前夜の話
20xx年2月13日 午後8時、肱川嵐発生の前日。
ぽっちぁぁぁん。まるあは、妹まちことお風呂に入っていた。
「ねぇねぇおねえちゃんは、だれにあげるの?」
湯船に浸かりながらまちこが聞く。
「んー、ヒ・ミ・ツ、まちこは?」
シャワシャワと、泡立てたボディソープで水弾く素肌を洗いながら聞き返す、まるあ。
「んとね。くるくるのおにいちゃん!いつもね、ズボンのした、クルクルってしてるの」
はい?何そのクルクル……、一瞬、まるあの脳裏にクラスメートの微居の姿が浮かんだが、まさか違うだろうと打ち消した。
……、兄弟のお下がり着てる小学生なら、裾をクルクルもあり得るな。うん、まさか違う。そういや前に、朝出会うお兄ちゃん、カッコイイとか話してたな、きっと小学生だろう……
そう考えをまとめながら、シャワーで泡を洗い流した。
「ふうん、上手く行くと良いね」
とぷん、湯船に浸かりつつそう話すと、うん!えへへ、あたたまり頬が薔薇色に染まる可愛い妹。まるあは今日買ったチョコレート、枕元に置いて寝ると良いんだって。と、小さな恋のおまじないを教えた。
―――「えと、まくらのところ」
もこもこフリース素材のウサギ耳パジャマのまちこ。素直に言われた場所に、ラッピングされたマンゴスチンハート型の紙箱に入ったチョコレートを置く。それと昼間もらった『さくらんぼ』が入った、お気に入りのポーチ。
「えへへ、クルクルのおにいちゃん。いつもかわらで、おおきないし、もちあげてる、カッコイイ……」
姉が知れば、そいつはやめとけと言う相手を思い浮かべつつ、まちこは布団に潜り混んだ。ギュッと抱っこするお誕生日プレゼントの『フルプリ、マンゴスチン』のマンゴちゃん人形と、クリスマスプレゼントのドリアちゃん人形。
すぅすぅ……、あっという間に夢の中……。
そしてまちこは夢を見た。
「わあ!まんごちゃんだぁ!」
大好きなヒロインが眼の前にいる。
「手に握ってるの……、見せてくれるかな?」
フルーツプリンセス、マンゴ☆スチンの彼女がまちこにそう聞く。て?そう言われて気がついた。ギュッと握っていたのは、昼間もらった小さな玉二つ並ぶ『さくらんぼ』
「これ?」
「……、うん、わぁ!これ!そうだよ。まだ赤ちゃんだけど……、きっとそう!『果物型変身装置』だよ!すっごぉぉい!触っていい?」
「ふぉぉぉ!これ、つかったら、まんごちゃんみたいになれるの?うん、いいよ」
目をキラキラさせてそう聞くまちこ。
目をキラキラさせて玉を触るまんご。
胸をドキドキさせて見ているまちこ。
胸をドキドキさせてさわさわまんご。
「うん!なれるよ!素敵なパワーいっぱい集めてさくらんぼの玉大きくしたら……、きっとフルプリになれるよ!頑張ってね!」
フルーツプリンセス、マンゴ☆スチン、まんごは左右二つの玉ををすりすりさわさわ、触りながらまちこにそう教えた。
「わあぁ!うん!がんばりゅ!このたま、おおきくするんだ」
そう!ふたつの玉にステキパワーいっぱいあつめるんだ、まんごー!そう教えたフルプリマンゴ☆スチン。
そんな夢見る妹の隣の部屋では……
「うーん、ああん、どうしよう。明日、渡しに行こうかな、それとも……どうしよう!」
姉まるあが、大きなハート型の箱を前に悶々と悩んでいた。
気のせいかもしれませんが……
まちこ
まんご
並べて書くとドキドキ感半端なかったのです!(・・?