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第12話 プール

 面倒な補習が終わりついに高校生活2回目の夏休みがやってきた。

 テストは恵美と西条先輩から勉強を教えてもらえたおかげで苦手だった理系科目と英語もなんとか点数を伸ばすことが出来て、全体の順位も前回より上がったため結果は上々だ。


「夏海、プールに行きたいな」


 夏休みは初日からだらだら過ごそうと思っていた俺だったが、家族と夕食を食べている時に夏海ちゃんがそう言ったため、明日はプールへ行くことが決定した。

 父さんは仕事、母さんは用事、凛花は部活があるためプールへ行くのは今のところ2人だ。

 そんな事を考えているとポケットに入れていたスマホが通知音とともに振動する。


「あっ、西条先輩からだ」


 メッセージを確認すると、明日夏海ちゃんと3人で遊ばないかという内容だった。


「そうだ、2人だと寂しいからせっかくだし西条先輩をプールに誘ってみるか」


 西条先輩に、もし良ければ明日一緒にプールに行きませんかと送ってみる。

 すると1分も経たないうちに西条先輩からすぐに”行く”と一言返信が返ってきた。

 プールへは俺と夏海ちゃん、西条先輩の3人で行く事になりそうだ。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 翌日、俺達はプールの前で待ち合わせていた西条先輩と合流した。


「西条先輩、おはようございます」


「美菜お姉ちゃん、おはよう」


「2人とも、おはよう」


 西条先輩はかなり嬉しそうな表情をしており、俺達に会える事を楽しみに待っていたに違いない。


「では早速着替えてからプールへ行こうか」


「行きましょう。夏海ちゃんの着替えを見ていてあげてくださいね」


「それは任せてくれ」


 そんな会話をしながらプールの入り口にある券売機でチケットを購入すると、俺達は別れて更衣室へと入る。

 そして水着に着替え終わった俺は夏海ちゃんと西条先輩と合流して3人でシャワーを浴び、しっかりと準備運動をしてからプールへと入っていく。

 ちなみに西条先輩は黒い三角ビキニを身につけているのだが、スタイルの良さも相まってめちゃくちゃ似合っていた。


「やっぱりプールは冷たくて気持ちいいな」


「ですね、うちの高校はプールが無いせいで水泳の授業も無いから久々に入った気がします」


 子供用の浮き輪を使って楽しそう浮かんでいる夏海ちゃんを見ながらそんな事を話している。


「パパ見て見て、夏海流されてるよ」


「ここは流れるプールだからな、あんまり俺達から離れるなよ」


「うん」


 水の流れはゆっくりであり、プール自体もそんなに広くは無いのではぐれる事は無いだろうが一応注意をしておいた。

 しばらくの間雑談しながら3人で固まって流されていた俺達だったが、とある事が頭に浮かんできたため西条先輩に質問する。


「……そう言えば西条先輩、受験の方は大丈夫なんですか?」


 夏は受験の天王山という言葉があるように、受験生である3年生にとっては重要な時期であるため気になってしまったのだ。


「実は先日校内選考に合格して、学習館大学の指定校推薦入試を受けられる事が決まったから多分大丈夫だと思ってる」


「凄いじゃないですか。ならもう受かったも同然ですね」


 指定校推薦入試は医学部以外は基本的に不合格にならないと言われているため、西条先輩が学習館大学に合格するのはほぼ間違いないだろう。

 西条先輩は嬉しそうな、得意げに見えるような表情で語る。


「だから今日も君達とプールに来たんだよ。そうじゃなかったら遊ぶ約束なんかせずに今頃家で必死に勉強してたかもな」


 そんな話をしていると夏海ちゃんが突然指差して声をあげる。


「あっ、夏海あれやりたい」


 夏海ちゃんが指差す方向に顔を向けると、そこには巨大なウォータースライダーがあった。


「ウォータースライダーか。確か120cm身長制限があるみたいだが夏海ちゃんは足りるのか?」


「とりあえず行ってみましょうよ」


 俺達はプールから一旦上がるとウォータースライダーに向かって歩き始める。


「あっ、ギリギリ足りるみたいですね。良かったな、夏海ちゃん」


「やったー」


 ウォータースライダーへ上がる階段の近くにあった看板で身長を測るとギリギリ足りていたため無事に滑る事ができそうだ。

 それから俺達はウォータースライダーの列に並んで順番を待ち始める。

 まず最初に西条先輩が滑って次に夏海ちゃん、最後に俺という順番で滑る予定だ。


「じゃあ、行ってくる」


 いよいよ俺達の順番がやってきたため、西条先輩から係員の指示でウォータースライダーで勢いよく滑り始めた。

 西条先輩はスピードを出す為に寝転んで滑っており、実際にかなりのスピードが出ているようだ。


「じゃあ次は夏海の番だね。パパ行ってくるよ」


 そう言い残すと夏海ちゃんは普通に座った状態でゆっくりと滑り始めた。


「よし、最後は俺だな」


 夏海ちゃんが下に到着したのを確認した俺は係員の指示で滑り始める。

 俺も西条先輩と同じくスピードを出す為に寝転んだのだが、この選択は失敗だったと言える。


「あっ、やばい。足をつった!?」


 なんとウォータースライダーを滑っている最中に俺は盛大に右足をつってしまったのだ。

 さらに運の悪い事にウォータースライダーが着水した瞬間に左足もつってしまった俺はパニックになってしまい見事に溺れてしまう。


「パパ!?」


「水瀬、大丈夫か!?」


 結局俺は係員のお兄さんに助けられた後、西条先輩から人命救助のもと人前でファーストキスを奪われた挙句、人工呼吸をされるという羞恥プレイをされるまで目覚めなかったらしい。

 西条先輩は高校の保険委員であり、実習も受けていて人工呼吸に関する知識は豊富だったおかげで俺は助かった。

 ちなみに人工呼吸が終わった後に西条先輩がちょっと名残惜しそうな顔をしていたと夏海ちゃんから後で教えてもらったが、それは聞かなかった事にするつもりだ。

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― 新着の感想 ―
人工呼吸の後名残惜しそうな顔をしていたそうだが何が名残惜しかったのかな(。´・ω・)?
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