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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
八章 キャラバン夜営地の森
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あれがウワサのピエロ



「ああ、もう。全滅するかと思ったよ。ヤバかった」

「やっぱりモンスターは油断すうといけんね」

「フェニックスの灰も山ほど貰っといて、ほんとラッキーだった」

「キュイ〜」


 倒れたときのショックのせいか、ぽよちゃんが起きてきた。通常攻撃で敵モンスターをワンパンしてくれる勇ましい仲間が戦闘可能になった。これでもう安心だ。


「たまりん、ありがとねぇ。たまりんのおかげで全滅回避できたよ。やっぱり、もしものときに頼れるねぇ」


 ゆら〜りと、たまりんもなんだか嬉しそう。

 だいぶ見なれてきたせいか、感情の変化が少しわかってきたような気がする。人魂語も解するかーくん。


 迷路の森の最奥部に、光が見えてきた。夜営のたき火のようだ。ちらちらと星のようにまたたいている。


 アンドーくんが声を押しころす。


「ここからは、わの忍び足で行かや。モンスターに出会わんですむけん」

「そうなんだ。隠れ身も使ええけど、長時間はムリだけん。キャラバンが見えてからにすうか」

「わかった」


 ところで、アンドーくんの出雲弁、全国の皆さんにどれだけ通じてるんだろうか? 僕はわかるけどね。あらためて、ちょっと心配になる。


 僕らは忍び足効果で足音を消して、明かりに近づいていった。

 思ったとおり、たき火だ。

 たき火を手前にして、三台の馬車がその奥に並んでいる。


 たき火のまわりに人影はなかった。

 みんな寝てしまってるんだろうか?

 不用心だな。

 森のモンスターや獣が近づいてくるかもしれないのに。それに、火事になるとか考えてもみないのか?

 ほんとの人間のキャラバンなら、絶対に見張りを立てている。それがいないことが、彼らが魔物の集団なんだと暗に匂わせているようだった。


 アンドーくんの目が、「隠れ身にすうよ?」と告げている。

 僕はうなずいた。

 僕らの姿はこれで一時的に周囲から見えなくなるようだ。


 馬車のなかを一台ずつ、のぞきこんでいく。最初の馬車にはモンスターたちがいた。芸を仕込まれた調教されたモンスターだと言うけど、ほんとかなぁ?


 さらわれた人間の子どもや、コビット族っぽい姿は見あたらない。


 二台めには……おっと、怖い。怖い。ウワサの座長だと、ひとめでわかる男が寝ている。大きないびきをかいているその顔を見て、僕はギョッとした。


 まちがいない!

 コイツら、魔物だ。

 座長のゴードンは眠っているせいか人間の化身が解けかけている。

 頭に大きなツノがあり、皮膚が青い。

 見た感じ、二本ヅノの青鬼そのものだ。


 僕らは息を呑んで目くばせをかわすと、次の馬車のほうへ歩いていった。

 が、その前には誰かが座っている。


 ヤバイぞ。ピエロだ!



 *



 ピエロは道化師の衣装のまま、顔もまだ化粧をしてる。

 こんな夜中なのに、なんでそんなカッコしてるんだ?

 まあ、魔物の思考法なんてわかんないんだけどさ。


 妙に黄昏たそがれてる感じのピエロ。

 うーん。ジャマだなぁ。

 そこにいられると、馬車のなかが見れない。


 でも、ここでピエロと戦闘になるのは得策じゃない。物音を聞きつけて、さっきのゴードンがやってくる。ゴードンはものすごい強い魔物だ。とても僕らの勝てる相手じゃないと、もう見ただけでわかった。力量の違いをヒシヒシと肌で感じたね。そのくらいには、僕も強くなったってことだ。


 てことは、ここはコッソリと忍びこんで、子どもとコビットちゃんを救って逃げださないといけないんだ。


「……わがおとりになぁわ」と、アンドーくんがささやいた。

「わなら、途中で隠れ身で姿消すことができぃけん」

「う、うん……」


 でも、そうなると、その間、僕らは姿が丸見えに……。

 怖いんですけど。

 とは言え、ほかに方法がないか。


 僕は不承不承、うなずいた。

 アンドーくんが少し離れた場所まで移動していった。そこで隠れ身をといたんだろう。とつぜん、たき火の光のなかにシルエットが浮きあがる。


「誰だ?」


 ピエロが気づいて歩いていった。

 い、今のうちだ。


 僕はひっそりと、こっそりと馬車に近づいて、なかをのぞいた。子どもがいる。きっちり五人だ。ロープでしばられてる。みんなビクビクして寝られないでいた。泣いてる子もいる。


「しいッ」と僕は口に人差し指をあてると、子どもたちのロープを切っていった。破魔の剣でロープ、切りにくいなぁ。子どもをケガさせたら大変だし。と言って、アンドーくん倒したときに得たポイズンダガーでは、毒状態になってしまう危険がある。


 変に気をつかって、もたついてしまった。ようやく全員のロープを切って、さあ次はコビットの女の子だと思ったとき、舌打ちをつきながら馬車の外に足音が近づいてきた。


 ドッキーン!

 ぴ……ピエロが帰ってきたのか?

 どうしょうッ?

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