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百万回転生した勇者  作者: 柚木
首都ヨルセウス
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慣れないと死んじゃいますから

「追いつく前に言っておくが、王女の目には魔王の心臓が埋め込まれている」


「どういうことですか? 人間の目に心臓なんて……」


「それで、姫様はああなったってことか」


「まあ、やるでしょうね」


 四人共それぞれの反応を示した。

 フランは信じられないと驚き、ノノとメイサは理解し納得して、シスは沈黙を貫く。


「だから俺が魔王を抑えるから、四人で王女様を王都に連れて行ってくれ」


「タクト、フランを連れてきてよかったじゃないか。フランならその姫君にかけられた魔法を解けるかもしれないぞ」


「シスくん、僕もフランくんの力は買っているが、魔族と魔王の魔法はレベルが違うんだよ?」


 そう言われればフランは魔法を解除するのが得意だったな。

 でもメイサの言う通り魔王クラスの魔法でも解除できるのか?


「そうだよ。私にできるかわからないよ?」


「大丈夫、フランのやり方ならどれだけ魔力が強くても関係ないから」


「そうか、なら任せた」


 シスは、トクレスでフランが実際に魔法を解除するのを見ていたはずだ。

 そのシスが大丈夫だと言うのならそうなのだろう。


「いいのかい? 失敗したらフランくんが国に処刑されるかも知れないよ」


「その時は俺が匿うよ」


「お兄さん、前方に何かがいます」


「見えてる。あれが魔王ヴァルグロだ」


 前方を飛ぶ一体のドラゴン、その背に乗る一つの影。

 俺は速度を速める。

 ドラゴンの尻尾に手が届きかけ、魔王に弾かれた。


「じゃあ、後は任せたからな!」


 俺は担いでいた四人の入っている防護の魔法ごと、ドラゴンの翼に投げつける。

 直撃したそのドラゴンは悲鳴を上げそのまま地面に墜落する。


「あれでは王女が怪我でもしたらどうするつもりだ?」


「優秀な奴らがいるから平気だ」


「そうか、では始めようか【ブラックアウト】」


 その魔法と共に周囲が闇に包まれる。

 一寸先も見えない程の闇が周囲を埋めつくす。


「【ホーリーライト】」


 瞬時に反対の魔法を唱え、闇を一掃する。

 目の前から消えたヴァルグロの気配は背後にあり、俺は剣を振るうと確かな感触と共にヴァルグロの体を半分に切る。

 半分になったヴァルグロはひるむ様子も見せず、長く伸びた爪で俺の皮膚を切り裂く。


「実に硬いな。それに猛毒、麻痺、火傷を宿した爪も無意味か」


「そういう成分はすぐに分解しちまうんだよ」


「そうなると我に打つ手はもう無いな」


「降参するなら早く心臓を差し出せ。楽に倒してやるよ」


 手を挙げ、降参の意思を示したヴァルグロは、俺の提案に考える素振りを見せる。


「そうだな、それよりも魔王について教えてやろう」


 そう言って、ヴァルグロは地面に座り【ストレージ】から酒を取り出した。

 瓶ごと酒を煽り語り始める。


†


 私達はお兄さんに防護の魔法ごと投げつけられ、ドラゴンの羽に衝突した。

 ドラゴンの悲鳴と共に魔法は解け、私達四人は空に放り出されました。


「タクトくんって結構無理するね」


 メイサさんが落下する私達四人を掴み、何とか無事に地面に下りることができた。


「死ぬかと思った……」


「エルトア王女、お怪我はありませんか?」


「メイサ・ウルですね。ありがとう助かりました」


 王女様はとても綺麗な人でした。

 新雪のような真っ白な美しい女性。

 彼女がいれば、夜の闇でさえも白く染めてしまいそうなほどに美しいお姫様。

 あまりの美しさに、女の私が嫉妬さえおこがましいと思ってしまう程で、それはフランちゃんも、魔道具のシスさんさえ同じように思っているらしく、二人も王女様の美貌に見惚れています。


「そちらが、フランさん、ノノさん、シスさんですね。私はエルトア・ヨルセウスと申します」


 この見た目で物腰も柔らかく気品があるとは、もはや反則です。

 私が勝てる所は何もない。


「あれ、私達自己紹介しましたか?」


「雑談の前に魔族を倒すのを手伝ってくれないか? ノノくんもシスを持ってくれ」


「わかりました。フランちゃんは王女様の魔法を解除して」


「うん、やってみる」


 シスさんを握り武器を構える。

 王都ではシスさんのおかげでそれなりに戦うことができた。

 フランちゃんと王女様を守るくらいの戦いはできるはず。


「それじゃあ僕はあのデカいの倒すからよろしくね」


 メイサさんはそのままドラゴンの元に向かい、私の目から見ても三体の魔族がいる。

 私は呼吸を整えた。

 このくらいなら王都でも戦ったことがあるので、何とかなるはず。

 ちらりとフランちゃんを見ると、解除の準備を始めている。


「もう大丈夫だな?」


「はい。いつでも行けます」


 私は魔道具のシスさんに体をゆだねる。

 シスさんの魔力が私の魔力と混ざりお互いの思考が混ざり合い、体が軽くなっていく。

 私は一度地面を蹴ると、お兄さんの様に一気に魔族と距離を詰め、一振りすると魔族の魔石ごと体を半分にします。

 黒い霧に変わり消滅したことを確認し、残りの二体に向かう。

 昨日まで恐ろしいだけだった魔族が、シスさんのおかげで怖くない。

 岩を簡単に引き裂く爪も、鉄を噛み切れる牙も、今は恐怖を感じない。

 体を少しだけ捻り、魔族の攻撃を避け二体の魔族を切り伏せた。


「ノノも私を使い慣れてきたな」


「慣れないと死んじゃいますから」


 王都で散々使い慣れた戦い方。

 互いの魔力を合わせ、一つの生物として動く。

 問題は解除した時の疲労感ですけど、今は問題ない。

 こちらが終わったのと同時に、メイサさんの方も戦いが終わったらしくズドンと大きな地鳴りがした。


「終わったみたいだね。後はフランくんが成功するかかな」


 私達はフランちゃんの邪魔にならないように周囲の警戒に努めます。

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