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賢者さん 隠居する

 

「みんな!僕が全身全霊の力を込めて魔王ゴウンズにとどめをさす!それまで持ちこたえてくれ!」


「「「応!!!」」」


 魔王討伐を命じられた俺たち勇者パーティの勇者キリル、戦士グオリオ、聖女ミスト、そして俺、賢者ハクの4人は今魔王と対面している。

 魔王の勢いは凄まじくいつ死んでもおかしくはなかったが、諦めずに戦い追い詰めていた。


「脆弱な者共よ、魔王である我がここまでやられたのは初めてである。だが野望を前に倒されてなるものか!我が力に倒れるがいい!」


 魔王が最後の力を収束する。同時に体が輝き始めとてつもなくでかい魔法陣が魔王の前に現れ、何度目か分からない冷や汗をかく。


「おいおい、こりゃあやばいんじゃねぇか?キリルの奴も動けない状況であれが放たれたら俺たち塵も残らねぇぞ!どうするんだハク?」


 グオリオは俺に吼えるが、返答を返す時間も惜しい。これまでの魔王の攻撃を防ぐのでギリギリだったのにそれ以上の攻撃が来るのは明白だ。思考をフル回転させても思いつくのは成功すれば儲けものの博打しかない。

 1つだけとんでもない奇策があるが失敗すれば終わりだ。けどこの状況であればどの道やるしかない。


「成功するか分からないが1つだけある!ミストは俺に力を貸してくれ!グオリオは俺たちの前に!」


「最後の最後にこれかよ!失敗したら殺すぞ!」


「そうなったら俺たち全員死ぬから安心しろ。ミストは俺に魔力を渡して欲しい」


「分かりましたわ」


 グオリオは悪態をつきつつ大剣を変形させた大盾を突き出す。その間にミストの魔力を貰い俺の魔力と

 混ぜ合わせて魔法を構築するが、あとちょっとの所で完成するが先に魔王が完成してしまった。


「貴様ら全員消えうせるがいい!【ヘルタルタロス】!」


「まだかハク!」


「うるさい!もう完成する!」


 魔王の魔法陣から黒色の炎が吹き出て俺たちを飲み込もうとする。俺たちを飲み込むかのように焼き焦がそうとするがこちらも間に合い魔法を展開する。


「全魔力解放!ハクの名において命ずる。【聖魔多重障壁結界】発動!生命力を転化!【マジックディスペル】!」


 魔王の魔法と俺の魔法が激突すると同時に、消滅。魔王が魔法の消滅に一瞬隙を見せてしまう。


「これで終わりだ魔王!【ライトスウォード】!」


「ぐぅぅぅおおおおおお!」


 キリルが聖剣で魔王を切り裂く。魔王の断末魔と共に体が崩れていくのが見えた。


「ぐぅぅ、我が消えようともまたこの世へ君臨してみせる。次こそ我が野望を果たして見せよう。くくく」


 そう言い残し、魔王は消滅した。辺りを見渡し何事もないことを確認すると、俺たちは脱力した。


「終わったんだよな?死ぬかと思ったぁ」


「今回は本当にダメかと思ったぜ。命がいくつあっても足りやしねぇぜ」


「これで魔王はいなくなり世界の平和を取り戻せましたわ。私たちが生きているのも神の御加護、祝福に感謝を」


「さあみんな帰ろう!僕たちを待ってる人が沢山いる!」


 こうして俺たち勇者パーティは魔王討伐を果たし、世界に平和が訪れたのでした。

 めでたしめでたし。


「という訳には行かなかったんだよなあこれが」


 王都に戻った俺たちは魔王討伐の報告した後、国中を挙げての宴を三日三晩楽しんだ。勇者キリルは国王の姫と結婚し国王に、戦士グオリオは王国騎士団長に、聖女ミストは教会に所属してたので教皇になった。

 俺自身も宮廷魔導師師長に就任へと話は進んでいた。

 しかし、魔王との戦いでかなりの無茶をした結果、魔力が回復しないという事態が起きたのだ。

 元々魔力というのは自然に回復もしくは魔力回復薬を使用すればいいのだが俺の場合生命力も魔力へと変化させたのが原因となり、一切の魔法を使えなくなってしまった。

 魔法が使えない宮廷魔導師長など外聞が悪いという事もあり俺の方から隠居する形で辞退した。当時の国王は魔王討伐の功労者なので席だけでもいて欲しいと止められたが、それならば宮廷魔導師にいた俺の弟子を推薦した。

 俺よりも魔法の才能があったこともあり、実力を伸ばしていたので気兼ねなく弟子を宮廷魔導師長へ就任させ、俺は隠居することにした。

 そして現在、元勇者パーティであった賢者ハクこと俺は自身の魔術工房で隠居生活をしていた。

 と言うよりかはぐうたらと過ごしていた。


「やることがなくて暇だ。暇すぎて死んでしまいそうだ」


 初めは魔力の回復をさせるため色々と実験、研究をしていた。

 だが何も変わらなかったので、少し方法を変えることにした。

 東方の国には"気"という独自の魔力とは似て非なるものがあるらしく、それを応用すればいいのではないかと書を読み漁って試したが、どうやら俺にはそちらの才能がないみたいで"気"を感じることが出来なかったので断念した。

 次に魔力を貯めるための魔道具を造る事をしてみた。

 幸いそちらは心得があったので造ってみたが、貯まりはするものの貯蔵量が少なく、また使用すると壊れてしまい使い捨てで使い勝手が悪い。

 ある程度強い魔物の魔石を使う事もあり、こちらも断念。

 最後に賢者の石を手に入れる。これについては文献が少なく、王家の書物庫にあった本に記されてた。

 本によると賢者の石とはなんでも変換できる万能な道具であるらしく、賢者とは名ばかりの一般人化の俺が魔法を使える唯一の手段だった。

 これならばと思い、早速造ろうと取り掛かったがこの賢者の石、入手難易度がかなり高いものばかりで材料が高純度の魔石と金、水銀に魔力の含んだ血液が必要だった。

 魔石は旅の道中に入手して血液は俺のでも使えたので問題はなかった。問題は金と水銀だった。

 水銀自体は簡単に入手出来たのだが膨大な量が必要、なおかつ人体には猛毒ということもあって持ち運びに苦労した。

 金はもっと大変だった。高純度というが、具体的には99%以上の含有量を含んだ金を拳大サイズの物が必要という無理難題な代物を用意しろという話だった。

 金鉱山を見つけ採掘し精錬したが、大量にあった金が拳大サイズ3つ分にしかならなかった。

 苦労しながらもなんとか物が揃ったので造る作業に移ったが、これも大変な作業だ。

 金を溶かし水銀と混ぜ合わせ、砕いた魔石を入れた後、血液を入れて完成。

 と簡単に見えて、入れるタイミングを一瞬でも間違うと爆発した。地形が変わるくらいには爆発した。お陰で今いる魔術工房は3つ目である。

 その後もなんやかんや会って血と汗と涙の結晶である賢者の石が完成したのが数ヶ月前、不具合や使用感の確認を終えたのがつい一週間前だった。


 賢者の石を時間をかけ、正常に機能したのを確認出来たから休暇と称してたのだが、今までが忙しかったのを加え、歳を取ることも感じなくなったので余計に暇を持て余していた。


 今の俺は燃え尽き症候群ってやつだ。


「そうだ、外に出よう」


 ずっとこもってたから今外の世界はどうなってるのか見てこなかった。このまま引きこもるよりか外に出て気分転換するという意味でもいいわけだし。

  そうと決まればさっさと外出を準備をするか。善は急げという言葉があるわけだし。


 工房には物が沢山あるが、そこは収納魔法でしまい外に出る。万が一の事も考え、入口を塞ぎ周りに同化させておこう。

 ここは森の中だが、昼だからか日差しがささる。

 行先は王都。久しぶりにあいつらの顔も見たいが世界は今どうなってるのかも見てみたいからのんびり行くとしよう。なんせ時間はたっぷりあるのだから。



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