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第5話 お出かけ

 未来から夏海ちゃんがやってきてから今日で約1ヶ月が経過していた。

 少し前まではパパと呼ばれると少し恥ずかしさを感じていた俺だったが、今では慣れてきたおかげか何とも思わなくなっている。


「ねえ、和人君。今度の土曜日、夏海ちゃんと一緒に近くにある猫カフェに行かない?」


 最近うちに入り浸り過ぎてすっかり俺の部屋にいても違和感の無くなってきた恵美は、そんな事を提案してきた。


「夏海、動物大好きだから行きたいな」


「……急にどうしたんだ?」


「いや、この間夏海ちゃんと話してたら猫が見たいって言ってたから」


 突然の恵美からの言葉に驚く俺だったが、どうやら夏海ちゃんの願いを叶えたいから提案してくれたらしい。


「なるほど、そういう事か。夏海ちゃんも行きたがってるみたいだし、行く事にしようか」


「やったー、パパ大好き」


 こうして俺と恵美、夏海ちゃんの3人で猫カフェへ行く事が決定した。

 恵美が帰った後、夏海ちゃんにはリビングへ行ってもらい部屋で課題をやっていると突然通知音とともにスマホが振動する。

 どうやらチャットアプリに誰かからのメッセージが届いたらしい。


「あっ、西条先輩からだ」


 一旦手を止めてスマホの画面を確認するとメッセージの差出人は西条先輩からだった。

 夏海ちゃんの事を話してからは西条先輩も俺の家へ来る様になったり、こうしてメッセージを送ってくるような事が増えたのだ。


「えっと、今度の土曜日夏海ちゃんと3人でどこかに遊びに行かないか? か、ちょうど恵美の猫カフェと被っちゃってるから無理だな。悪いけど断るか」


 ごめんなさい、その日は別の予定が入っているのでまた今度お願いします、俺はそう返信した。

 すると1分くらいしてすぐにメッセージが返ってくる。


「どこかへ家族で遊びに行くのか? 西条先輩、結構細かく聞いてくるな」


 まあそんなところですよと返信を送っておく。

 俺の返信に納得したのかスタンプが送られてきた後は西条先輩からメッセージが来る事は無かった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 土曜日になった今日、俺達3人は電車で猫カフェのあるショッピングモールへ向かっている。

 電車の中はそこそこ混雑しているため俺と恵美は左右から夏海ちゃんの手を繋いではぐれないようにしているのだ。


「夏海ちゃん楽しそうだね」


 ハイテンションな様子の夏海ちゃんを見た恵美はそう声をかけた。


「うん、夏海猫ちゃん大好きなの」


「そっか、なら楽しみに決まってるよな」


 そう言いながら俺は塞がっていないもう片方の手で夏海ちゃんの頭を撫でる。

 その様子を見ていた恵美は微笑ましいものを見たような表情で口を開く。


「和人君、なんかもう立派にパパやってるね」


「それ西条先輩にも同じ事を言われたよ」


「……そう言えば美菜さんも夏海ちゃんと仲良いんだよね。普段はどんな感じなの?」


 やや危機感を感じているような表情をした恵美はそう聞いてきた。


「別に恵美とあんまり変わらないよ。時々俺の家にやってきては夏海ちゃんと遊んだり勉強を教えてたり、時々3人で遊びに行ってるくらいだし」


「えっ、3人で遊びにも行ってるの!? ……私の方がリードしてたと思ったけど美菜さんも中々侮れないね。幼馴染だからって油断してたら和人を取られちゃうかも。でも夏海ちゃんの仕草とかは私に似てるから、私と和人君の子供だと思うんだけどな」


 恵美は突然ぶつぶつと何かをつぶやき始め、途中からは小声すぎて全く聞こえなかったが何かを警戒しているような様子だ。


「恵美お姉ちゃん、ちょっと怖い……」


 そんな恵美の様子を隣で見ていた夏海ちゃんはその迫力に恐怖を感じたのか怖がっている。


「あっ、夏海ちゃんごめんね」


 そんな夏海ちゃんの様子に気付いた恵美は慌てて謝罪をした。

 そらからしばらくして落ち着いた夏海ちゃんと再び和やかに会話をしているうちに目的の駅へと到着したため俺達は電車を降りて、ショッピングモールへ向かって歩き始める。

 そして到着したわけだが、ショッピングモール内は休日という事もありたくさんの人で溢れかえっていた。


「やっぱり人が多いな。迷子になっちゃいけないから夏海ちゃんは俺達の手を離しちゃダメだぞ」


「うん、パパと恵美お姉ちゃんの手を絶対離さないから」


 電車の中と同様に俺と恵美は左右から夏海ちゃんの手を繋いでいる。


「ねえ、今の私達って他人から見たらどう見えるかな……ひょっとして夫婦に見えたりしない?」


「おいおい、どうしたんだよ急に!?」


 突然の恵美からの発言に驚いた俺は衝撃のあまり声をあげてしまった。


「和人がパパで私がママ、夏海ちゃんが子供ならそう見えるんじゃ無いかと思ってさ」


「いやいや、夫婦に見えたとしても高校生くらいにしか見えない俺達に小学生くらいの子供がいるのはおかしく無いか」


「あっ、夫婦に見えることは否定しないんだ」


 まるでいたずらが成功したような表情をしている恵美からそう言われて恥ずかしくなった俺は顔が真っ赤になる。

 そう言いつつ恵美も顔を真っ赤にしており、俺達はしばらく黙り込む。


「あれ? パパと恵美お姉ちゃん、顔が真っ赤になってるよ」


 結局、夏海ちゃんからそう言われるまで俺達は顔を真っ赤にしたまま2人黙り込んでいた。

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