表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
九章 サンディアナを守れ!
125/377

トーマスの話



 大勢のかけてくる足音が迫る。

 や、ヤバイぃー!


 そのときだ。

 窓の外にアンドーくんの整った顔がのぞいた。口に人差し指あてて「しいッ、しいッ」と静かにするように仕草で示してくる。


 アレだ。これは、アレを使ったという意味だ。


 僕は急いで、トーマスをタックルでベッドに寝かせる。トーマスが僕と同じくらい小柄でよかった。


 その瞬間にドアがあいた。さっきの二足歩行の竜が五、六体入ってきた。

 ドカドカと室内を歩きまわるけど、ひらいたままの窓から外をのぞいて首をひねる。


「誰もいないな」

「窓があいてるぞ?」

「風であいたのかもしれない」

「それはないだろう。カギがかけてあった。それに、見ろ。鉢植えが壊れないように外に出してあるぞ」

「勇者のやつがここに来たのかもしれないな。まだ近くにいるはずだ」

「ゴドバ様に報告だ!」


 来たとき同様にドタバタと去っていく。

 とりあえず、室内にいる僕やぽよちゃんにも、窓の外にいるアンドーくんにも気づいたようすがない。アンドーくんが隠れ身でパーティーメンバー全員をモンスターたちには見えなくしてくれたのだ。


「えっ? 何が? なんで、おれの実家に魔物が?」

「とにかく逃げようよ。早く!」


 あたふたしてるトーマスをせかして、窓から外へとびだした。

 急がないと、ゴードンが追ってくる!


 いや、違う。

 さっきの竜の戦士たちの言ったことがほんとなら、あれはサーカス団の団長なんかじゃない。

 豪のゴドバだ。

 魔王の四天王の一柱!


 どおりで、僕らなんかくらべものにならないほど強いはずだ。

 アイツと戦っちゃいけない。

 今はまだ、そのときじゃない。


 早く、このことを蘭さんたちに知らせないと。

 蘭さんがヤツらに捕まったら、世界中の希望がこの世から消えてしまう!

 どんなことがあっても、蘭さんだけは守らなくちゃ。

 なんたって、勇者だから……。



 *



 ともかく、ギルド前広場まで無事に戻ってくることができた。


「トーマスはここで、王都やほかの街から援軍が来るまで待ってて。なかにお母さんもいるし、街の人たちを守ってあげてください」

「わかった。シルキー城を襲ってきたようなドラゴン軍団にはかなわないけど、今の街のなかをウロついてるモンスターなら、おれにも倒せそうだ」

「ギルドにはほかにも戦士がいるから、その人たちと力をあわせて」

「ああ。助けてくれて、ありがとう。このお礼は後日、必ずするから」

「そんなことはいいんだけど、一つだけ教えてほしいんだ」

「うん。何?」


 ほんとは一分でも早く、蘭さんと合流しないといけないんだけど、トーマスからシルキー城襲撃の夜の話を聞かないと。


「ロランの両親はどうなりましたか?」

「おれは前王やお妃様のもとまでたどりつくことができなかった。でも、ボイクド国から来た兵士たちが守ってるって話を仲間から聞いた」


 うーん。それは僕らも知ってるんだよね。ワレスさんから、ちょくせつ聞いたから。

 でも、なんかまだ聞くことあったっけ。そうそう。思いだしたぞ。


「シルキー城を襲ってきたのは裏切りのユダだったって? トーマスはその姿を見たって話だけど」


 トーマスはうなずいた。

 そして真剣な顔で、とても信じられないようなことを言いはなった。


「見たよ。さっきの竜人の戦士みたいなヤツらが、ユダ様って呼んでたから、まちがいない」

「どんな男だった?」

「黒いフードつきのマントをかぶってた。顔はよく見えなかったけど、背の高い男だった。マントの下は黒金の装備で、見た感じ、まるで人間みたいだったんだが……」


 黒い……フードつきのマント?

 黒金の装備?

 背の高い、人間の男、みたいな……。


「ウソだ! そんなはずない!」

「ウソじゃない。この目でちゃんと見たんだ。フードの下は黒髪だった。巻き毛みたいだったな」


 そんな、バカな。

 そんなの——そんなの…………みたいじゃないか。


 絶対、ありえない。

 うちの猛が……。

 僕の兄ちゃんが魔王軍の四天王だなんて、信じないからねッ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ