1、はじまり
投稿は週1~3を目指していきたいと思います。
見渡す限りの大自然。
日差しも心地よく、空気も美味しい。
自然のかけらも無くなった都心から来れば、尚のこと格別だろう。
ただし、その場所を知っていればの話だが。
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「本気か…」
理性と混乱とがせめぎ合う中での言葉にしてはありきたりだった。
立木誠二30歳成立て。
ごく普通の中小企業に勤める営業マンが自分だ。
20代最後の日と銘打って友人と飲み歩いたのが昨夜のこと。
だいぶ飲み歩いて記憶も朧気だが、部屋に着いてベットにダイブしたのは覚えている。
「で、目を開けると空飛ぶ島が見えましたっと」
夢なら覚めて欲しいけど、体に当たる草の感触や、肌に触れる風の感触が現実だと主張する。
「良い歳したおっさんが来ても碌な目に合わないと思うんだが」
ファンタジー世界もリアル化して久しく『夢と幻想=スプラッタ』が当たり前だ。
命が水素並みに軽い世界に、誰が好き好んで行きたいと思うのか?物語は赤の他人だからこそ面白いのだ。
「一応周囲は誰もいなさそうだよな?」
体を動かさずに周囲を見渡しながら、何か動くものが居ないか探る。
「ふー、最近流行りのスタートゴブリンは居ないか」
『すたーとごぶ』
異世界移転した主人公が、訳の分からないままいきなりゴブリンと出会う事だ。
大体痛い目にあってのスタートになる。
風の吹く音以外は特にしない。
それでもと身動きしないまま息を殺し、五分ほどしてやっと上半身を起こす。
「大自然だな」
深い森林にぽっかり空いた草原に寝ていたようだ。
周囲500m位先以降木しか見えない。
陸の孤島ともいえる状況だ。
「……」
森の緑と空の青、山脈の茶しか見えない。
「……」
心地よい日差しと爽やかな風が吹く。
季節は春くらいだろう。
「……」
「あーもう、見ればいいんだろ?」
隣に浮かぶ手紙に目を移す。
無駄にデコっている。
至る所にクリスタルを散りばめられ、金銀のチェーンが垂れ下がり、手紙の角からド派手な尾羽が伸びていた。
地雷臭しかしない。
少なくない時間見つめ、諦めを感じ手を伸ばす。
ピカーーーーーーッ!!
触れた瞬間、強烈な光が溢れ目をつぶす。
「!?!?」
混乱する中、頭の中で声がする。
『ーーーごめんね♪ーーー』
それだけかよ!と思いつつ、光の奔流に飲み込まれていると、さっきとは違う声が響いてくる。
『ーープログラム展開ーー
「ガァァァァーーー」
激しい頭痛に叫びをあげる。
ーーースタート
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肉体構造改変ーー
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精神構造改変ーー
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スキル《初心者パック》《異世界知識:地球》《世界知識》付与ーー
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ーーーシステムオールグリーン
ーーー全てのプログラムのインストールが終了しました』
意識の片隅で終わったことに安堵しつつ、意識を手放した。
原因となった存在を決して許さないと決意しながら。