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いつもの”日常” 8

メルの店を後にするところに“メルから新しい“転移くん”と転移受信機を俺とアネムの分を貰ってからメルの店を後にした。”と文を追加しました。


 「少し待っててね」


 母さんそう言って、台所で料理を作っている間に、仏壇の前へ行く。

 アネムは、


 「手伝いましょうか?」


 と、母さんに提案。


 「あら、じゃぁお願いしようかしら?」


 嬉しそうに了承して、アネムは母さんと一緒に料理の最中だ。

 本当、人が良いと言うかなんと言うか⋯⋯あぁ、女神か。


 俺の家族は、母さん。後、親戚を少々知っている程度だ。父さんは幼い頃、交通事故で亡くなった。母さんと共に泣いていたことを良く覚えている。父さんは質実剛健な人であり、良く遊んでくれたことを今でも覚えている。「“賢”くあれ、“悟”って導いていける人になれ」っと俺の名前を名ずけてくれたのも父さんだと母さんが教えてくれた。


 「ただいま、父さん」


 線香を一つ灯して備え、鐘を鳴らして手を合わせる。

 少しして、仏壇から離れて俺の部屋へ移動する。

 部屋へ入り、ベットへダイブする。


 母さんはアネムが女神であること、俺が“異世界へ行っていた”ことも知っている。

 異世界転移をしていくにつれ、様子が変わる俺に母さんは、話がありますっと俺を呼び出して、深刻そうな顔をして事情を聞いてきた。

 さすがにこれ以上隠すのは無理だと思った俺は、包み隠さずに全てを話して、証拠である“魔術”を見せたりした。


 最初は疑わしい感じに聞いていた母さんも、“魔術”を見て驚いた。

 そして次に母さんは⋯⋯泣いた。


 「⋯⋯お願い、お父さんみたいにいなくならないで⋯⋯」


 そう言って。

 正直、信じてもらえるとは思ってなかった。

 もしかしたら魔術を見て悟ったのかもしれない。


 その母さんの言葉を聞いた俺も泣いた。

 異世界で生き残るのに必死だった。

 信頼していた人の裏切り。腐った性根の奴の策略。

 信用できるのは俺だけなんだと思って、俺の心もかなり擦れていた。

 だが、その言葉で俺は一人じゃないことを知った。

 こんな俺を心配してくれる人もいることを知った。

 こんな思ってくれている人を泣かしてしまったことへの情けなさに悔しくて泣いた。

 

 その時に俺は、人としての暖かさを取り戻した。


 最初、アネムを紹介した時にどうなるかヒヤヒヤした。

 俺が了承してアネムの世界へ転移したが、母さんから見れば、息子を連れ去った最初の誘拐犯だ。

 もちろん、アネムのおかげで今があり、その後の転移も順調に行ったことも伝えた。

 ずっと、そうっとしか答えなかった母さんの横顔は真顔で⋯⋯凄く戸惑った。


 アネムは俺を転移して連れ去ったことへの謝罪をして、それ以外のことは言わなかった。

 もっと他に言えることもあったはずだ。


 自分の身の危険のこと。

 上からの指示で逆らえなかったことなど。


 だが、アネムはただただ、謝って頭を下げ続けた。


 母さんは静かに口を開いた。


 「許せないと思っても、言葉では許すと言おうとしました。」


 目を閉じる。


 「息子が凄く庇ってましたから⋯⋯」


 そして、微笑んで、アネムに言う。


 「たけど⋯⋯本当に⋯⋯心から許そうと思います⋯⋯だから、顔を上げて」


 ハンカチをアネムに手渡した。 


 「そんなに泣いたら綺麗な顔が台無しよ?」


 あぁ、俺は母さんの息子で良かったと心から思った。

 絶対に帰る場所があること。

 絶対に“諦めることがない”決意ができた。

 このお陰で俺は“神を消滅させる”ことができた。


 魔力の強さとは、鍛えればある程度伸びる“魔力総量”、魔力を操る“魔力操作”。

 そして、その人に宿る“魂”⋯⋯“意思の強さ”が密接に関わっている。

 その部分を母さんは絶対的なものに昇華してくれたのだ。

 アネムの世界へ三回目の転移をした時、アネムを救うことを出来たこと。

 そして、この地球にやって来る“神々”に対処出来るのも、強い母さんが居てくれたお陰だ。


 ベットの上から机に飾ってある唯一、“三人”で写ってある家族写真が目に入る。


 (父さん、母さんのことは絶対に悲しませない。だから⋯⋯)


 安心して見守って欲しいと願いながら、意識が遠くなっていった。




ー◆ー




 体を揺する感覚で意識が戻る。


 「起きました?」


 顔を上に向けるとアネムの笑っている顔が見えた。


 「ご飯ができたよ?食べに行こ?」


 まだ眠たいが仕方がない。体を起こしてベットへ座る。


 「今日は何を作ったんだ?」

 「野菜炒めです!」


 フと、最初の転移から帰ってきた時の晩飯を思い出す。思わず笑ってしまった。


 「?、どうしたんです?」


 アネムが首を傾げて尋ねてくる。


 「いや、何でもない」


 まだ少し顔がニヤついているのが分かる。

 アネムはずっと首を傾げたままだ。


 「さて、食べに行きますか!」


 ベットから立って部屋から出る。


 「今日は味噌汁とかを手伝いました!」


 嬉しそうに言うアネム。


 そうかっと返事を返す。

 俺はこの日常を守る。

 誰も悲しませない。

 そして俺もここに絶対に帰る。


 この当たり前の幸せがただただ有難いと感謝し、手に力を込め、決意を固めていくのだった。

感想等をくれると嬉しいです。

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