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百万回転生した勇者  作者: 柚木
魔族の潜む町
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私気持ち悪くなってきました

「何のようだ?」


「王都へ向かう途中で、数日間の滞在をしたいと思っています」


「通っていいぞ」


 流石ノノだ。

 ちゃんとした対応をしたため番兵が疑うことなく通してくれた。

 俺がキックスに入った時は結構な足止めをくらったんだよな。


 信じられないほど簡単に入ることのできた町の中はとても賑やかだった。

 行き交う人に、買い物をする人に井戸端会議をしている人もいる。

 とてもこんなところに魔族が潜伏しているとは思えない。


「宿を探さないとな。その前に換金しておきたいな」


「ならまず換金所からですかね。あそこにありますね」


 大きく換金所と書かれたところを目指し雑踏の中を進んで行く。


「大丈夫かフラン、手を掴んでてやるから離れるなよ」


「あ、ありがとうございます」


 人の波に流されそうになっているフランの手を掴み引っ張る。

 小さな手は俺の体温よりも温かい。というよりも熱かった。


「フラン大分手が熱いけど平気か? まだ具合悪いなら先に宿を取ろうか?」


「いえ、大丈夫ですので」


 心なしか顔も少し赤い気もする。

 さっき倒れたばかりだから無理をさせるわけにはいかないよな。


「お兄さん、フランちゃんは具合が悪いわけではないので平気です。なのではぐれないようにしっかりと握っていてあげてくださいね」


「ノノさん!」


 元気そうだし大丈夫みたいだ。

 人ごみを進み何とか換金所にたどり着いた。


 換金所は一言で言えばギルドの様な場所だ。

 仕事の依頼、魔石やドロップ品の買取をしてくれる。

 キックスの様な小さい町だと利用者も少ないため詰め所なんかと併設している場合が多いが、ここくらい大きな町だと流石に訪れる人が多いため別々になっている。


「うわっ……、ここも人で溢れてる……」


 入っただけで酔ってしまいそうなほどに人がいた。

 情報交換をしている連中に依頼を探している人、換金に並んでいる人も結構いる。


「私が換金してきますから、お兄さんとフランちゃんはその辺で待っててください」


「お願いします」


 魔石の入った袋を渡して俺とフランは隅でまとまっている。


「タクト様、私気持ち悪くなってきました」


「奇遇だな俺もだ」


 さっきから人の出入りは激しいのに、俺達に話しかけてくる人は一人もいない。

 酔い冷ましになるから誰か絡んできてくれてもいいのに、今日に限って一人も来ない。

 フランも可愛いからナンパ位されるかと思ったがされないみたいだ。

 どうやら俺とフランは近づいてはいけないと荒くれに共に思わせるくらいに顔色が悪いらしい。


「戻りました。お兄さん今少し変な……、ってどうしたんですか? そんな所で座り込んで」


 ノノが戻ってきたころには俺とフランは膝を抱え地面に座り込んでいた。


「お帰り……、人に、酔った……」


 完全に人に酔ってしまい気持ちが悪いし、周囲の完全に無視している感じが気持ち悪さに拍車をかけているし、正直吐きそう。

 隣にいるフランは少し前から一言も話さない。

 気絶しているのか、周りの人に見せられない顔をしているのかはわからない。


「気持ち悪いなら外で待ってればいいじゃないですか」


「舐めるなよ……、外の人ごみでも、酔う、んだぞ……」


 話をするだけで吐き気がこみあげてくる。

 ノノが今にも吐きそうな姿の俺と同じく死にかけているフランの手を掴み建物の影に移動させてくれた。


「お水です。この路地裏なら人も少ないですし大丈夫ですよね」


「ああ、ありがとう。少しマシになった」


「私も少しは症状が軽くなってきました」


 人気の無い暗い場所ってこんなに落ち着くんだな。

 キックスに帰ったらそういう場所作ろうかな。


「お兄さんこんな調子でどうやって旅をするつもりだったんですか? 換金所に入れないじゃないですか」


「意外と開いた直後と閉まる直前は人がいないんだぜ」


「何を格好つけてるんですか」


 よほどの事情が無い限り、その時間帯に来る人というのは限られているため人が少ないのだ。

 この辺も百万回の転生して学んだことだ。


「それでいくらになったんだ?」


「八万円くらいですね。オクトベアの魔石がやっぱり高かったですね」


 八万か、三人だと質素に暮らしても三日が限界か。

 モンスター討伐もしないとダメ、魔族の情報収集も必要。


「とりあえず宿に行こう。どこか知ってるか?」


「安い宿屋ってなると一か所だけ知ってます」


 アグリールは西と東で建物に差があるらしい。

 王都のある東側は豪華な建物が多く、俺達が来た西側は質素な建物が多い。

 要は金を落として行ってもらいたいため東西で質が分かれたらしい。

 もちろん俺達は西側で宿屋を探す。


「私が知ってるのはここくらいですね。一部屋三千円で食事は付いていません。素泊まり専門の宿ですね」


「じゃあ、二部屋取るか。二人は俺と一緒の部屋で寝るのは嫌だろ?」


「私はタクト様と一緒でも大丈夫です。寧ろどんとこいです!」


「そうですよ。贅沢はできませんから一部屋でいいんです。部屋を分けるなら稼ぎを増やしてからです」


 この二人は俺が寝込みを襲うとかは考えてないのか?

 襲う気はないけど、男として見られていないんだろうか……。


 俺が落ち込んでいる間にノノは部屋を取ってきてくれた。


「あの店主、お兄さんみたいでしたよ。そっぽを向いたまま何日滞在か聞いただけで、鍵もフロントにおいてあるだけでしたし」


「安い所なんてそんなもんだろ。それに俺はそういう方が楽でいい」


「私もタクト様に同意です。なるべく少ない会話で済ませたいです」


 ノノは意気投合したフランと握手を交わす俺達を見て呆れながら部屋に向かった。

 安い割に部屋はしっかりしていた。

 ベッドも四つシャワールームとトイレも完備されているし文句は何もない。


「魔族を探すって言ってましたけど、どうするつもりなんですか?」


「それなんだけど、一人で聞き込みを頼めないか? 俺とフランは少し休んだら森に行ってモンスターを倒してくるから」


「これから二人で森ですか?」


「魔法の使い方を教えないと危ないからな。俺がちゃんと教えてやる」


「お願いします!」


 意気込みはものすごく、両手で握り拳を作って前のめりになっている。

 ここまでやる気になってもらえると教える側としてもやる気が出てくる。


「それで聞くのは最近住みついている怪しい人を探せばいいですか?」


「それで問題ないよ。それとこれの持ち主を探してくれないか?」


 オクトベアに殺された二人の形見。

 遺体が二体だったってことは他にも家族がいるだろうし、死んだことを伝えてあげるのが見つけた俺の役目だ。


 それから何点か確認しながら少し休憩することにした。

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