フフフフ、お前は仲間になるのだ!まちこに忍び寄るくぃーんの魔の手!
20xx年2月14日 午前7時、肱川嵐発生の日。
「えええええ!嘘ぉぉ!絵井君が!嘘ぉぉ!」
好きな相手にチョコレートを渡そうと、荷物を手に持ちウキウキと歩いていた、少々お洒落をしたまるあの声が朝の道に響く。
「本当だって!私さぁ、皆のポストに入れてたら足んなくて……、そういや微居と絵井のチョコ忘れてた。だからそこのコンビニに入ったら、店員さんが話してたよ」
その途中で出会ったまるいが、仕入れた情報を友に伝える。
「絵井君『新型、ニャコロウィルス』に感染しちゃって、2週間接触禁止で外出れないんだってさ!じゃ!私まだ配んなくちゃならないから行くね!」
えええ!そんなぁぁ……。朝の道で立ち尽くすまるあ。彼女の本命は絵井なのだ。うう……、もう駄目じゃん私……。泣きそうになるのを堪えつつ、家に帰ろうと引き返すと……。
「おねえちゃん!」
「あ!まちこ!こんな早くからどこに、あ!そうか」
チョコレートの包をきゅっと胸に抱き、お気に入りのポシェットを下げてる妹。クルクルのお兄ちゃんに渡しに行こうとしている様子。
……、そうか、うん。私はだめになっちゃったけど、妹ぐらいは上手く行って欲しいな……。
「持ってくの?じゃぁいっしょに行こう」
そう言うと手を差し出すまるあ。柔らかい小さな手がスルリと絡まって来た。
「いいの?おねえちゃんは?」
「うん、いいの。おねえちゃんだから……」
きっと独りで歩いてたら涙が出て来たと思う、まるあ。せめて妹の恋の行く末ぐらいは、上手く行ってほしいなと思う。
二人仲良く歩く。家まで行くの?と妹に聞けば……、
「ううん、かわら」
……、はい?河原?あ!そか。河川敷で野球かサッカーのジュニアチーム練習してるわね、
妹の返事にそう思いつく。しばらく歩く姉妹。やがて……、土手の上にたどり着いた。
「あ!そうだ!あ……でも。うん、頼んじゃお!どうせプリントとかアイツが持ってくし!」
道の上でちょっとここで待っててね、とまるあはまちこにそう言うと、ザザザザ……、身体を斜にし草の斜面を降りて行く。その先には……。
ウホ!ゴリラの様に身を屈め、ゴロゴロ、様々な大岩小岩が転がる河原を歩きつつ手頃な石を吟味している微居の姿が……。
近づく姉の姿を唖然として見るまちこ。
……、ふぇぇ!ふえぇぇん!おねえちゃんはクルクルのおにいちゃんに……、そんなぁぁ……うっ、ヒック!
おーい!微居!と紙袋を手に持ち、妹の気持ちなど知らずに、駆け寄るまるあ。
手でゴシゴシ目をこするまちこ。ポロポロ涙が零れる。
――、その様子を空からじっと見ている者が居た。
……、あのちびっ子……まだ熟してぬが……『果物型変身装置』の気配があるぞ……確かにあるぞ!何たる僥倖!
「おじょうちゃん、どうしたの?」
ふわりと降り立ち、ヒクヒクとえづくまちこに優しく声をかけた。
「おばちゃんだれ?」
「……、おねえさん!」
地球外生物『リアジュボックメツ』がアイテムを使い変身した美魔女『だあくフルーツくぃーん★プラム★スター』の悪の触手がまちこを狙う!