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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
一章 異世界転移しちゃった
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あの男、登場!



「あっ、かーくんさん……」

「助けてェー。蘭さん」

「僕の名前は、らんらんです」

「今そこ? 今この状態で、そこなのッ?」


 泣き叫ぶ僕の目の前まで、巨大なイモムシの口が……口が……食われるのも嫌だけど、気持ち悪いのもイヤッ!


 と、そのときだ。


 ヒュヒュヒュンと、どこかから風を切る音が響き、いきなり、キャタッピの頭をゴッツンと何かが殴打していった。ブーメランだ。

 キャタッピは「ギャンッ!」と鳴いて、地面に倒れふす。目をまわした。

 ついでに、戻ってきたブーメランが僕のまわりの糸をプチプチとちぎってくれた。


「た、助かった……」


 勝利の音楽が鳴りわたり、バトルは終了した。いちおう勝ったようだ。経験値10と5円を獲得とテロップが流れる。

 5円……あいかわらず、やっすいな。これなら得意技で拾える小銭と大差ない。命がけで5円って、僕の命は5円の価値か?


 あっ、それどころじゃないぞ。

 あのブーメランの持ちぬしは?


 僕がキョロキョロあたりを見まわすと、その人物はやってきた。

 この世界がいろんなゲームのパロディなことは、すでにわかっていた。それにしても、その男の服装はかなりヤバイくらい、猫を奪っていきそうな名前のゲーム主人公のカッコに激似だった。

 しかも、見なれた顔パート2だ。


「……三村くん?」


 それは兄や蘭さんと共通の僕らの大阪の友人だ。見ためはチンピラっぽいけど、根は人情家。


「ん? おれか? おれは通りすがりの旅の商人や。自分、危なかったな。そない軽装で外ほっつき歩いたら、あかんで」


 うん。それは、もちろん、おっしゃるとおりなんだよ。僕だって、ウロつきたくてウロついてるわけじゃない。


「えーと、とにかく、ありがとう」

「困ったときはおたがいさまや。自分ら、シルキー城まで行くんか?」

「何そのファンシーな名前のお城」


 すると、蘭さんが説明してくれた。

「これから僕らが行く城ですよ」

「あっ、そうなんだ。ちなみに、さっきまでいた街は?」

「ミルキー城とその城下町です」


 ますます、ファンシー。


「シルキー城かいな。ほなら、目的地いっしょやな。同行しょうや」

「うん。まあ、いいけど。僕は、かーくん」

「僕は、らんらん」


 そして、三村くんは言った。

「おれ、シャケや。よろしゅうな!」


 シャケ!

 それでいいのか、ネーミング……。



 *


 シャケ……僕がその名前をつけられたら、一生、親を恨むけど、三村くんは平気な顔だ。じゃっかんのドヤ顔ですらある。

 まあ、三村くん、現実世界でも意味合い的には“シャケ”って名前つけられてるもんな。


 かわいちょう……。

 シャケ、かわいちょう。


 という僕の心の声が聞こえたかどうかはわからないが、くるりと三村くんがふりかえる。


「かーくん。金、どないするんや? いらんのかいな?」

「えっ? お金はいるよ」

「なら、とりに行きぃや」

「えっ?」


 三村くんが指さすのは、クルクル渦巻き状に目をまわしたキャタッピだ。

 うっ、これを、どうしろと?


「まだ、五円、回収してないやろ?」

「あっ、うん。そうだった」

「とりに行きぃや」


 そう言って、三村くんはキャタッピの口を示す。

 えっ? だからその口をどうしろと?

 ま、まさか、そのなかへ入れって言ってないよね?


「えっと……」

「早よせな、キャタッピ起きてまうで?」


 だからって、口のなかに入っていけない……。


「ほら。早よ、早よ」

「い、いや。今回は僕、いいよ。助けてもらったし、この戦闘の報酬は三村くんのものだと思うな」

「ええんか? ほな、貰うで?」

「うん!」


 むしろ貰ってくれ!


「ほんまか。ありがとな」


 シャケ三村くんはキャタッピの口のなかへと旅立っていった……。

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