証拠
俺はすぐさま閃いた。こうすればあの女を犯人に仕立て上げられる。俺は近くの海の家に飛び込んだ。お好み焼きに焼きそば、唐揚げに餃子と脂っこいメニューの貼られた海の家。俺はすぐさま厨房に向かった。
「おい、ちょっとオッチャン、厨房貸してくれ」
俺はそう言うと厨房のオッチャンの返事も待たず、そこに転がっているフライパンを洗って火にくべた。当然オッチャンは俺に文句を言ってきたがそんなことは気にしない。殺人事件の犯人挙げという一大イベントを前に、オッチャンの小言なんざ、取るにも足らないゴミに過ぎない。しばらくして出来上がったものに満足した俺はそこら辺に転がっていたクーラーボックスも拝借して、捜査本部へと帰って行った。
折しもそれは三橋柚里香が二度目の取り調べを受けている時、俺はクーラーボックスを女の前にそっと置くと言ってやった。
「ねえ、三橋さん。今あなたの目の前に置いたこれはね、どんな微量の毒にでも反応する薬なんですよ。三橋さん、あなた、犯人じゃないなら、この液体にあなたの指をつけること、できますよね?」
当然女はそれを拒んだ。しかし拒めば疑う目。警察たちは女を見つめた。ついに女は決心したのか液体に指をつけた。
するとどうだろう、瞬く間に液体は固まっていった。結晶を成していくではないか。
嘘だと女は手を払った。液体は砂の上に零れた。しかし証人はそこに居た。俺は優しく語りかけた。
「あなた、スプーンをもらう時、指で挟んで持って行きましたよね? 三橋さん。あなたは指に毒を塗って、それでスプーンを触ったんだ。毒の付いたスプーンが久保田さんを殺した。あなたは水着で指を拭った、それでも指には毒が残っていた。それがコレに反応したんですよ。嘘だというならその水着を、これから科捜研に持っていきましょうか?」
犯人はここに泣き伏せた。勝負はここについたのだ。