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ありがとう。という言葉(ミク視点)

「あのね、ミク。私、身体が動くの。自分の意思で動かせるのよ!」



本当に、どうなさったのだろう。1日中熱を出して寝込んだり、目覚めるとすぐに涙を流されたり。

身体が動く!などという現実離れしたことを言ったり。

状況が上手く掴めなくて、はぁ…としか言えない。



とりあえず、今日は学校を休んでいただこう。このような興奮状態で登校するのは危険だ。


******


お昼過ぎに、わざわざお嬢様が私の部屋にいらっしゃった。



「あの、ミク。さっき私が言ったことは忘れてほしいの。私、ちょっと寝ぼけてて…。」

「わかりました。お嬢様。」



何か文句を言いに来たのか、と思ったがそうではないらしい。

今日のお嬢様は変だ。

まるで別人。



今まで、お嬢様は私を名前で呼んだことがなかった。

いつも、“不倫の子”や“下品なあなた”などの蔑称で呼ぶ。


でも、今日はずっと私のことをミク、と呼ぶ。



何かが変だ。



「それと、今日の私の朝の様子は誰にも言わないでほしいの。お願いね。」

「わかりました。誰にも言いません。」



やはり、変だ。



お嬢様はいつも私に“命令”してきた。“お願い”なんて、されたことがない。



「あと、ありがとう。ずっと看病してくれて。」

「…お嬢様の侍女として、当たり前のことをしただけです。」



ありがとう、と言ってお嬢様は帰っていった。



お嬢様にお礼なんて、されたことがない。いや、私が感謝されたことなど生まれてから1度も…。



涙が出た。ありがとう、の声が優しかった。嬉しかった。


ワガママな令嬢からの言葉は、私がずっと欲しかったものだった。









お嬢様は、身体が自由に動く、と言っていた。自分の意思で動く、と。

もし、今までの言動が、お嬢様の望むものでは無かったのだとしたら。

本来のお嬢様はあんなにお優しい性格なのだとしたら。



バカらしい。

そんなこと、あるはずがない。聞いたことがない。

お嬢様が、保身のためについた嘘かもしれない。






でも、もし嘘じゃなかったら。








「嘘か嘘じゃないか、とかどうでもいいよな…」

誰もいない部屋でポツリとつぶやく。

今まで通り、侍女として、お嬢様に尽くすのが私の仕事。



「さて、仕事に戻りますか。」

そう言って、私は、お嬢様の部屋の掃除の準備を始めた。

とりあえずミク視点の話はこれで終わりです。

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