ホワイトドラゴン戦! 1
ウツボン、テッポオ、ヒトヒト、ピラメ、ホタッテ、チビシャーク——
お魚街道だ。
魚でないのは海スライムとウミヘビくらい。
クラーケンの子どもっていうのも出てきた。子どもがいるってことは、そのうち、クラーケンも出てくるのか……。
タコツボはフジツボに間借りするタコね。フジツボのようなタコのようなヤドカリのようなモンスターだ。ちっちゃいフジツボからデッカいタコがとびだしてくるんで驚く。海のビックリ箱だね。
この魚市場を主戦力の蘭さんをぬきにして、よく戦ってきたと思う。
僕ら、がんばったよ。
「なんか道がどんどん、もぐってない?」
「もぐっとるなぁ」
「この位置、海の底なんじゃないの?」
「底かもしれへんなぁ」
やがて、最深部に到達した。
岩肌の天井にかこまれた地下に、たぷん、たぷん、とゆれる海水が満ちた広い空間があった。まんなかに小島があり、岩が橋のように小島までつながっている。
うーん。水深は深そうだ。下のほうを大きなサメのような魚影がゆっくりと泳いでいく。
ここ、落ちたら確実に溺れるよね。
気をつけなきゃ。
で、意味ありげな小島。
もちろん、そこにホワイトドラゴンはいた。真っ白なキレイな竜だ。優しそうな目をしてる。
できれば戦いたくないんだけどなぁ。
やっと蘭さんも馬車から出てきて、いったんアンドーくんと交代する。
「僕の言葉がわかりますか? ホワイトドラゴン」
蘭さんの問いかけに、ホワイトドラゴンが答えた。
「ええ。わかりますよ」
おおっ! 通じた。人間語。
今度こそ、するっとウロコを渡してくれないかなぁ? するっとね。さらっとね。つるっとでもいい。
「僕の友人が魔王軍のドラゴンの竜毒にやられ、死にかけています。治癒するためには、あなたのウロコが必要だと聞きました。どうか、あなたのウロコを一枚だけ我々にわけてくださいませんか?」
こ……今度はいけるかな?
フェニックスみたいに変な事情もなさそうだし。
すると、ホワイトドラゴンはうなずいた。
「いいですよ。そういうことなら、私のウロコをさしあげましょう」
えっ? ほんとに? ラッキー。
戦わなくてすむんだ?
「ただし、あなたがたの勇気を私に示しなさい。あなたがたの友人を救いたいという気持ちが本物だと、私に認めさせてごらんなさい」
そう言って、ホワイトドラゴンは背中の翼をひろげた。
ああ……やっぱり、そうなるのねぇ。
*
僕ら、フェニックス戦のあと、ボスと戦ってないな。大丈夫かな。仮にもドラゴンだ。できれば手かげんしてほしいとこだけど。
ホワイトドラゴンはたぶん、神竜なんだろう。フェニックスと同じ匂いがする。“善”の気配のする神聖な生き物だ。
「では、全力で行きます」
「どうぞ」
蘭さんは断りを入れてから、いつもの「みんな、がんばろ〜」を言った。
何度かくりかえそうとするので、僕は止めた。
「ちょっと待って。せっかくだから、ぽよちゃんの聞き耳を使ってみようよ」
「そうですね」
「ぽよちゃん。お願い」
「キュイ〜」
そう言えば、僕のつまみ食いはどうなんだろうか?
もしかして文字通り、モンスターの肉を食わなきゃいけないのか?
もしそうなら、ここへ来るまでにお魚街道で試してみればよかった。
クラーケン(イカ)、ホタッテ(ホタテ貝)、ピラメ(ヒラメ)、チビシャーク(フカヒレ)、ウツボン(ウツボ)——海鮮丼じゃないか! 美味そう!
ハッ! 戦闘中。戦闘中。
妄想に走ってしまった。
ぽよちゃんのお耳ピクピク〜
「キュイキュイ」
「ホワイトドラゴンのHPは……4200、か。まあボスだから、これくらいはしょうがないかな。フェニックスはたぶん一万くらいはあったよね。MPはそんなに多くない。弱点は闇属性。うーん。僕らに闇属性の特技なんてないよね? 攻撃パターンは、通常攻撃(聖属性)と聖なる光(聖属性全体攻撃魔法)。あと、魔法バリアを張るね。まれに反射攻撃だって」
力はそれほど強くない。攻撃力80って、僕らと大差ない。
もしかしたら一番やっかいなのは、まれにあるっていう反射攻撃かもしれない。ぽよちゃんのアルテマハイテンションアタックや、クマりんのテディーキング変身からのボディープレス、あばれるなどで反射されると、逆にこっちが一撃死してしまう。
「ロラン。今回は、ぽよちゃんとクマりんは出さないほうがいいかも。ホワイトドラゴンは回復魔法は使わないから、じっくりコツコツけずっていったほうが、反射攻撃にやられなくて安全かも」
「そうですね。じゃあ、僕らの攻撃力もあんまりあげないほうがいいのかな」
「そうだね」
僕はぽよちゃんにお願いした。
「ぽよちゃんは今回は馬車に入っててね。もしも誰かのピンチで交代したときは、『巻きで行こう』で補助してね」
「キュイ!」
選手交代。
ぽよちゃんに代わって、アンドーくん。
作戦終了。行くぞ!