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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
八章 キャラバン夜営地の森
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一夜あけて



 逆襲というより、もともと、それがヤツらの計画だったんだろうと思う。

 ヤツらはこうやってサーカスのふりをして入りこみ、いくつもの街や村を襲撃してきたのだ。


 翌朝——

 そんなこととは知らない僕らは、昨夜の活躍を思いだしたながら浮かれていた。


「やっぱり、ロランがいないと火力が不足するね。僕がもっとガツンと攻められるようになればいいんだけど」

「でも、スゴイですよ。僕らが寝てるうちに事件を解決してしまうんですから」

「解決と言っても、さらわれてた子どもたちをつれだしただけで、キャラバンの魔物たちを退治したわけじゃないからね。根本的な解決になってないよ。まだまだ勝てる相手じゃない感じがしたんだ。このまま、よそに行ってくれるといいんだけど」


 そんな話をしながら、僕らは朝食をすました。今日はトーマスのお見舞いに行く予定だ。


「わは残ります。トーマスさんのことは、よう知らんし」

「じゃあ、アンドーさん。わたしをギルドに案内してください。わたしも登録してみたいので」

「わかぁました」


 いいなぁ。アンドーくん。スズランちゃんといっしょか。

 あっ、かーくん。トーマスにはお世話になったよね? 女の子とデートとか羨ましがっちゃダメだぞ?


 なので、トーマスの実家には、僕と蘭さんと三村くん、それにぽよちゃんで行くことになった。ぽよちゃんはいつも僕といっしょ。クマりんと、たまりんはお留守番だ。


「じゃあ、行ってくるね。スズラン」

「はい。お兄さま」


 ひと足さきに僕らは街路へと出ていった。


「それにしても、子どもはもっと遠くの街でもさらわれたはずなんだよなぁ。馬車のなかには、昨日、この街で行方不明になった子しかいなかったけど。みんな、どこへつれていかれたんだろう?」

「そうですね。心配です」

「コビットの女の子も助けられたからよかったんだけど……」


 コビットたちをどうやって村へ帰すべきか。彼らだけで、あのモンスターだらけの山道を歩かせるのは気がひける。せめてコビット村の近くまで送り届けてあげたいもんだ。

 とりあえず、鳥かごはペンチを買ってきて壊した。


 ギルドの近くまで来ると、裏道に入り、石畳をふんでいく。


「あっ、あれがトーマスの家だね」


 トーマス、無事かなぁ?



 *



 トーマスの実家へやってきた。

 街路から近づいていくとき、すでに暗い感じはしていた。死の匂いというか。気配というか。


「こんにちは。トーマスさんのご自宅ですか? 以前、シルキー城でお世話になった者です」


 トーマスのお母さんに迎え入れられて、僕らは家のなかに入った。広くも狭くもない室内。暖炉の上には少年のころのトーマスと家族の肖像画が飾られている。


「どうぞ。こっちです」

 トーマスにちょっと似たお母さんが寝室に案内してくれた。


 トーマスはドラゴンにやられたのか、胸がえぐれて深く三本のツメ跡がついている。顔色が死人のように土気色だ。息はあるものの、それもひどく浅い。


「竜毒にやられているのだそうです。お医者さまが言うには、竜のみさきの洞穴に住む、ホワイトドラゴンのウロコがあれば助かると……」


 むむー。それは行かねばなりますまい。

 かーくん、行っちゃうよ? ホワイトドラゴンなんか、ちょちょいと倒し……倒せるかなぁ。

 なまじっか、シルキー城でのワレスさんの戦いぶりを見てるからな。あれこそまさに戦神の戦い。

 僕はまだまだ、あそこの域まで到達してない。そもそもレベルが半分以下だ。ワレスさん、レベル47って言ってたもんな。


 でも、われらが勇者蘭さんは恐れげもなく言った。

「行きましょう。竜の岬へ」

「だよね」

「そやなぁ」


 僕らはトーマスのお母さんに竜の岬の場所を聞いた。


「ここから北へ行くと海につきあたります。北西の方角に岬があり、そこの突端に洞穴があります。洞穴の奥深くには、ホワイトドラゴンが住んでいるのです」

「わかりました。行ってみます」


 ああ、いよいよドラゴン退治かぁ。

 緊張するなぁ。

 まだレベル20だけど、大丈夫かなぁ?

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