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第4話 ショッピング

 土曜日の朝目を覚ますとベッドの脇には既に起きていたらしい夏海ちゃんが立っていた。


「パパおはよう」


「おはよう、夏海ちゃん。早いな」


「うん、今日のお買い物が楽しみすぎて早く目が覚めたの」


 夏海ちゃんのそんな言葉を聞きながら俺はゆっくりとベッドから起き上がる。

 ちなみに夏海ちゃんは最初凛花の部屋で寝てもらう予定だったが、どうしてもパパと一緒が良いとの事だったので結局は俺と寝る事になったのだ。

 こんな小さな女の子と寝る事に家族から反対されるのではないかと思っていたが、パパと娘が一緒に寝るのは別に普通の事だと言われたため特に問題は無かった。

 最初は少し戸惑っていた夏海ちゃんだったが、数日一緒に過ごした事ですっかりうちに馴染んでいる。

 この世界に戸籍が無いため学校などへは通えないが、家で母さんに勉強を教えてもらったり買い物に着いて行ったりして楽しく過ごしているらしい。

 周りには未来から来た娘だとは言えないし、信じて貰えない可能性が高いため親戚の子供を預かる事になったと説明しているようだ。


「じゃあご飯を食べて買い物に行く準備をしよう」


「うん」


 俺は夏海ちゃんと2人で1階にあるダイニングへ降りて用意されていた朝食を食べ始める。

 母さんと父さんは俺達よりも早く起きていたらしく、それぞれ洗い物をしたり新聞を読んだりしていた。

 2人でご飯を食べていると眠たそうな顔をした凛花が2階の部屋から降りてくる。


「おはよう、凛花」


「凛花お姉ちゃん、おはよう」


「おはよう、みんな」


 そして凛花は席に座ると俺達と一緒に朝食を食べ始めた。

 夏海ちゃんはすっかり凛花と仲良くなっており、今ではお姉ちゃんと呼んでいるほどだ。

 当然俺の妹である凛花にも夏海ちゃんは似ているため、他人から見れば歳の離れた姉妹に見えるのではないだろうか。

 そんな事を考えながら朝食を食べ終えた俺は外出の準備をしていく。


「じゃあ出発しよう」


 全員の準備が終わったところで俺達は車に乗り込みショッピングモールへと出発する。


「まずは夏海ちゃんの服から見に行かない?」


「おばあちゃんありがとう」


 母さんからの提案に夏海ちゃんは大喜びな様子であり、特に反対意見も無かったため服屋へ行く事が決定した。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 まず1番に子供用の服屋に寄った俺達だったが、母さんと凛花は夏海ちゃんに次々と色々な服を着せていく。

 2人はめちゃくちゃノリノリであり、まるで着せ替え人形のようになっている。

 俺はそんな様子を父さんと一緒に遠目から眺めていた。


「母さんと凛花、楽しそうだな」


「そうだな、でも一体いくらお金が掛かるんだろうか……」


 父さんは3人の楽しそうな様子を見てほっこりしつつも、たくさん買いそうな雰囲気を感じ取って財布の中身の心配をしているようだ。

 しばらくして3人とも満足したのか、服選びは終了となった。

 ちなみに会計の時に金額を聞いて父さんの顔が死んでいたのはここだけの内緒だ。

 それから俺達は色々な店を回りながら夏海ちゃん用のアイテムを買い周り、気付けば昼になっていた。

 昼はフードコートで好きなものを食べる方式になったため、俺達はそれぞれ好きなものを買いに行く。

 俺は夏海ちゃんがうどんを食べたがったので一緒に店へと向かい始める。


「あれ、ひょっとして水瀬ではないか?」


「あっ、西条先輩。お疲れ様です」


 突然後ろから声をかけられたので振り向くと、そこには西条先輩がいた。

 西条先輩も買い物に来たのだろうか、手には複数の紙袋が握られている。


「隣にいる女の子は……まさかこの間言っていた未来から来た水瀬の娘ちゃんか!?」


「そうです。ほら夏海ちゃん、この背の高いお姉さんに自己紹介をして」


「パパの娘の水瀬夏海です」


 驚いた表情をした西条先輩に夏海ちゃんは自己紹介をした。

 ちなみに西条先輩は身長が174cmあり、この間の健康診断で175cmだった俺とほとんど変わらないため、女性としてはかなり長身な部類だ。


「……確かに水瀬に結構似てるな」


「それ、恵美からも似たような事を言われましたよ」


 そう話すと西条先輩はまたもや驚いたような表情となる。


「なに、河上も夏海ちゃんと会ってたのか」


「はい、あいつ最近俺の家に用もないのに頻繁に来るようになって、夏海ちゃんともよく遊んでるんですよ」


 中学校を卒業してからは全然うちに来なくなっていた恵美だったが、ここ数日は入り浸っていると言ってもいいくらい家に来ていたのだ。


「そうなのか……くそ、私が水瀬の家に行く勇気がでない間に先を越されたか。やはりもっと私も積極的にならなければならないようだな。このままでは水瀬を河上に取られてしまう」


 途中からは声が小さすぎて聞こえなかったが、何かを悔しがったような表情をしていた。


「あっ、そうだ。夏海ちゃん、これをあげよう」


 そう言うと西条先輩はポケットから飴を取り出して夏海ちゃんに手渡す。


「やったー、ありがとう」


「食べるのはご飯の後でな」


 飴を食べようとした夏海ちゃんを静止した姿を西条先輩に見られて笑われてしまった。


「ふふっ、もうすっかりパパらしくなってるな」


「そうですかね」


 2人でそう話していると夏海ちゃんがお腹減ったと言いたげな表情になっている事に気付く。


「じゃあそろそろ夏海ちゃんもお腹減ってるみたいなので行きますね」


「おっと、引き止めてしまって悪かったな。じゃあな2人とも」


 西条先輩と別れた俺達はうどん屋へ向かって歩き始める。

 すると俺の隣を歩いていた夏海ちゃんは不思議そうな顔をして口を開く。


「今日初めてあったはずなのに、背の高いお姉ちゃんからも懐かしい感じがした……なんでだろう?」


「恵美の時も同じ事を言ってたよな。2人に何か共通点とかあるのかな」


 うどんを注文して待っている間に俺達は2人でその理由を考えるが、結局結論は出なかった。

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