随分なイメチェンですね……
「どうだ? 驚いてくれたなら作戦は成功だ」
「タクト様、ノノちゃん泣いてますけど」
フランに言われノノを見ると声を押し殺して泣いていた。
「ノノごめん、本当にごめん。そんなに怖かったとは思わなかったんだよ」
涙が止まらない様子のノノに謝るが、一向に顔を上げてくれない。
どうやらサプライズのつもりだったが大失敗だったらしい。
「なんで、なんで生きてるんですか……!」
「えー……、そこは喜んでくれてもよくないか?」
涙でグシャグシャになってしまったノノが顔を上げたと思ったらいきなりの罵倒だった。
「やっぱりこれはやりすぎでしたね……」
「実は操られてませんでした。ってやったらビックリしてくれるかと思ったんだけどな」
過激な方が面白いとかなり昔にネットで見たんだけど、場合によりけりらしい。
まさかここまで大泣きされるとは思っていなかった。
「なぜ、お前は操られていない?」
ヤギ頭の魔族が怒りに震えながら質問してくる。
ヤギのせいか本当に怒っているのかは定かじゃないけど。
「俺は勇者だからな。低俗な魔族の魔法なんか効かないんじゃないか?」
「低俗だと、ふざけるなよ人間!?」
怒りに任せた一撃を軽く躱す。
そして躱されるのは当然わかっていたらしく、その攻撃はフラン達に向けられた。
「お前よりも先にこの人間を――」
しかし魔族の攻撃は【プロテクト】によって阻まれる。
低く鈍い音を出しただけで、防御の魔法には傷一つ付いていない。
「その辺は学習済み。その二人を殺したいならまず俺を倒すことだな」
「魔法が得意のようだな、ならこれはどうだ?【ストレージ】」
収納の魔法から取り出したのは、日本の巨大な戦斧。
そしてその巨大な戦斧を取り出したはずなのに収納の魔法は消えていない。
まだ何かあるのかと身構えると、ヤギ頭は持っている戦斧を俺めがけて投げつけてきた。
俺が避けると戦斧は背後に居たハバリトスの信者がいる場所に打ち込まれる。
爆発の様な音を立て戦斧が地面にクレーターを作った。
「よそ見している余裕があるのか?」
更に戦斧が投げるが、手持ちが無くなることはない。
投げた分はすぐに収納先から補充され、次々と投げつけてくる。
大量の戦斧を投げ続け、俺との距離を縮めてくる。
「これで終わりだ、勇者!」
そして俺が間合いに入ると投げる時と同じモーションで、二本の戦斧を力の限り振り下ろす。
地面を揺らす二本の戦斧は俺を避けるように地面を切り裂いている。
そして俺はその戦斧二本を両手で押さえつける。
「今ので決められないと恥ずかしいよな」
「ならもう一度切り刻むだけだ」
わざとあざける様に言ってやると、ヤギ頭の両手はプルプルと震え始める。
おそらく本気なのだろうが、二本の戦斧は地面に刺さったまま抜けやしない。
「どうしたんだ? 早くもう一度切り刻んでみろよ」
なぜか抜けないと思っているヤギ頭はすぐに収納から新しい戦斧を取り出し俺に振り下ろす。
その戦斧を今度は両手で受け止めてやる。
「なっ……、なぜ人間がこの俺の一撃を止められる……?」
「そろそろ質問なんだけど、お前魔王の心臓がどこにあるか知ってるか?」
自慢の攻撃が防がれ狼狽えている魔族に俺は質問した。
そして俺の言葉で明らかに同様の色を見せた。
「その反応は知ってるんだろ? 教えてくれよ。ちなみに俺の仲間には嘘を見破れる仲間もいるから。そうだろノノ」
「えっ、あっ、はい。わかります……」
ぽかんと口を開けているノノは、何が起っているのかわからないまま、俺の言葉に頷いた。
「それで、お前の知っていることを全て話してくれるよな?」
ご自慢の戦斧を握りつぶして見せると魔族はヤギの鳴き声で大きく叫び、収納から複数の召喚結晶を取り出した。
「数で訴えるつもりなら無駄だ。大人しく教えてくれよ」
「それはできないな。俺が話したと知られれば俺は魔王様に殺されてしまう」
「それは今も変わらないだろ」
「あのお方はお前の想像を絶しているのだ。お前がいくら強かろうとあの人の残忍さに勝てはしない」
カタカタとヤギ頭の体が震える。
残忍さか、他の世界の魔王にもいたが、ここまで恐れられてはいなかったけどな。
俺が過去の魔王から情報を思い出そうとすると、ヤギ頭は召喚結晶を飲み込んだ。
自殺? 召喚結晶なんて飲み込んでも、体内でアイドウロンが召喚されるだけじゃないのか?
しかしヤギ頭に起こったのは、死ではなかった。
体の肥大化が始まり、皮膚の色は浅黒く、白い毛は赤く染まる。
やがて肥大化した肉体を二本の足では耐え切れなくなり、獣の様な四足に切り替わった。
「随分なイメチェンですね……」
「メェェエエェェ!!」
俺の言葉に返事をしたのかヤギの雄たけびを上げ、ヤギ頭は俺に向かって突進をしてくる。
どれくらい変化したのを確かめるべく真正面から受けて立つ。
さっきと比べ物にならない程の力ではあるが、受け止められない程ではない。
そう思った瞬間触れた個所から衝撃が追い打ちを仕掛けてきた。
掴んだ角から最初の衝突と同じくらいの力が突然生まれ、俺は後方に飛ばされてしまう。
大したダメージではないが、今のは流石に驚いた。
「メェェエエェェ!!」
立て直した瞬間を狙っていたのか、二度目の突進。
その突進は触れることなく躱す。
「【アーリー】」
言葉を失ったかと思ったが、加速の魔法を使い、速度を上げてきた。
今度は受け止めるのではなく真っ向勝負。
俺はヤギ頭を全力で殴りつける。
しかしヤギ頭に届くはずの拳は見えない何かを殴りつけ、力がそがれヤギ頭をぶち抜くことはできなかった。
「これはちょっと初めての経験だな。その攻撃は魔法か? スキルか? どうなってやがるんだ?」




