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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第四部 囚われのかーくん 十章 悪夢の廃墟
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こんにちは、廃墟



 やがて、馬車は止まった。

 目的地に到着したようだ。


 もしかして、魔王城とかかなぁ?

 やだなぁ。

 まだレベル20なのに、魔王城のモンスターとなんて戦えない。


「アンドーくんたちは隠れ身で姿を消して。僕はこのまま、ついていってみる。さっきの変なトンネル、もう一回通れるかどうかもわかんないし、ほかに逃げ道があるのか調べてみないと。もしもほんとに殺されそうになったら助けてよ」

「わかった」


 小声でゴニョゴニョ話してるところへ、外から足音が近づいてくる。バサリと幌がめくられた。


「囚人ども。出てこい」


 あの二足歩行の竜みたいな兵士たちが、剣や槍をかまえて立っていた。

 ヤツらに命じられて、一人ずつ外へひっぱりだされる。泣きわめいて抵抗する人もいたけど、竜兵士は容赦なくつれだした。かるく殴っただけで一般人は気を失ってしまう。

 僕なら失神はしないだろうけど、今ここで争ってもなんのメリットもない。おとなしく外へ出る。


 馬車が停まっているのは、なんともイヤな感じの場所だった。

 空がにごって淀んでる。

 周囲を森にかこまれた廃墟だ。

 森に入る手前は断崖絶壁で、崖のむこうには雲が遥か下方にある。どうやら、ここはものすごい高所のようだ。落ちたら、ひとたまりもない。


 この場所がどこにあるのか、地図を見たいけど、竜兵士が何人もいるから、それもできない。

 どこなんだろう?

 近くに人間の街があれば逃げだすこともできるだろうけど。


「おとなしくついてこい。抵抗すると殺すからな」


 竜兵士はキイキイと耳ざわりな声で命令する。

 捕らわれた人たちは一列になって、廃墟へむかっていった。

 廃墟の入口で、一人ずつ武器や持ちものをとりあげられた。もちろん、僕もだ。

 ううっ。僕の旅人の帽子。銀の胸あて。破魔の剣。鋼鉄の靴。

 何よりも、ミャーコポシェット!

 あのなかにはフェニックスの灰が山ほど入ってるのに。所持金も三十万円はあった。


 でも、僕は気づいた。

 ゴドバがいない。

 どうやらヤツは勇者(僕)が弱いことに安心して、どっか別の場所へ行ってしまったようだ。


 ということは、ここにいるのは、この竜兵士たちだけかな?

 隊長か何かはいるかもしれないけど、ゴドバがいないのなら、案外、勝機はあるぞ?



 *



 持ちものを全部とりあげられてしまった。

 ミャーコポシェット……あれがないと旅をするのに困るじゃないか。

 ほんの十五メートル歩けば金貨何枚も拾うんだよ? ふつうのポッケじゃ、あっというまにパンパンになってしまう! 四次元ポケット必須!


 しかし、泣いても笑っても今の僕には、いかんともしがたい。

 竜兵士に剣のさきっちょで背中をゴリゴリされて、トボトボと歩いていった。


 うーん。廃墟だなぁ。

 四階建てかな?

 古い時代のなんかの名残だ。まあ、お城か砦なんだろうな。

 レンガ造りの茶色い建物は上部の壁がくずれてる。

 迫力……。

 お、オバケは住みついてないよね?


 僕らは全員、ゾロゾロと廃墟のなかへ入っていく。入るとすぐに広いホールになっていた。昔は立派な建物だったんだろうけど、今はクモの巣が飾りになっている。


 僕は最後尾なんだけど、見ると、アンドーくんやぽよちゃんたちが、まだなかに入ってないのに、竜兵士たちは玄関の巨大な両扉を閉めようとしていた。

 まあ、竜兵士にはアンドーくんたちの姿、見えてないしね。見えてても、ただでは入れてくれないだろうけど。ボコるか捕虜にするかだ。


 僕はあわてた。

 とっさに叫んだ。


「す、すみません! あの、トイレはどっちですかっ?」

「はぁ? なに言ってるんだ、おまえ」

「だから、トイレですよ。どこにあるか知っときたいんですけど。僕、緊張すると、お腹ゆるくなるタイプなんですよね!」

「バカなこと言ってないで、さっさと歩け!」


 僕はゴツンと頭を竜の手でこづかれる。さらにはモンスターに、緊張に弱い下痢ピー男だと思われた。

 い、いいんだもんね。

 モンスターになんと思われたって、恥ずかしくなんかないんだもんね……。


 僕が時間かせぎしたおかげで、アンドーくんや、ぽよちゃんや、たまりんも廃墟のなかへ入ることができた。


 そして、みんなが入ったあと、玄関ホールの扉は閉ざされた。重く固い鉄の扉だ。

 ガチャリとカギのかけられる音が響きわたる。

 これでもう、玄関からは出られない……。

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