなの食べたら歯が折れてしまう。


 あーあ。ミャーコポシェットのなかには、非常用のチョコレートとか、お菓子も入ってたのにな。早く現実に帰って、僕の大好きなプリングルスのサワーオニオン味が食いたい。カールのチーズ味でもいい。


 すると、そのときだ。

 どこからか、猫の鳴き声が聞こえてきた。


「ニャア」


 うん? 幻聴か?

 今の声は、うちのミャーコのような?


 まわりをキョロキョロ見まわした僕は信じられないものを見た。

 鉄格子のむこうから、ミャーコの白い顔がのぞいてる。

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