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いつもの”日常” 5

 ♪〜っとメルが鼻歌を歌いながら、


 「あちゃ、結構靴底がすり減ってるね」


 と、言葉を漏らしながら、さっきまで俺が履いていた靴を見ている。

 普通の靴で地面を踏み砕いていると直ぐにボロボロになる。

 だから丈夫に、なおかつ魔法陣を壊しやすい作りにしてもらっている。

 俺の靴だけではなく、今持っている大体の魔道具、例えばアネムがかけているメガネもメルが作ってくれた作品になる。


 彼女の世界は魔力での発展が凄まじいところだ。

 行ったことはないが、魔力で動くゴーレムが荷物を運んだり、魔法金属で出来た飛空艇が空をいくつも漂ったりしているらしい。

 彼女の世界を初めて知ったのは、彼女の“父親”がこちらに転移してきてからだ。

 彼女の父親、“ゴトゥル・マグナル”さん――“通称ゴルさん”の姿を見た瞬間、彼女達の世界に攻め込まらたらヤバイっと感じ、冷や汗を流した。

 慎重に接触し、どうにか話し合いで解決できないかを、物凄く考えた。

 話をして行くうちに、ゴルさんは新しい技術はないかと様々な異世界を覗き見していたという事で、「魔力なしで発展している世界がある!」と興味を惹かれ、こっちの世界へ勢いで転移したみたいだとわかった。

 彼は自然エネルギーを利用している地球を見て、凄く感動していた。

 ゴルさんの世界では、「エネルギー?魔力でよくね?」と魔力に頼りきった発展を遂げていて、新たなエネルギー源についてはあまり模索してこなかったらしい。そのせいで、世界全体の魔力枯渇に悩んでいた。


 話し合いの結果、こっちにお店を開いて資金を稼ぎ、こっちの技術をドンドン学んでいこう!っという話になった。

 こちら側の事情である、異世界からの接触の話をすると、


 「それは、危険だなぁ。私も学ぶ時間をあまり割きたくはないし⋯⋯よかったら私たちの魔道具を使わないか?」


 と、技術支援を提案してくれた。そして今に至るわけだ。

 で、実際に使ってみると超便利。すごくありがたい存在になっていた。


「終わったぁ〜」


 グッと椅子に座りながら伸びをするメル。ゴーグルと作業用エプロンを外し立ち上がる。


「どうよ?履いてみて!」


 2足の靴を目の前に持ってきてくれる。そのまま受け取り、履き替えていたスリッパを脱ぎ、靴を履く。

 ⋯⋯いい感じだ。


「ありがとう、メル。すごくいいよ」

「あったり前よ!」


 いつもの明るい笑顔とピースを見せくる。

 すごく有難いことに無料でしてくれる。

 もし、ゴルさんが学び終えて元の異世界に彼女達が帰る時はどうすればいいだろうか⋯⋯。

 ため息を吐いていると、彼女が肩を組んできた。


「なんだ?悩み事か?相談に乗るぜ!」


 彼女は表裏ない性格でとても明るい。父親のゴルさんが⋯⋯


 ゴッ!っと何か重たい金属が落ちた音が作業部屋の中に響く。メルの手を外しつつ、後ろの振り返ると、メルと同じ色の赤髪した人ーーゴルさんが何かを持っていた姿勢で固まっているのが見えた。

 少しして、ワナワナと震えだす。


「⋯⋯うちの⋯⋯メルと⋯⋯抱き合ってた⋯⋯? ⋯⋯賢悟(ケンゴ)くん⋯⋯?」


 冷や汗が流れる。

 彼女が表裏なく、人とのスキンシップをよく取るのは、ゴルさんがメルを大事に、大切に、蝶よ花よと箱入り気味に、育ててきたことにある。

 幼い頃から、魔導具を作ってた彼女は、あまり世間とは接せず、魔導具が完成しては、父親のゴルさん、母親、家に仕えている従者(女性しかいない)に飛び付いて報告していたらしい。

 可愛らしいのでそのままにしていたら、今の現状に至ったようだ。

 男性は父親、もしくは父親の側近ぐらいしか話したことがない。まさに箱入り娘状態なのだ。

 そんな彼女でも直観で人の良し悪しが大体分かるのは救いである。


 そして、彼女が異性とスキンシップを取るところを、ゴルさんが見ると大変なことになる。

 娘に甘すぎるゴルさんは、親バカである。普段は常識人で、欠点を探すのが難しいと思うほど、礼儀正しい。

 だが、娘が関わる途端にバカになってしまう。

 メルと初めて会った時、


 「パパとどっちが強いの?」


 っと純粋な質問をしてきた。

 娘に良いところを見せたいゴルさんは、


 「私だ!」


 と、強く宣言した。

 この宣言に何故かアネムが反応し、


 「ケンちゃんの方が強いです!」


 そう返してしまった。


 「ほう?」と目が怪しく光るゴルさん。


 全く、余計なこと言わないで欲しい⋯⋯。

 そしてそのままアネムが結界を張り、の中でバトル開始。

 しばらくして「スゲェ!」と目をキラキラさせて見てくるメルを横目に、


 「このぐらいにしませんか?」


 と提案する。


 「⋯⋯いいだろう」


 と、了承を得たが、互いにボロボロになりながらの握手を交わした。

 あのまま続けていたら、アネムの結界が壊れそうでヤバかった。神様の結界が壊れそうって⋯⋯。


 そんな経緯もあり、お互いに懲りたと思っていたが、向こうはそうではない。

 なんせ“バカ”なのだから。


 アチャーっと顔に手をやっているメルに、


 「⋯⋯頼む」


 と、小声でお願いする。

 こちらに苦笑いしながら頷いてくれる。


 「父さん(・・・)?この前もケンに迷惑かけたよな?」

 「ぐ!?前の様にパパと⋯⋯それとアレは!」

 「父さん?人様に迷惑かける人⋯⋯私は嫌いだな⋯⋯」

 「ヌグォォオオオオオオオオオオオ!」


 変な叫び声を上げながら、両膝をついて両手で頭を抱えるゴルさんであった。

感想をくれると嬉しいです。

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