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一話

 

 昔、こんな都市伝説のような噂がありました


 南白狐神社っていうところがあってね

 境内に入ってすぐ右にある灯籠に、月下の雪のように青白い少女が座っていて

 彼女は狐の神様なんだって。

 それでね、死んだ人をあの世から呼び出すことが出来るらしいよ。


 これはそんな噂を知ってしまったある不幸な少年の物語


 谷崎 悠真。水沢高校二年四組。この間返ってきた模試の偏差値五十五。顔面偏差値はクラスで中の中。身長 170㎝等々

どこを見ても、普通、平凡、並そんな言葉がお似合いな僕だけどそんな僕にも一つだけ自慢できることがある。それは僕の彼女である。隅川 真冬。彼女はとても美しい。流れるように美しい髪。きらきらと星空のように輝く目。雪のように白い絹のような肌。彼女は幻のように、いまにも消えてしまいそうに美しい。さらに、彼女は外見だけでなく性格でさえも完璧なのだ。

僕はそんな彼女を愛している。

彼女がいない世界なら僕は消えてしまいたい。

そんな世界なら粉々に滅茶苦茶に割ってしまいたいとさえ思っている。

でも、こんな事を言ったらまた真冬に怒られてしまうかな。



 今日、二月十四日。僕は真冬とまぁ、いわゆるデートというものをするために駅前広場で待ち合わせている。約束の時間の十分前僕は約束の場所に到着した。

「お待たせ。真冬。どれくらい待った?」

「そんなに待ってないよ。んー。大体一二三分五二秒くらいかなー。」

僕はいつものように天然記念物級に馬鹿な真冬を呆れたように見てため息をつく。

「真冬、、、。」

「何、ゆう君。どうしたの?私、何かゆう君に悪い事しちゃった?」

上目遣いで目に涙をためながらそう尋ねる真冬は何というか、とても可愛いのだが、僕のプライドはデレるなんてことは許さない。

これだけは、真冬のためにも絶対言わなければならない。

「あのな、真冬。一二三分五二秒って全然短くないからな!?

約二時間だぞ!?後、秒までは訊いてねえよ。てか、そんな長い時間待ってたら危ないし。別に心配ってわけじゃないけど。」

「ゆう君、今日もツンデレ絶好調だねー。心配してくれてるんだ。ありがとう!」

真冬がにやにや笑いながらこっちを見ている。もうこんな奴、一生心配してやらない。

 ところで、もう皆さんお分かりだと思いますが。そう、完全無欠かのように見える真冬はとんでもない馬鹿なんです。学校の成績はいつも全科目満点。もちろん順位は学年一位という化け物級の天才なのに一般常識はからっきし駄目。つまり天然記念化物みたいな少女なのである。馬鹿と天才は紙一重、この言葉は真冬のためにあるようなものだと僕は思っている。

 

そんなこんなしていると目的地が見えてきた。真冬がどうしても見たいと言う映画があるので今回は映画館に行くことになった。映画館は日曜日ということもありとても混んでいる。チケットを求める列も案の定長い。本当は人込みは苦手だが仕方ないだろう。

「真冬が見たいって言ってたのって何て名前だったっけ?」

「”君の後ろでずっと“っていう名前だよ。」

「へぇ、真冬が恋愛モノの映画を見たいって言う日が来るなんて予想だにしなかった。いつもは僕が嫌だって言ってもホラー映画ばっかりじゃないか。どういう風の吹き回しなんだ?」

「まっまぁ、私、だってJKだし?それくらい見るよー。」

「はい、次のお客様―。」

「 “君の後ろでずっと”を二枚。」

「はい。一枚二千円になります。」

「ありがとうございます。」

チケットを買って中へ入る。上映五分前だというのに空席が目立ち、ちらほらといる客も何故か男性が多い。

ここで僕は気付くべきだったのだろう、真冬の陰謀に。

しかし、愚かな僕は気付くことができなかった。



「ゆう君、大丈夫?」

目が覚めると白い天井が。なんてことはなく、恐怖のあまり気絶してしまっていた僕が目を覚ますとそこはまだエンドロールが流れる映画館だった。

「大丈夫?じゃねえ!真冬、後で覚えとけよ。」

「ぐぅ、、、。」

エンドロールが終わった。真冬を連れて外に出る。怒りを込めて僕は伝える。

「なぁ、真冬さん。ホラー映画じゃないですか。それも今までのより倍くらい怖い。どういうことですか、教えてくださいよ。」

「だって、ゆう君ホラー系って最初から分かってたら見てくれないじゃん。これで最後の一回だよ。」

膨れっ面をしながら真冬が言う。こいつ可愛さを狙ってやってるのか?

はあ、女子ってのは良いよな。可愛いってだけでたいてい大概の事は許される。許す奴の神経もどうかしていると僕は思う。甘やかし過ぎだ。

 現代社会における女尊男卑的な風潮は可愛いの魔力によって引き起こされていると僕は勝手に何の根拠も無く思っている。もう少しこの説について話してみたくはあるのだが、こんなたわいもない僕の戯言を読み手の皆様に聞かせるのは申し訳ない。売れないコメンテーターじゃあるまいし。

物語を進める事にしよう。

「だからって見たくない人にそんな卑劣な方法で見せるのはやめていただけるかな。」

今後こんな恐ろしい目に遭わされないように僕はちょっときつめに言う。すると真冬は今にも泣きそうな潤んだ目で

「ゆう君、ごめんね。人の気持ちもちゃんと考えずに勝手に騙して見たくないの見せて。本当にごめん。許してくれる?」

なんて言う。くそっ、可愛い可愛い可愛い。そういうの本当反則だ。全部僕が悪いように思えてきた。僕はしばし戦った、健闘して検討した。

「ごめん。真冬、僕も悪かった。」

僕は負けてしまった。可愛さという魔力に。



それから僕達はちょっと洒落た感じの喫茶店に入り三時間ほどいつもどおり幸せな、特に記すほどでもない平凡な会話を続けた。


そして、これからどんな事が起こるかなんて知りもしない不幸な僕らは幸せな今日の記憶を抱きながらそれぞれの帰路の途に着いた。



「ただいま。」

「あら、悠真おかえり。」

くそっ、ママ友とお茶会するとか朝言ってたからまだ帰ってないと思っていたのに。

「悠真、また真冬ちゃんとデートしてたの?若いっていいわねえ。真冬ちゃんとどこまで進んでるの?キスは?もうしたの?」

にやにやしながら母さんが聞いてくる。本当に欝陶しい。迷惑の極みである。

「ほっといてくれ、母さんには関係ないだろ。」

「はいはい、分かりましたよ。夕御飯、後十五分くらいしたら出来るからね。」

「分かった。」

そう言って僕は自分の部屋に戻った。

それにしても今日も真冬は可愛かったなあなんて考えていると自分がニヤニヤしてしまっていることに気がついてしまった。こんな事気付きたくなかった、、。真冬のせいだ。うん、そうなんだ、真冬が可愛いから駄目なんだ。と、僕は必死に僕に自己弁護的な責任転嫁をする。しばらくして約十五分ほど経ったので僕は愛しの晩御飯の元へ向かおう、としたのだがその前に

「少し夕飯を作りすぎちゃったから真冬ちゃん家に持って行ってくれない?」

と母さんに頼まれたので先にそれをすます事にした。

家を出る際、母さんにすごくからかわれた。本当に欝陶しい。



実は僕と真冬は幼馴染みで、家が近所だから五分程で真冬の家に着いた。

  ピンポーン

と鳴らしたが返事が無い。立て続けに

  ピンポーンピンポーンピンポーン

ともう一度鳴らしてみたけれど無反応。真冬の奴、親がまだ帰ってないのを良いことに疲れて寝ているのだろうか。羨ましい奴め。取り敢えずこのままなにもせずに待っていても時間の無駄なので家の鍵が開いている可能性に賭けてみる事にした。真冬はあの性格だから鍵を掛け忘れる事がよくあるのだ。ドアのレバーを引いてみると案の定

ガチャ

という音を立てて玄関の扉が開いた。こういう所本当に心配だから気を付けて欲しい。

「真冬ー、鍵開けたままだぞー。いつも気を付けろって言ってるのに。」

と言いつつ真冬の部屋の前まで移動する。

「真冬、入るぞ。」

と言って僕は扉を開けた。

血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血

血血血血血血血血血血血血血血真冬血血血血血血血血血血血血

状況が分からない。ああ、そうか真冬が僕を脅かそうとして包丁で心臓をえぐられて殺されているまねをしているのか。エイプリルフールでもないのに本当、手の掛かる奴だ。よし、今日くらいは乗ってやろうじゃないか。脈を計る真似でもしたらバレると思って焦るだろう。

ピタッ

と真冬の脈を計る



脈は、無い

当たり前だった。

分かっていた。

始めにこの状況を見た時から分かっていた。

床が抜け落ち、突然、無重力空間に放り出された様な感覚がした。

僕は現実を受け入れることができず、

「真冬!真冬!真冬!真冬!真冬!真冬!真冬!真冬。」

と叫び泣き喚いた。

と物語が続けばどんなに良かっただろうか。

誰だってそれを望むだろうし、誰よりも僕が一番その展開を望んでいただろう。


認めたくないけれど、、気付きたく無かったけれど、、。


大好きな真冬が目の前で死んでいるというのに

僕の心は意外と、

いいや分かっていた。いつもそうだった


僕の心は自分でも驚く程に平然としていた


涙一滴さえ零れる事はない


悲しみに崩れ落ちることもない                                                          


 真冬を殺した何者かには怒っている。

でも、この少年の心は悲しいという感情を理解できないのだった。しかし、少年のせいではない。彼には全く非は無い。なのに、彼は自分を責めた。


彼が悲しみを持つことができない理由


それは、たわいもない戯言、痴れ事の類と大人達には

笑い飛ばされてしまいそうな


でも、彼と真冬にとっては大切な幼き日の約束にあった


しかし、その約束もこの時はまだ、思い出せず


彼は真冬が殺されたのかもしれないという事実も忘れて

自分自身に怒り狂った。


「何で?何で?何で?何で?何で!何で!何で!何で!何で!何故なんだ!何で僕は悲しめないんだ!!いつも、いつもいつも。父さんが死んだ時だってそうだった。周りは皆、泣いていたのに僕だけ泣かなかった、泣けなかった。僕だって悲しみたかった!!今度は、真冬が死んだってのに微塵も悲しめない、泣けない!真冬のことが大好きで大好きで愛していたはずだったのに!最悪だ!僕は最低だ。」

前から思っていた。いつか犯罪者になってしまうんじゃないかって。自分が何を仕出すか分からなかった。怖かった。そんな僕も少しは成長できたと思っていたのに。

「ただいまー、真冬。」

真冬のお母さんが帰ってきた。どう説明すればいいのだろう。誤解されたらどうしよう。突然の出来事に一旦冷静になった頭に不安が渦巻く。                     続く



あとがき

 こんにちは!雨霧 雨です。読んでくださってありがとうございました。ついにJkになりました!いえーい。もう、おまえJSだろって友達に言われなくなることを期待したいです。久しぶりというか小説書くこと自体少なかったので駄作かもしれませんが許してください。続きも春休みの間に書くつもりなので次号でもよろしくお願いします。ご感想よろしくお願いします。


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