賢者さん戦闘する
「やっと道が出てきたぁ…」
工房を出た後、この樹海から抜けようと歩いてたのだが、いくら歩こうがまともな道に出ることなく、1日かけてやっと街道らしき場所に出てこれた。
引きこもってた俺は体力がガタ落ちしてたから超絶キツかった。
食事もほとんど取らず賢者の石を造る事に没頭してたのだ。そりゃ体力なんて落ちて当然だし普通の人間なら死んでしまう。なんで生きてんのか不思議だがそもそも歳を取ることを感じない時点でおかしいので気にしないでおく。
街道を歩いていると展開してた探知魔法が引っかかる。遠視の魔法をかけ、探知した場所を見ると馬車の付近に冒険者らしき3人、対立する様に6体の魔獣が睨み合っていた。冒険者側が傷ついててどう見ても劣勢なので助けに行きながら支援魔法をかけて向かう。
目視で確認する距離まで移動すると、魔獣たちはこちらに様子だったので魔法で牽制する。
「誰だ貴様!?」
「あんたたちが危険そうに見てたので助けに来た!敵ではないから安心しろ!」
「助かる!」
冒険者のリーダーらしき人物が突然現れた俺を警戒したので敵意はないことを説明すると、こちらの警戒を解いて魔物に目を向ける。
先程の牽制が思ったよりも効いたのか、体の一部が欠損しているオークがほとんどだったのを見て思ったよりもダメージを多く与えられたことに内心驚く。
耐久が高いオーク、そのうち一体は色つきのオークだった。色つきの魔獣は稀に発生し、高い知能を持ち通常の魔獣と比べ全体的に強さを誇る。
それに俺は支援魔法の方が得意だったので牽制程度ではオーク相手にこうはいかなかった。
相手に深手を負わせたのはおそらく賢者の石の効果だと思う。ただ魔法を使えるならいいと考えてたが、こんなサブ効果があるなんて便利な物だ。苦労しただけのことはある。
オークとの戦闘の前に冒険者たちに支援魔法をかけ、回復もしておく。
「さっきまでボロボロだったのに一瞬で回復した。しかも体が軽い」
「あんたたちに支援魔法をかけた。これで互角に戦えるだろう。回復魔法はついでにな」
「すまない、助かる。お前ら気合い入れろよ!」
冒険者のリーダーはそう言うと、オークの注意を引きつけるように剣戟を繰り広げる。女剣士がオークたちに攻撃と回避を繰り広げながら後方で魔法使いの子が遠距離で攻撃魔法を当てていく。
攻撃に重きを置いたパーティだが連携が上手く安定している。
劣勢になってたのは色つきのオークに決定打がなかったのでジリ貧になったのだと推測した。
俺も支援しつつ攻撃してるので新たな魔獣が来ない限り大丈夫だ。程なくして色つきのオークを最後に討伐を完了した。周囲を警戒し安全の確認が出来ると全員一息ついた。御者と話してた冒険者のリーダーがこちらへ近づきお礼を言った。
「協力いただき感謝する。あのままでは俺たちは全滅していた。護衛依頼の途中なんだがこの先の街まで送り届けたら完了なんだ。その時に都合さえ良ければお礼をさせていただきたい」
「ありがたく受け取るよ。ついでに馬車に乗せてもらってもいいか?1日歩きづめで疲れてるんだ」
「もちろん問題ない。戦闘が起きた場合、悪いが共闘してもらえるとありがたい」
共闘の件を了承して馬車に乗り込み目的地の街へ進み、着くまでの間に冒険者たちに情報収集する。
冒険者たちはそれぞれリーダーがアッシュ、女剣士がミア、魔法使いがショウだ。
彼らはBランクパーティでオーク程度なら討伐できるが、色つきのオークが出たことと奇襲されたのでかなりの不利な状況だったとのこと。
確かにオークはCランクの魔獣だが色つきは最低でもランクがひとつ跳ね上がる。
今回は奇襲が出来るほどの知能、統率力と耐久の高さから見て推定Aランクはいくだろう。魔獣を討伐するには同ランクの冒険者パーティで可能が目安なのでよく粘った方だ。"魔獣のランク=同ランクの冒険者パーティで討伐可能"が必ずこの法則が通じる訳ではなく、Sランク以上の魔獣は天変地異を起こすのもいるのでその場合は総出で討伐をするらしい
。魔獣ではなく魔族なので定義からは外れるとは思うが仮に魔王をランク付けするならSSSに位置づけされるだろうな。
Sランク以上の魔獣なんて現れることはそうそうないだろうから心配しなくていいし、相性もあるが一応俺1人でSランクの魔獣なら倒せるから問題はない。
魔獣に襲われることなく街へ着くとアッシュたちが冒険者ギルドへ行き依頼完了の報告する間、俺はギルド前で少々待って、合流する。
そびえ立つ城壁と堅牢な造りをしている街並みだったので何故なのか聞くとここは魔の樹海から近く、スタンピードも良く起きるかららしい。魔の樹海とは俺が工房があった場所を指していてCランク以上の魔獣が良く出るから、防衛がしやすい造りにしたようで納得した。
スタンピードは災害であり、滅んだ国もある。魔獣の数によってはSランク級になることもあって軽視は出来ない。Cランク以上の魔獣がうじゃうじゃいる魔の樹海から発生するならば尚更危険だ。
だがこの街には優秀な冒険者がいるのと、治める領主が善良な人物で私兵を駆り出し自身も前線で指揮するなど非常に好感が持てる人のようだ。
アッシュたちと酒場に入るとお礼として依頼の報酬の1部を渡してきたが、思ったより多い。色つきのオークの討伐報酬含まれているようでいらないと言ったのだが、俺がいなければ今ここにいないから受け取って欲しいと強引に渡そうとしてきた。受け取らないのは簡単だが彼らの好意を無下に出来ないので受け取る。
その後もお礼だと言って依頼達成の祝賀会に参加させてもらい、別れた後アッシュに紹介してもらった宿の部屋の寝床に横になると今までの疲れからか意識が落ちるように眠った。